石立鉄男について、堀尾正明が『日刊ゲンダイ』(10月28日付)の連載「根掘り葉掘り」で、石立鉄男が『スタジオパーク』に出演した時のエピソードを書いている。
これは、石立鉄男ファンなら改めて明らかにするまでもないことで、予定調和を破って、本番中に出てきた食べものを「おいしい」と言わなかったという話である。
石立鉄男は、私生活を見せないかわりに、話題作りとしてメディアに登場することも一切しなかった。
現在のテレビは、ドラマの仕事がなくなったかつての名優がバラエティ番組にも登場しているが、里見浩太朗のようにそうした番組には一切出ない人もいる。石立鉄男もそのタイプだった。
映画やドラマは俳優として三枚目は演じるが、道化はゴメンだ、というポリシーだったのだろう。
そこで、めずらしく出演したNHKの『スタジオパーク』が注目されたわけだが、新じゃがで作った料理を、おいしいと言わず、堀尾正明の連載によると「まずいものをまずいと言っちゃいけないのかよ」と言ったわけだ。
ただ、これは、堀尾正明の記憶違いか書き方が不適切ではないだろうか。放送で石立鉄男は、少なくとも「まずいって言っちゃいけないんですか」と言っているはずである。
まあ、それは言い方の問題で、どっちにしても「まずい」と表現したことに変わりはないのだが。
それでどうなったかは日刊ゲンダイのサイトで確認していただくとして、
お昼のテレビ番組、とりわけNHKである以上、お世辞でも「おいしい」と言わなければならないところを、テキトーにお茶を濁すことができなかった石立鉄男の真骨頂である。
爆笑問題のラジオ番組で、松木ひろしが、本人にとって不本意な役を演じさせて、石立鉄男は悩んでいたかもしれないと言っているし、石立鉄男自身も、新劇のプロレタリアート芝居ではなく、石原裕次郎のような仕事がしたかったと後のラジオ番組で述べている。
ドラマや映画以外の石立鉄男が「ガチ」なのは、そうした反動もあったのかもしれない。
それはそうと、堀尾正明の連載には書かれていないが、番組の中で、今までで一番印象に残る仕事は?という質問に対して、石立鉄男は、『水もれ甲介』と『おくさまは18歳』と答えていた。
『パパと呼ばないで』と答えなかったことが興味深かった。