安田伸、“第七の男”に誇りを持ったクレージーキャッツメンバー

安田伸さん(やすだしん、1932年9月19日~1996年11月5日)の23回忌が5日でした。クレージーキャッツで、テナーサックスを担当していた人です。失礼ながら、安田伸というと、クレージーキャッツ7人のメンバーのうちでは、いちばん地味なイメージがありませんでしたか。(画像は断りのない限り『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.12)より)

植木等を筆頭に、ハナ肇(松竹)、谷啓(東宝)、犬塚弘(大映)などが、映画会社各社で主演映画を経験。

後列左端が安田伸です
途中から加入した桜井センリも、「一番真面目に演技に取り組んでいた」(植木等)こともあって、バイプレーヤーとして活躍。
途中で脱退した石橋エータローも、いわゆるオネェ言葉と独自のヘアスタイルなどで、存在感は発揮していました。
東京藝大出の本格的な演奏家である安田伸としては、自分を「笑い」のキャラクターに切り替えることに戸惑いがあったかもしれません。
クレージーキャッツの特番とかやってくれないかなぁ..,BSでもいいから見たい...(´ ▽ ` )#昭和 #ハナ肇とクレージーキャッツ#クレイジーキャッツ#ハナ肇 #谷啓 #植木等 #安田伸 #犬塚弘 #桜井センリ #石橋エータロー pic.twitter.com/E87kmq5pgQ
— 昭和大好き ゆい (@aEOfi1ii4JO8PDJ) 2018年6月12日
ザ・ドリフターズでいうと、高木ブーが五人中“第五の男”であることを自らも認めていますが、志村けん加入以前のザ・ドリフターズは、メンバー全員の個性が光るバランスの取れたグループでした。
というのは、ドリフは全員で行うグループコントを売り物にしていたので、とにかく全員に出番がありました。
しかし、クレージーは「笑い」の部分では個々のキャラクターで活躍することが多かったため、目立たないと取り残されてしまうのです。
クレージー映画も、最初こそ、安田伸にもそこそこの役が付きましたが、次第に植木等や谷啓が中心となり、安田伸は、時には役名すらつかない、エキストラに近いような“閑職”まで後退してしまいました。
『ハナ肇とクレージー・キャッツ物語』(山下勝利著、朝日新聞社)によると、安田伸本人も悩み、それでクレージー脱退を考えたこともあるそうですが、
「お前は六大学野球における東大のような存在。負けてばかりのお荷物だが、いつか何かやるんじゃないかという期待がある」と友人に言われて思いとどまったといいます。
ヒゲを蓄え、いつもニコニコしていた晩年の安田伸は、“最下位”である自分の立ち位置を悟っていたようでした。
それにしても、私は、その友人の励まし方も、ずいぶん失礼で、かつ的外れだと思いました。
「期待」のあるなし以前に、順位付けをしてしまえば、誰かが1位になれるのは、他のメンバーがその下の順位になっているからです。
別の言い方をすれば、7人いれば誰かが『第七の男』になるのは必然であり、もし、全員が「俺が俺が……」だったら、グループとしては空中分解していたでしょう。
クレージーキャッツの代表作とも言える番組『シャボン玉ホリデー』では、コントで、ハナ肇の付き人(なべおさみ)に、メガホンで殴られる屈辱的な役でも、文句を言わずに安田伸は演じ続けました。
植木等なしにクレージーキャッツの隆盛はなかったように、安田伸がいてこそクレージーキャッツが成り立っていたのです。
会社や、サークルなど、人の集まりで、自分が「一番劣るのではないか」と、悩むことってありませんか。
その順位付け自体にどれだけの意味があるかはわかりませんが、いずれにしても、ビリがいるから一番がいるわけで、必ず誰かがビリになるのですから、ビリになったとしても、むしろその集団の調和と安定に貢献しているのだと胸を張っていればいいのです。
音楽コントでブリッジ演奏
『香港クレージー作戦』(1963年、東宝)という映画は、クレージーキャッツ全員で音楽コントを演じているめずらしいシーンがあります。

