『俺はおまわり君』青春スターから優等生へ向かった中村雅俊
『俺はおまわり君』(1981年2月4日~9月16日、ユニオン映画/日本テレビ)という昔のテレビドラマを鑑賞しました。主演は中村雅俊。青春ドラマで、挫折や失敗を愚直に表現する役だった彼が、派出所交番の班長という部下を管理する立場になって、どのような葛藤を見せてくれるかが見どころです。
『俺はおまわり君』より
中村雅俊といえば、『われら青春!』(1974年4月7日~9月29日、東宝/日本テレビ)で主演に抜擢されたのは40代後半以上の方ならご存知でしょう。

以来、
『つくし誰の子』(1974年10月21日~1975年4月14日、日本テレビ)、
『俺たちの勲章』(1975年4月2日~1975年9月24日、東宝/日本テレビ)、
『俺たちの旅』(1975年10月5日~1976年10月10日、ユニオン映画/日本テレビ)、
『俺たちの祭』(1977年11月20日~1978年4月30日、ユニオン映画/日本テレビ)、
『青春ド真中!』(1978年5月7日~9月24日、ユニオン映画/日本テレビ)、
『ゆうひが丘の総理大臣』(1978年10月11日~1979年10月10日、ユニオン映画/日本テレビ)


と、日本テレビ放送のドラマに立て続けに出演してスターの階段を駆け上り、とりわけ水曜、日曜8時の枠で育った“青春スター”です。
この頃の中村雅俊というと、東北(宮城県牡鹿郡女川町)の訛りが時々顔を出し、特別演技派というわけでもないのに、涙を流すシーンになると、こっちもつられてしまうような、不思議な力を持った俳優でした。
共演者やスタッフにとってもそういう存在だったのか、岡田晋吉プロデューサーと鎌田敏夫脚本という、青春ドラマのゴールデンコンビによって、同じようなキャラクターの作品を何作も作ってもらったことで、キャラクターが作りこまれていくとともに、中村雅俊もそれを自分のものにしていったのだろうと思います。
そこには、いつも社会や人生に対して正直であるがゆえに、挫折したり、ふしだらであったり、おせっかいであったりする、必ずしも格好良くない人物が描かれていました。それが観る者の心を打ったのでしょうね。
そんな一連の青春シリーズが一段落して、3年ぶりに水曜8時枠に登場したのが、今回の『俺はおまわり君』です。
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いつのまにか水曜8時には“水曜劇場”というタイトルが付き、青春学園ドラマからより高い年齢層を対象とする枠に変わっていました。
中村雅俊演じる岡一二三(おか・ひふみ)は、新妻署の4丁目派出所交番班長として赴任します。
ユニオン映画のドラマは、特定の場所におけるロケが多く、このドラマの舞台は神奈川県川崎市宮前区鷺沼ですが、あくまで劇中では架空の町です。
中村雅俊は、元巡査だった伴淳三郎の家に下宿。伴淳の娘である和田アキ子とあべ静江の姉妹も一緒に暮らしています。
古き良き昭和の青春ドラマの定番は下宿でした。
しかし、時代はすでに1980年代に入っており、大学生でも下宿という文化がすでに廃れつつありましたから、30歳の部下がいる警官が下宿暮らし、という設定はさすがに時代に合わなくなっていたように思います。
ただ、娘たちが高血圧の父親を案じすぎて、醤油すらろくに使わせない毎回拷問のような食事シーンはクスっと笑えますけどね。
この歳になっても、伴淳さんはいじられるアチャラカ役だなあと感心します。
派出所の部下は、渡辺篤史、山谷初男、森川正太、小柳トム、河合宏。
警察官コントで『お笑いスター誕生』に登場した小柳トムが、まさに小柳巡査として出演しています。
今、この人に警察官コントやってくれと言っても無理でしょうね。
彼らがいつも何かヘマをして、課長の小池朝雄が叱り、エリート刑事の大林丈史に馬鹿にされるというパターンです。
