喜劇駅前番頭(1967年、東京映画)来月からは新シリーズへ

喜劇駅前番頭(1967年、東京映画/東宝)が、BS11で来る3月26日(火)よる7時00分~8時52分に放送されます。東京の大学を出たフランキー堺が、新卒で働くことになった箱根の旅館を舞台にした話です。同枠は長く森繁久彌主演の映画を放送していましたが、これでいったん区切りをつけるようです。(画像は劇中より)

喜劇駅前番頭の見どころ
喜劇駅前番頭(1967年、東京映画/東宝)は、シリーズ全24作中16作目です。
舞台は、古くから続く箱根の旅館『一心亭』
最初のシーンは、鉄道ファンを喜ばせる箱根登山鉄道のモハ2形(強羅駅)です。

今までのパターンでは、森繁久彌と伴淳三郎が、別々の旅館で競い合う展開でしたが、今回は旅館の主人が森繁久彌、その妻が淡島千景、伴淳三郎は番頭役です。

そして、なぜか日米の大学を卒業したフランキー堺が就職。
呼び込みがうまくできません。

しかし、大学出のインテリで、何よりも真面目そうということで、森繁主人は浮気のアリバイ作りに利用しようとしますが、淡島女将さんからは逆に主人の浮気をスパイしろといわれ、フランキー堺は板挟みに。

それだけでなく、伴淳三郎番頭は相談役として主人夫妻の動向を聞き出そうとするし、女性たちは色めき立つしで、多くの人が働く地方の旅館は、本来の接客仕事だけでなく、職員同士の人間関係もむずかしいことを描いています。
フランキー堺は、特に欠点のないインテリなのですが、いろいろわずらわされて苦労することで、「 社会に出たら、学歴や学校で勉強したことなど何もならないよ」ということを言いたいのかもしれませんね。
ちなみに、脚本を書いた長瀬喜伴は、この作品を執筆中の箱根の旅館で急死。本作が遺作になりました。
他のレギュラーは、いつものように芸者が池内淳子、フランキー堺の恋人役でシリーズのマドンナ的存在が大空真弓、

ライバル旅館の主人が山茶花究、伴淳三郎の内妻が中村メイコ、旅館の仲居が赤木春恵、旅館の客であるハワイのフラダンス団の団長が三木のり平。
毎回おなじみのメンバーをご紹介しているので、当時をご存じない方でも役者の名前は覚えられたのでは?
ゲスト出演は、レオタード姿で美容体操を旅館職員に教える春川ますみ、喫茶店店主の宮地晴子、フラダンス団員の水上竜子など。
監督:佐伯幸三です。
社長シリーズや、喜劇駅前シリーズの、主にDVD化されていない作品を放送してきたBS11は、どうやらこの『喜劇駅前番頭』をもって一区切りつけるようです。
恩讐を越えて戦後を生き抜いた3人の話
番組表を見ると、4月からは植木等の無責任・日本一シリーズがラインアップされています。
4/2 ニッポン無責任時代(クレージー映画1作目)
4/9 ニッポン無責任野郎(クレージー映画2作目)
4/16 日本一の裏切り男(クレージー映画20作目)
※クレージー映画は全30作
とくにおすすめは、『日本一の裏切り男』です。

このブログでは2度ご紹介しましたが、
⇒『日本一の裏切り男』は戦後世相を振り返るシリーズ随一の群像劇
⇒早坂暁の訃報で『日本一の裏切り男』を思い出す
シリーズ30本の中では異色の、早坂暁脚本によるブラックコメディです。
戦後のドサクサから高度経済成長まで、植木等、ハナ肇、浜美枝の3人が、騙し騙され、敵対したり和解したりしながらたくましく生き抜いていく話で、昭和20年~40年までの戦後史を振り返ります。
映画ですから、いささかデフォルメはありますが、終戦、朝鮮戦争、昭和元禄など実際の世相を舞台に、いかに当時の国民が翻弄されたかを、喜劇として描いている深い深い作品です。

セットの出来が素晴らしい。上は電車が走っています
私は、人と絶縁したら2度と関わるのはゴメンという考えですが、どん底から這い上がって生きていくためにはもっとしたたかに、必要なら誰とでも手を結び、また誰であっても裏切ったり蹴落としたりするんだな、自分はまだ甘いな、なんてこの映画を見て思ってしまいました。
昔の映画も楽しいですよ。たまにはいかがですか。
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この記事へのコメント
新しいものが始まる期待感がありますね。
このシリーズ、女優的には若き日の池内淳子をとても愉しみに観ております。若さと大人の綺麗さが入り混じり、とても魅力的な女優、そして現在はいないタイプの女優ですよね。
>主にDVD化されていない
こうした作品を放送してくれる素晴らしさと同時に、DVD化されてないというのも困りものですよね。結局行き着く問題は、「新旧問わず映画に積極的な興味を持ってくれる人を増やさなければ、観ることのできない作品がどんどん増えていく」ということです。
それはさて置き、BSなどで放送していただきたい映画はいくらでもあります。民放のBSではNHKのBSで放送しないような作品をどんどん掘り出していただきたいです。と書きながら、以前よくNHKで放送していた『若大将』シリーズなんかもあらためてやってほしいです。以前には興味なかったという自らの鑑賞姿勢が情けないですが、今ではいっぷく様のお記事を拝読し、観る気満々です。とりわけ若き日の星由里子に魅了されておりますから。あるいはNHKで放送しそうにない『女囚さそり』シリーズや、そしてあの『エスパイ』とか。あるいはエログロナンセンス特集とか、BSとはいえテレビなので無理かもしれませんが(笑)。そう言えば、「女優特集」的な企画もやっておりましたよね。そういうのはもっともっとやっていただきたいものです。
>昔の映画も楽しいですよ。
この件については現在の映画も(やや仕方なしに 笑)継続的に観ているわたしも自信をもってお勧めできます。「昔の映画の方がずっといいです」と。今の日本映画にもなかなかいいものもあるにはありますが、全体的なレベルはそうですね、60~70年代の方が遥かに上です。特に60年代は芸術性、娯楽性、そして質量も含め、米国やフランスと並び、世界最高レベルだったと思います。だから本当は若い人たちにも、無理やりにでも鑑賞させたいところなんです。
肺の水に関しては自分の母にそのような事態が訪れるとは想像もしておらず(この辺りも甘過ぎるところだと反省ばかりですが)、この度のことで俄かにいろいろ知るようになりました。母の場合は救急車で運ばれた時、肺の中が水で真っ白(レントゲン上)だと指摘されました。その時点でわたしはまだ肺の水の危険性を理解してなかったのだから情けないです。ICUなどでの治療で1日で水はかなり消失したのですが、17日の2度目の発作の時にはまた溜まり始めていたのだといいます。「危険性を理解できてなかった」というのはもうトラウマで、今夜の記事にも書きましたようにチューブも外れて喋られるようになっておりますが、どうしてもモニターなどの小さな数字の推移などが気になってしまいます。 RUKO
懐かしい!と言っても、私のリアルタイムは再放送などですが、往年のスターさんが若い時の作品って、本当に手が込んでいて、小さなディテールまでこだわっているのが伝わりますね。でも、雑な所が、とことん雑なのも味わい深くて、好きです(^^)v
私たちが子供のころ、電車はどこも
こんな形でした。
何よりも嬉しかったのは運転席の隣に
座れて窓も開きました! 夏は気持ち良かったです。
昔の映画が好きなのは私の場合、郷愁を感じるからだと思います(*^_^*)