騙されたがる人たち、被害者は悪徳商法・詐欺事件の共犯!?

『騙されたがる人たち』(講談社)という書籍がAmazonで売れているというので読んでみました。著者はベストセラー『悪徳商法』著者の大山眞人氏。振り込め詐欺にだまされてしまった悔しい体験をバネに、様々な悪徳商法の最新詐欺事例を取材しています。それだけなら類似書は他にもありますが、同書がそれらと異なるのは、騙す側の糾弾ではなく、「自分も含めて、騙される側にも責任がある」という結論であることです。騙されたがる人たち
『騙されたがる人たち』が取り上げている悪徳商法(詐欺事件)は、振り込め詐欺のほか、恋人商法、当選商法、訪問販売、多重債務、ネットワークビジネス、SF商法(キャッチセールス)、預託商法、結婚サギ、不安煽り商法。

これらを一つずつ章立てして実例紹介と消費者側の問題点を指摘しています。さらに同書には、振り込め詐欺との電話のやり取りが収録された付録CDもあります。

大山眞人氏は、たとえば、貸金者が悪徳業者でも、借りたのは事実であり約束は約束なのだから、契約で決めた金は返すべきだと主張。「金は返さなくてもいい」(民法第708条)という甘やかしが「悪徳債務者」生み、「被害者」は結局同じような事件を繰り返すことになるから被害者のためにもならず事件もなくならない、としています。

人間は弱くてずるい生き物なので、法で守られると、法に甘えるというわけです。

同書のサブタイトルが絶妙です。

「善人で身勝手なあなたへ」

少し意地悪な表現ですが、“ありふれた世間の人々”を、これほど端的に言い表したものはないと思いました。

この一言だけでも、同書を手にしてよかったと思ったほどです。

そう、人間というのは、弱くて、ずるい。だけれどもやさしさや理性もあるという面白困った生き物なのです。

もっとも、同書ではそんな普遍的な主張がしたいわけではなく、もう少しシンプルに、「悪徳商法に騙される人」のことを指しているようです。

よく手形詐欺などで「善意の第三者」という言葉を使いますが、同書でいう「善人」も、「作為・悪意のない人」というようなニュアンスですね。

つまり、この『騙されたがる人たち』は、作為・悪意はなくても、あなたの自分勝手さが騙される原因なのですよ、と述べている書籍です。

悪徳商法の被害者は、事故の被害者・犠牲者とは違う、騙される側にも責任がある、というスタンスが非常に明確です。

著者の大山眞人氏は、詐欺事件は「騙す側と騙す側のいびつな共犯関係」と表現しています。

「共犯」なのです。

つまり、騙す側の仕掛けにかかわらず、騙される側がのらなければ詐欺事件は成立しません。詐欺事件になるのは、騙される側が「協力」するからです。

著者は、その「協力」してしまう「被害者」の身勝手さをこう述べています。
騙す側ばかりを問題にしていては解決の糸口にたどりつかない。“金に汚い”“いい加減な”“身勝手な”“他人のせいにしたがる”“反省をしない”“思いこみの強い”“無責任な”「善良な消費者」がたくさんいるという事実。

 ほかにも「訪問販売詐欺」「ネガティブオプション(送りつけ商法)」「和牛(預託)オーナー商法」「融資詐欺」「未公開株詐欺」「社員権詐欺」「内職商法」「コンプレックス商法」など、数多くの悪徳商法や詐欺事件が、性懲りもなく生きつづけている。もはや“騙されたがる人たち”の“協力”なくしては何も解決しない。

 そこには共通したキーワードが存在している。“孤独”“孤立”“寂しさ”“不安”“つながり”“仲間意識”“絆(結)”“見栄”“思いこみ”“妬み”“差別”“疑念”“清疑”そして“欲望”‥‥‥。まるで孤立した現代人を象徴するような単語が並ぶ。

 悪徳業者や詐欺師たちは、これらの単語を巧みに操りながら、「善良な消費者」に対し“騙すステージ”を提供していく。彼らはヨコのつながりを保ちながら、軍隊並みに規律を重んじたタテ社会を構築している。そこには強い“仲間意識”がみられる。彼らによって用意されたステージ上で“一対一の勝負”に勝つためには、くどいようだが騙される側にもそれなりの“覚悟”と“修練”が求められる。

同書の主張に対しては、騙す方と騙される方、どっちが悪いかといえば騙される方に決まっている、と反発される方もおられるでしょう。

騙される方を批判することで、「どっちもどっち」のような両成敗になったら、騙す方を免罪してしまう、という見方もわかります。

ただ、同書が言う「騙される側にも責任がある」の「責任」というのは、騙す側の「責任」とは少し性質が違います。

騙す側の責任とは、法律や道徳といった社会規範上の問題です。

騙される側の責任というのは、騙させてしまう責任ですから、法律や道徳ではなく、心の在り方を問うものだと思います。

「被害者にそういう自覚がない限り、詐欺・悪徳商法はなくならない」と著者は結んでいます。

物事というのは、良し悪しにかかわらず、その実像に迫らなければ解決法は見出せません。

コインに裏表があるように、詐欺事件は騙す側(表)だけでなく、騙される側(裏)からも見ていかなければ詐欺事件を防ぐことはできない、とする著者の合理的な判断に私は賛成します。

CD付き 騙されたがる人たち 善人で身勝手なあなたへ

CD付き 騙されたがる人たち 善人で身勝手なあなたへ

  • 作者: 大山 眞人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/03/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