町内には、早合点してデマを吹き込んだり、へそを曲げて捜査の足を引っ張ったりするオヤジにハナ肇、その娘に藤谷美和子、使用人に長谷川愉。
そして、彼らがいつも行く飲み屋のママが、高倉健との過去告白で現在話題になっている児島みゆきです。
やはり、作品としては「青春ドラマ」ではなく、「ホームドラマ」に近い作り方です。
全体を通して、青春学園ドラマにおける、中村雅俊の愚直な生き様を見たものからすると、ちょっと期待はずれかもしれません。
なぜなら、中村雅俊はこの作品では管理職のため、部下の失敗を謝ったり、正論のお説教をしたりするからです。
そうじゃなくて、『踊る大捜査線』の青島刑事のような、中村雅俊自身の警らにおける愚直ゆえの挫折や失敗を見たかったんですよね。
ただ、必ずしも無謬ではなくて、同じ警察官で階級が上の和田アキ子や、中学教師のあべ静江と議論して教えられるなど、“青春”の部分も残っています。
あれだけ愚直で若々しい役だった中村雅俊は、歳をとるごとに、何でもそつなくこなす優等生の役に変わっていったのですが、今回の『俺はおまわり君』が、その過渡期といいますか、変化の始まりだったのかもしれません。
そういう意味では、中村雅俊のファンからすると、エポックとなる作品だったのだろうと思います。
それにしても、昔のテレビドラマは、ビデオもないリアルタイムでは毎回鑑賞は真剣勝負。
一瞬映る電信柱の住居表示を見逃さず、その記憶をもとにロケ地を訪問などしたものです。
それに比べて、今はBS、CSにいくつもチャンネルがある上に、DVD/Blu-rayも出ているので、観るチャンスは広がりました。
ただ、その分有り難みが薄れ、観るときの真剣度や緊張度は下がってしまったかもしれません。
私はこうしてレビューを書くのに、3回ぐらい観ないと頭のなかが整理できません。“ながら”で観ることもめずらしくありません。
当時からしたら、ずいぶんもったいない鑑賞態度です。
まあそれだけ、今のほうが間違いなく便利でよくはなっていると思いますが、過去のヴォルテージの高い鑑賞もまた懐かしいと思うこともあります。
昔のドラマはそんなことも思い出させてくれるのです。
『俺はおまわり君』は、全5巻で4話ずつ収録されています。
『俺はおまわり君』より
中村雅俊といえば、『われら青春!』(1974年4月7日~9月29日、東宝/日本テレビ)で主演に抜擢されたのは40代後半以上の方ならご存知でしょう。
以来、
『つくし誰の子』(1974年10月21日~1975年4月14日、日本テレビ)、
『俺たちの勲章』(1975年4月2日~1975年9月24日、東宝/日本テレビ)、
『俺たちの旅』(1975年10月5日~1976年10月10日、ユニオン映画/日本テレビ)、
『俺たちの祭』(1977年11月20日~1978年4月30日、ユニオン映画/日本テレビ)、
『青春ド真中!』(1978年5月7日~9月24日、ユニオン映画/日本テレビ)、
『ゆうひが丘の総理大臣』(1978年10月11日~1979年10月10日、ユニオン映画/日本テレビ)
と、日本テレビ放送のドラマに立て続けに出演してスターの階段を駆け上り、とりわけ水曜、日曜8時の枠で育った“青春スター”です。
この頃の中村雅俊というと、東北(宮城県牡鹿郡女川町)の訛りが時々顔を出し、特別演技派というわけでもないのに、涙を流すシーンになると、こっちもつられてしまうような、不思議な力を持った俳優でした。
共演者やスタッフにとってもそういう存在だったのか、岡田晋吉プロデューサーと鎌田敏夫脚本という、青春ドラマのゴールデンコンビによって、同じようなキャラクターの作品を何作も作ってもらったことで、キャラクターが作りこまれていくとともに、中村雅俊もそれを自分のものにしていったのだろうと思います。
そこには、いつも社会や人生に対して正直であるがゆえに、挫折したり、ふしだらであったり、おせっかいであったりする、必ずしも格好良くない人物が描かれていました。それが観る者の心を打ったのでしょうね。
