川崎の事件に思う。離婚で養育が難しいと判断する文化も必要では?

川崎市川崎区の事件。これまでにも、このブログでは事件現場となった港町の河川敷近くを何度も撮影して記事にしてきたので、驚くとともに悲しく残念です。今の時点で気になるのは、被害者の親に対する非難が出ていること。母子家庭で5人の養育という状態は何とかならなかったのかと思います。多摩川川崎側から
多摩川川崎側から。右後方に見える水門付近が事件現場と思われる

私は、川崎で暮らしたことはありませんが、父が昭和40年代に起業した小さな会社が川崎区にあったので、川崎に行くと当時を思い出します。

子供の頃は、繁華街にある美須映画街(今のチネチッタ)にもよく行きました。

川崎は今は駅もかわりましたが、昭和50年代まではあまりきれいな駅前ではありませんでした。

雑然としていて、やっぱりちょっと怖かったかな。

現在私は東京の南端に住んでいるので、買い物も都心に出るより、川崎や横浜に出るほうが近いんですね。

そんな私なりの思い入れや関わりがあっただけに、今回の事件は、殺された方がお気の毒であるとともに、我がアイデンティティの一部にヴェールをかけられて否定されてしまったような気分です。

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何がなんでも親と生活することが幸せか?


ネットではもう、掲示板が次から次に立ち、個人ブログでも読みきれないほど取り沙汰されていますが、私がその中で最も印象に残った書き込みは、これです。

「これを期に少年法とか親権のこととか子供の権利とか変わればいいな
何がなんでも親と生活するのが幸せって考えは間違ってる」
http://www.akb48matomemory.com/archives/1020515552.html

この書き込みは、被害者の家庭をさして書かれているわけですが、後半の部分に注目です。

「何がなんでも親と生活するのが幸せって考えは間違ってる」

結論から述べると、私個人はこの意見に賛成です。

被害者の両親が離婚した時、家庭裁判所は、5人のすべての親権を母親に渡したのでしょう。

しかし、現代社会は、母親一人で働きながら5人の子どもを育てるのは難しいという現実があります。

今回、学校の先生が何度も被害者母子に連絡をとったといいますが、学校の先生ができることは限界もあります。

学校の前に、そもそも“母子家庭の5子養育”そのものが何とかならなかったのかと私は思うのです。

川崎市にも里親制度はあります。

詳しくは調べていませんが、年齢などで、養子縁組に比べると基準も緩いようです。

でも、我が国は、端折って言うと家制度の名残だと思うのですが

複雑な事情で、親と子が別れ別れになっていると、

親は子どもと暮らすのが一番幸せだ

と勝手に決め付けます。

子を手放した親はネグレクト扱いで悪人なんですね。

でもそうじゃないでしょ、と私は思うのです。

今回だって、被害者のお宅のお子さんがバラパラになっても、責任ある養育者のもとに預けられたほうがよかったかもしれません。

以前も書きましたが、タレントの松尾貴史氏は、かつて『東京スポーツ』の連載で

小泉純一郎総理(当時)が、離婚して別れた三男と会わないとことを「冷たい」として、政権批判と結びつけました。

総理大臣は公人中の公人ですから、個人事情をいじられること自体は仕方ありません。

しかし、新自由主義で格差を作ったことを批判したいなら、その点を追及すべきであり

三男のことを持ちだしたって政治は何も解決しません。

そもそも、冷たいかどうかなんて、当事者の言い分や事情もわからずに、勝手に言えるものではないと思います。

松尾貴史氏のアタマの中には、やはり、親子が別れてしまう身の上に対して、ともすれば差別や偏見ともいえる考え方があったのではないか、と勘ぐってしまいます。

でもこれ、松尾貴史氏にかぎらず、多くの日本人大衆にある考え方ではないでしょうか。

たぶん、そういう人は、老いた親は最期まで面倒を見るべし、子どもは絶対に親が育てるべし、という一族主義の美学を正しいと信じ込んでいるのではないでしょうか。

それができればいいですよね。

でも、諸事情からそれができないことがある。

それをしたばかりに自分の、そして肝心の親や子の生活や生命までめちゃめちゃになったらどうしますか。

そんなとき、本当に大事なのは何でしょうか。

少なくとも子の福祉が、メンツや家系や美学よりも上に来るべきじゃないかな、と思います。

「愛知方式」が昨今メディアで取り沙汰されていますが、赤ちゃんの特別養子縁組だけでなく、離婚によって養育が難しくなったと判断できるお子さんについても、

「子どもの権利条約」が定めた4つの権利を守る立場から

里親や養子縁組といった制度が社会の中でもっと偏見なく活用される社会・文化運動が求められるんじゃないかなあと思います。

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  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/12
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