『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.12)より



そこで安田伸は、お得意の、ブリッジをしながらサックスを吹き鳴らす演奏を披露しています。


前任者の石田正弘という人がやっていたのを引き継いで、自分のものにしてましたね。
#自分が本気でかっこいいと思った写真を上げろ
— フミ(海外アニメ&歌謡曲レコード大好物) (@looney1940) 2018年7月8日
クレージーキャッツの
ヤッさんこと安田伸#ハナ肇とクレージーキャッツ#安田伸 pic.twitter.com/OLxqBIAbtD
クレージー映画30作のうち、音楽コントは本作のほか、『クレージー大作戦』(1966年、東宝)だけなので、貴重なシーンだとおもいます。
クレージーキャッツの「大人の真面目に悪ふざけ」の世界を見ることができるので、機会があれば、ぜひごらんいただきたい作品です。
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この記事へのコメント
ブリッジしてのサックス吹きは、ロックで言えば、ジミヘンのようなテイストがありますね。
グループで活動する場合はどうしても人気や役割で差がついてしまいますね。いっぷく様のおっしゃるように、ある程度割り切って考えなと、あたら自分を苦しめることになりかねません。まあ心の持ちようとしては、人気云々以前に、「役割はひとそれぞれ違う」という点を第一に置いて、自分の役割の中で他の人には真似できない存在を志すというのもいいかもしれません。「順位」ばかりにこだわる人生は送りたくないですね。
『カップヌードル』って、普段はちょっと高く感じますよね。数十円の違いなのですが、わたしの財布にとっては重大です(笑)。だから普段は100円行くか行かないかのカップ麺を買うのですが、イオン高知に大坂なおみがズラリ並んでましたので、身も世もなく買ってしまいました。とは言え、(4個全部買っちゃおうかな)となりかけましたが、結局カレー味だけにするという、哀しい理性が働いたこと告白せねばなりません(笑)。
>半世紀残るホーロー看板
でもこれは素晴らしいアイディアですね。今考えたらあの由美かおるの看板はよくぞ作ったものだと思います。風景に溶け込んでおりましたよね。あの看板が流通し始めた頃は分かりませんが、わたしが子どもの頃には既に、ちょと鄙びた道端とか田んぼの景色に、由美かおるのあのセクシーな姿態とポーズがやたらとしっくり来ておりました。考えたら、不思議な現象でした。
>カップヌードルCM 「大坂半端ないって 篇」 30秒 / 大坂なおみ
これは『日清』のスタッフが思い付きを勢いだけでCMにした感じですよね。わたしも「半端ない」という言葉は自分でも絶対に使いません。あのワールドカップサッカーの際にはこの言葉がほとんど1日中テレビで聞かれ、NHKのニュースでもアナが使ってましたからね。本当に今のテレビって・・・という感じでした。
このCMのために大坂なおみは何もしてないと思います(笑)。過去の試合シーンをコラージュして急ごしらえで作った感じですね。ただ、ワールドカップの「半端ない」が流行るより前に作られたという記事も読んだような気がします。大坂なおみのCMは、今後高級感の高いものやおもしろいものがいろいろ出てくると期待しております。普通はCMで儲けている人たちをあまり好きではないのですが、大坂なおみなど、実質が凄い人たちは別なのです(笑)。
>実際にCMで食べているシーンが有ると、売上もぐっと伸びるとおもいます。
いいですね~、(大坂なおみと同じものを食べている)感!このお話とは別に、最近『カップヌードル』を食べたのですが、ももクロの番組で玉井詩織が食べているのを見て、(美味しそうだなあ~)と感じたという馬鹿な動機でして、そう言えばももクロは別に『日清』のCMやってないですが、番組内で堂々と食べておりました(笑)。 RUKO
安田伸の記憶は全然ないけど(^_^;)
ブリッジするだけでもすごいのに、サックスを吹きながらなんて!息使いが難しそうです。
今だったら、ワザとらしい他のメンバーより脚光が当たっているかもしれないと思います。
実生活では奥様と仲が良かったようで…。
安田伸は一番早く亡くなってしまったかな。
たしか体操家の女の人(竹腰美代子)と
夫婦だった・・・
『香港クレージー作戦』、全盛期のクレージーの芸、見てみたいな思いました。
誰一人欠けても成り立つことがないということは、どの集団でも同じことが言えますね。