そんな一連の青春シリーズが一段落して、3年ぶりに水曜8時枠に登場したのが、今回の『俺はおまわり君』です。
“下宿”は昭和青春ドラマの定番だった
いつのまにか水曜8時には“水曜劇場”というタイトルが付き、青春学園ドラマからより高い年齢層を対象とする枠に変わっていました。
中村雅俊演じる岡一二三(おか・ひふみ)は、新妻署の4丁目派出所交番班長として赴任します。
ユニオン映画のドラマは、特定の場所におけるロケが多く、このドラマの舞台は神奈川県川崎市宮前区鷺沼ですが、あくまで劇中では架空の町です。
中村雅俊は、元巡査だった伴淳三郎の家に下宿。伴淳の娘である和田アキ子とあべ静江の姉妹も一緒に暮らしています。
古き良き昭和の青春ドラマの定番は下宿でした。
しかし、時代はすでに1980年代に入っており、大学生でも下宿という文化がすでに廃れつつありましたから、30歳の部下がいる警官が下宿暮らし、という設定はさすがに時代に合わなくなっていたように思います。
ただ、娘たちが高血圧の父親を案じすぎて、醤油すらろくに使わせない毎回拷問のような食事シーンはクスっと笑えますけどね。
この歳になっても、伴淳さんはいじられるアチャラカ役だなあと感心します。
派出所の部下は、渡辺篤史、山谷初男、森川正太、小柳トム、河合宏。
警察官コントで『お笑いスター誕生』に登場した小柳トムが、まさに小柳巡査として出演しています。
今、この人に警察官コントやってくれと言っても無理でしょうね。
彼らがいつも何かヘマをして、課長の小池朝雄が叱り、エリート刑事の大林丈史に馬鹿にされるというパターンです。
町内には、早合点してデマを吹き込んだり、へそを曲げて捜査の足を引っ張ったりするオヤジにハナ肇、その娘に藤谷美和子、使用人に長谷川愉。
そして、彼らがいつも行く飲み屋のママが、高倉健との過去告白で現在話題になっている児島みゆきです。
青春スターから優等生への過渡期
やはり、作品としては「青春ドラマ」ではなく、「ホームドラマ」に近い作り方です。
全体を通して、青春学園ドラマにおける、中村雅俊の愚直な生き様を見たものからすると、ちょっと期待はずれかもしれません。
なぜなら、中村雅俊はこの作品では管理職のため、部下の失敗を謝ったり、正論のお説教をしたりするからです。
そうじゃなくて、『踊る大捜査線』の青島刑事のような、中村雅俊自身の警らにおける愚直ゆえの挫折や失敗を見たかったんですよね。
ただ、必ずしも無謬ではなくて、同じ警察官で階級が上の和田アキ子や、中学教師のあべ静江と議論して教えられるなど、“青春”の部分も残っています。
あれだけ愚直で若々しい役だった中村雅俊は、歳をとるごとに、何でもそつなくこなす優等生の役に変わっていったのですが、今回の『俺はおまわり君』が、その過渡期といいますか、変化の始まりだったのかもしれません。
そういう意味では、中村雅俊のファンからすると、エポックとなる作品だったのだろうと思います。
それにしても、昔のテレビドラマは、ビデオもないリアルタイムでは毎回鑑賞は真剣勝負。
一瞬映る電信柱の住居表示を見逃さず、その記憶をもとにロケ地を訪問などしたものです。
それに比べて、今はBS、CSにいくつもチャンネルがある上に、DVD/Blu-rayも出ているので、観るチャンスは広がりました。
ただ、その分有り難みが薄れ、観るときの真剣度や緊張度は下がってしまったかもしれません。
私はこうしてレビューを書くのに、3回ぐらい観ないと頭のなかが整理できません。“ながら”で観ることもめずらしくありません。
当時からしたら、ずいぶんもったいない鑑賞態度です。
まあそれだけ、今のほうが間違いなく便利でよくはなっていると思いますが、過去のヴォルテージの高い鑑賞もまた懐かしいと思うこともあります。
昔のドラマはそんなことも思い出させてくれるのです。
『俺はおまわり君』は、全5巻で4話ずつ収録されています。