『LaTeX2e美文書作成入門』商業印刷並みのレイアウトで文書作成

部屋の片付けをしたときに、『[改訂第7版]LaTeX2e 美文書作成入門』(奥村晴彦/黒木裕介著、技術評論社)を見つけ、最近またLaTeX(ラテフ)への関心を深めています。LaTeXとはTeX(テフ)のマクロパッケージで、TeXは、商業印刷としての組版能力を持つコンピュータ組版システム(ソフト+マークアップ言語)のことです。

文書を作成する時、ソフトは何をお使いですか。
多くの方は、MS Office Word (以下 Word) でしょうか。
文字を入力しながらレイアウトも確認でき、それがそのまま印刷画面になり(WYSIWYG)、多くの編集機能も揃った便利なソフトだと思います。
しかし、文字送り、改行、見出しサイズなど、レイアウトの核となる約束事が不適切で、あまりパッとしない仕上がりにがっかりしたことはありませんか。
かといって、自分が見出しの大きさを設定したり、適切な空白を開けたりとなかなか面倒です。
箇条書きに挿入や削除を行うときなど、番号をつけ直したりしなければなりません。
そこで、しばしばWordと比較されるのがTeX(テフ)です。
TeX、LaTeXとはなんだ
TeXは 1978年にDonald Ervin Knuth(数学者)によって開発された、フリーの組版システム(ソフト+マークアップ言語)です。
つまり、サイトを作るHTML言語のように、テキストデータに独自のタグ(コマンド)をつけることで、活版印刷(商業書籍や雑誌)のようなきれいなレイアウトにしてくれます。
そのTeXをより高度に使うためにに、いくつかの命令を組み合わせたマクロ体系があり、そのもっとも有名なものが、1985年にLeslie Lamport(数学者)が発表したLaTeX(ラテフ)といいます。
現在は、LaTeX2eという、バージョンアップされたマクロが使われています。
LaTeXによって、見出し部分に統一感をもたせたり、文字列と飾り枠にきれいなデザインをもたせたりなどを実現してくれます。
たとえば、微分・積分の数式などはWordでも作成できますが、数字の大きさや配置などは必ずしもベストとは言えません。
しかし、TeXを使えば、教科書に出てくるような整った数式を表示できます。

https://www.juen.ac.jp/math/nakagawa/texguide.html より
章・節・図・表・数式などの番号は自動的に付けてくれ、文章の加筆修正でその構成が動いても、作成者が手動で直す必要なく、LaTeXが自動的に番号を振り直してくれます。
目次・索引・引用文献のレイアウトも自動的に行なってくれます。
理系の学会や出版社は、LaTeXで組版したもので印刷されていることが多いのです。
私は、以前ある学術系団体の雑誌編集を行っていたのですが、その会の機関誌は、通常はDTPソフトでレイアウトすることになっていました。
しかし、投稿論文の中には数式の入ったものがあったので、数式部分はLaTeXで作ってEPSデータとして画像化して書き出し、DTPソフトに貼り付けていました。
TeX、LaTeXは、Mac、WindowsなどどんなOSのどんなマシンでもデータを作成でき、またどんなOSのどんなマシンでも同じ表示がなされます。
データ入力やコンパイルはすべてフリーソフトで揃いますから、一切お金はかかりません。
ただ、マークアップ言語といって、htmlのように、もとになるデータにコマンドを入れてコンパイルする広義のプログラム言語のため、Wordのように直接仕上がりを見ながら作っていくのに比べると、難しく感じるかもしれません。
字間や字送りがきれい
ユーザーの多くは、とくに理系のリポートや論文を書く学者や学生です。
ただ、組版は何も学術系だけでなく、一般の書籍や雑誌、パンフレット、チラシに至るまですべてに関わってくることです。
ということは、LaTeXによって、これまでWordで作っていた、企画書やサークルの会報のデータをより精緻なデザインに仕上げることができるわけです。
私の一昨日の記事のテキストデータをLaTeXで出力してみました。

レイアウトが論文やリポートのようですね。
これは「jarticle」という、学術誌の紀要のデザインを使っています。
文字のサイズはデフォルトですが、大きくも小さくもできます。
EastTeXというフリーソフトのTeXエディタでデータを作成します。

見出しの番号は自動的に振られています。


脚注も自動で欄外に番号付きで配置されます。
Wordの場合、数字やアルファベットと日本語の間隔が妙に広くなることがありますが、LaTeXはきれいに収まっています。


得意とするのはテキスト主体の文書ですが、アドレス帳や時刻表、挨拶状、サークルのお知らせなど、ペラモノのデザインレイアウトも可能です。
Wordのテンプレートで作るのとはひと味もふた味も違う、本格的なデザインです。
無料で商業出版並みのクォリティを出力できるので、文書の作成と印刷の機会が多い方なら、ぜひおすすめしたいシステムです。
初心者が効率よく利用するための書籍
『[改訂第7版]LaTeX2e 美文書作成入門』(奥村晴彦/黒木裕介著、技術評論社)は、TeXとは、そしてLaTeXとは何かといった概論、使用するソフトウェアのインストール、コマンドの解説など、LaTeX2eに関する入門書として、またリファレンスマニュアルとして利用できる書籍です。
このたび、2018年度日本数学会出版賞を、奥村晴彦・黒木裕介 著『LaTeX2ε美文書作成入門』https://t.co/xmgCN97d2k(技術評論社さん発行)が授賞されました。誠におめでとうございます。
— 共立出版 アリがと蟻 (@1738310) March 19, 2018
ネットでもある程度情報はありますが、何もわからないうちはどこのサイトをどう利用するのかわからないものです。
初心者が効率よく、LaTeXを使うことを助けてくれる本書をご覧になって進めれば、うまく使いこなせるようになるでしょう。
TeX、LaTeX、ご存知でしたか。
![[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51E5K7B53aL.jpg)
[改訂第7版]LaTeX2ε美文書作成入門
この記事へのコメント
最近は在庫数とかのチェックに追われて報告書とか縁がなくなりました。
LATEXは知りませんでした。
LaTeXはどうですかね。機会があれば使ってみます。
文章の内容はもちろんですが、読みやすく見やすく整える見てくれも大事ですからね。
興味は湧きますが、使いこなせるか自信はありませんね。
使いこなせるようになるまではWordなどの文書作成ソフト以上に大変そうですが、慣れればそれらよりも見た目も良い文書が出来ますね。
今じゃLaTeXやUNIXが個人でも普通に使える、良い時代(!?)になりました。
TexやLaTexなんて、名前さえ???です(^^;
でも仕事をリタイヤした年寄りは、Wordでさえも使う機会がなくなりました。