橋幸夫の「恋のメキシカン・ロック」

橋幸夫、といえば歌謡曲の戦後史にその名を刻む「御三家」の一人である。その橋幸夫が歌う夏の歌は「恋のメキシカン・ロック」。「潮来笠」や「子連れ狼」とは180度違う「ラテン系ロック」である。橋幸夫は、「御三家」の中ではデビューがもっともはやく年上である。それだけでなく、歌なら自分が一番、と思っていたフシもある。実際、持ち歌のレパートリーは広い。だから、西郷輝彦や舟木一夫に対しては今も「クン」付けである。

大相撲で千秋楽の終盤にやっている「これより三役そろい踏み」で、東方の力士は上の地位の者が後方真ん中にたって四股を踏むが、自分の「御三家」における立ち位置はそこにあると思っているのではないか。

歌だけでなく芝居も、占い師も経験し、かつてはあの佐川急便が出資したリバスター音産の副社長でもあった。

そんな橋幸夫のレパートリーの広さを表現したひとつが、この「恋のメキシカン・ロック」だ。
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橋幸夫の代表曲の一つともいえる「恋のメキシカン・ロック」は、リリース翌年のメキシコオリンピック(68年)を意識して作られた。

同名の映画では、クライマックスであるキャンプファイヤーのシーンで、この歌をバックに由美かおるらがゴーゴーを踊っている。踊ることで全てが吹っ切れる。青春映画定番の展開である。いずれにしても、陽気に踊りたくなる歌なのだ。

モノマネ番組でも、清水アキラが歌ったのがこの曲。清水アキラが一通り歌った後、本物の橋幸夫が出てくるというお約束の展開だった。

当時のジャケットは二つ折りだったが、全体を使って橋幸夫がステップしている全身の写真になっている。

ジャケットの裏に書かれている振り付け担当・中川三郎の解説によると、「恋のメキシカン・ロック」はマンボ的なメレンゲが強調されているという。

解説ではご丁寧に足型付きでステップも説明されている。そして「このステップ解説でお分かりにならない方は、都内の有楽町・浅草・恵比寿・新宿にあるディスコティックにお出下さい」と結ぶオチ、いや、営業センスもいい。


恋のメキシカン・ロック

恋のメキシカン・ロック

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  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント株式会社
  • メディア: CD

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