この記事へのコメント

2013年05月01日 16:53
責任があるかどうかは別として、多角的なアプローチは必要でしょうね。
2013年05月01日 17:21
投資で損をする素人の性質が、
この本でいうところの"騙される側"とよく似ていますね^^;
2013年05月01日 20:08
自分だけは大丈夫、だから・・・みたいなところはありますね・・・。
その時点で間違っているとは思うのですが・・・。

その瞬間、瞬間でちゃんとした判断ができていない気がするのでやっぱり甘いですよね。
2013年05月01日 20:33
『騙されたがる人たちは、作為・悪意はなくても、あなたの自分勝手さが騙される原因なのですよ』

詐欺事件は「騙す側と騙す側のいびつな共犯関係」

この表現はまさにその通り。
この主張には同意です。

・・・・・でも騙されたら助けて欲しいです(>_<)
2013年05月01日 21:42
しかし、騙される人にその責任を
悟らせる事は出来るのでしょうか
2013年05月01日 22:50
人間には2種類あって
反論するときに
「だって」
という言葉を
使う人と使わない人に分かれますが
たくさん使っている人は
騙されそうな雰囲気がありますね~(^^;
なんというか
状況よりも主観優先というか
直観力に自信があるというか…
わりと苦手な人たちです(汗)
2013年05月01日 23:32
どなたかのブログを読んでおりましたら、
騙された方からも罰金を取るなどの措置を取らない限り、
詐欺は無くならないといった趣旨の事が書かれていました。

究極のご意見ですが、
確かにそうかもと思わされました。
詐欺もゲーム感覚で行われているような感覚を受けますね。
いかに、金を巻き上げるか。。。
しかし、もてあそぶような行為は、いけませんね。
2013年05月02日 08:14
うちのお客様も3人くらい振り込め電話があったそうですがだまされなかったようです~!!お一人の方のおばあ様は、は振り込む寸前に銀行の方に止められたそうです~!
2013年05月02日 08:35
色んな「欲」と「Noと言えない性質」を上手いこと逆手に
取って突いてきますよね。
2013年05月02日 09:22
オレオレ詐欺にしても、振り込め詐欺にしても、息子が電話の向こうで泣き叫んでいるのに騙されてしまうわけですが、大人になった息子が泣き叫ぶ声なんて、ほとんどの親は聞いたことがないから、「これは違う、息子ではない」とは思えないのでしょうね。
娘を名乗る人が泣き叫んでも、多分、ほとんどの親は騙されない。娘の泣き叫ぶ声を、たいていの親は知っているから。
大人になった息子が、「助けて」と泣き叫んでいるからこそ、親は動揺し、正気を失って金の工面に走ってしまう。

私の父も生前、お金をふりこもうとしているところを銀行の人に止めてもらいました。止めてもらったあとで当の息子に確認し、これが詐欺だったとわかった後も、混乱していました。
親にとって、息子が泣き叫ぶ声というのは、それほど衝撃であり、それが嘘であっても、心に深い傷を残すものなのだと知りました。

母には、自分は大丈夫だとは思うなと言ってあります。息子が助けてくれと泣き叫んでいたら、親は絶対に正気ではいられないのだから、騙されるほうが普通なのだと。
そういう電話がかかってきた時には、とにかく行動を起こす前に、まず息子や娘に電話をするように、と言ってあります。
多分、それしか防ぐ方法はないのではないかと思っています。
(長文、ごめんなさい)
2013年05月02日 10:43
共犯なんですね。。
「自分も含めて、騙される側にも責任がある」
ま、薬も作用があるから副作用がある、みたいなものでしょうか?
2013年05月02日 10:53
振り込め詐欺もお金を持って居るから振り込み可能。万が一実の息子から泣きつれても、私にはお金がないから出来ない。
従って、私はその手では騙されない。

悪党商法、投資で騙される人も有るお金を増やそうとする助兵衛根性で騙されるのだから自業自得。
私に言わせれば「ザマアミロ」ですね。

ついでに、未成年を買春で捕まる馬鹿男。16,7の女子もどんな事なのか判ったうえでお金欲しさについて行くんだから、これも同情なし。
2013年05月02日 11:49
まるで、売春と買春の関係のようです・・・
2013年05月02日 14:24
今回の悪徳商法の中で多重債務に関しては借り手の責任
だと思います。
多額の金利は別として、それを分かっていながら借りるのは
借り手の責任。その他に関しては、中々だまされた方の責任
って言うのは難しいですね・・
手口も巧妙になっていますし・・
2013年05月02日 17:18
自分は大丈夫って思う人ほど騙されやすいとかって聞いたことあります。
話は逸れてしまうかもしれませんが、DVも、被害者にも問題があると聞きました。人に依存したり、自分をかわいそうにすることで安心するとか、いろいろ・・・
どちらにしても、心理的に何か問題をかかえてるのかもしれませんね。
2013年05月02日 17:41
趣旨はわかります。そうだといえばそうなんですが、それでもやっぱり、だますほうが悪い。人の弱みに付け込むということをする性質なのだから。弱い人を食い物にするということですから。わたしは弱い人の味方です(笑)。
2013年05月02日 22:47
私も同感ですね。
双方に責任があると思うから撲滅はできないと思うけれど
少なくすることは可能だと思います。
面白そうなので購入してみようと思います^^
2013年05月04日 12:28
身近にいますね。善人で身勝手な人。
そして騙されています。(-_-;)
騙される側にも責任があるというのは、大いにそう思います。

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