桜田淳子さんの女優新境地を開いた石坂洋次郎原作の『若い人』

今日は、桜田淳子さん(1958年4月14日~)の誕生日です。おめでとうございます。宗教団体の広告塔としての立場を批判されて表舞台から消え25年たちましたが、改めて彼女の芸能生活のハイライトはどこにあるのかと考えると、石坂洋次郎原作の『若い人』のヒロインを演じたときではないかと私は思います。

桜田淳子とは誰だ
還暦おやじのつぶやき??桜田淳子さんの歌手ラストアルバム♪ナチュラリー手に入れました??1983年発売で、この頃ほぼ女優さんの仕事が中心でした。改めてアルバムを聴いて歌手桜田淳子に、もう一度会いたいと改めて想っています。還暦を過ぎた等身大の歌声を、我々ファンに聴かせてください。???? pic.twitter.com/hp8dOFXIda
— yasuオカダ (@santoku2828) April 13, 2020
桜田淳子については、何度かご紹介しましたが、スカウト番組の『スター誕生!』でデビューしました。
森昌子、山口百恵と『花の中三トリオ』と呼ばれましたが、『スター誕生!』に出場した段階で、太鼓判を押されたのは彼女だけでした。
「神がかり的なことを言うようだが、至極平凡な少年少女の輪の中で一人だけ、浮き上がって見える、あるいは、淡い蛍光色に光るように思える少女がいた。(中略)それが桜田淳子だった」(『夢を食った男たち』文藝春秋)と、ベタ褒めだったのは、『スター誕生!』の企画者で審査員でもあった阿久悠氏、
司会者の萩本欽一も、こう証言しています。
「スタッフが入れ替わり立ち替わりのぞきに来るんだけど、誰が見ても淳子ちゃんだけに目がいく。これはもう、ほっといたって大スターになると予感させたよね。あのいかつい阿久悠さんも、彼女がいるとニコニコしてたくらい」(『アサヒ芸能』2013年1月3.10日号)
事実、デビュー後はすぐに新人賞を取り、1970年代~80年代中頃まで順調に歌手生活を送りました。
そして、並行して松竹で青春映画の主演実績を積み重ね、アイドル歌手を卒業する1980年代中頃からは、本格派の女優としても歩み始めていたのです。
その契機となった作品は、1977年の『若い人』ではないかと思います。
『若い人』
『若い人』とはなんだ
『若い人』というのは、石坂洋次郎の青春小説です。
ミッションスクールに勤める20代の男性教師・間崎慎太郎が、同僚女教師・橋本スミ子と教え子の女生徒・江波恵子のどちらにも惹かれますが、結局は情熱的な女生徒の方と結ばれ、同僚女教師は左翼非合法活動の集会を開いて検挙されてしまいます。
「左翼非合法」でもわかるとおり、作品は1933年に発表されたものですが、すでに戦前から何度も映画、もしくはテレビドラマ化されています。
私は男性教師が石坂浩二、同僚が香山美子、女生徒が松坂慶子の『NHK銀河テレビ小説』(1972年7月31日~9月1日)を観ました。
気の強い情熱的な生徒役として、松坂慶子の容姿とハキハキしたセリフが合っていて、子ども心に衝撃を受けた作品でした。
心密かに、石坂浩二は香山美子ではなく、松坂慶子と結ばれるべきだと興奮しながら視聴していました。
その5年後、アイドル歌手から本格派女優への過渡期に来ていた桜田淳子が、その女生徒役を演じることになったのです。
桜田淳子版の2つのポイント
桜田淳子姫主演映画若い人ダイジェスト https://t.co/P6NFXlPZxz @YouTubeさんから
— 畠中由宇・相互フォロー100% (@hata_follow) April 13, 2020
『若い人』(1977年、東宝・サンミュージック)は、ふたつの見どころがありました。
ひとつは、石坂洋次郎原作の映画化ですが、すでに映画化、ドラマ化されており、桜田淳子がそれらの作品との違いをどう演じるのか。つまり「差別化」です。
そういえば、『太陽にほえろ!』は殿下と恵子さん(香野百合子)だったが、映画『若い人』(1977年)の主人公は間崎(小野寺昭)と恵子さん(桜田淳子)だった。この『若い人』はDVD化されてないようだ。 pic.twitter.com/pJ5VDh5hRW
— tooru kobapi (@toorukobapi) December 14, 2013
江波恵子は桜田淳子のほか、間崎慎太郎は小野寺昭、橋本スミ子は三林京子が演じました。
原作や、他の映画化ドラマ化された作品は、男性教師の視点で書かれていますが、この桜田淳子版映画については、生徒である桜田淳子が主役で描かれ、不良少女が男性教師を愛することによって大人に目覚めていく、というストーリーになっています。
新人教師の男性が、頭がよく美人で、勉強ができるくせにわざとしないでいる女生徒に次第に惹かれていく。
同じように女生徒も教師に惹かれていくところまでは原作と同じですが、違うのは、最後に桜田淳子のほうが小野寺昭とは結婚しないと校長に宣言し、関係は終焉するのです。つまり結ばれなかったのです。
青年教師の青春の蹉跌と、思春期の少女の多感な心理を描いた、何ともほろ苦い展開です。
現代の若い女性なら、10歳も年上の「おっさん」とフツーに結婚するハッピーエンドなんかで満足しないという展開だったわけですが、有名すぎる原作すらも覆してしまう設定を演じきったところに、当時の桜田淳子のパワーを感じました。
もうひとつは、これまで映画というと、山口百恵は東宝の文芸路線、一方の桜田淳子は『スプーン一杯の幸せ』『遺書 白い少女』など、落合恵子原作の松竹青春路線で棲み分けていました。
それなら、本作も山口百恵のはずです。
それが、東宝制作でありながら、桜田淳子が主演。
原作者の石坂洋次郎が、ヒロインのイメージに山口百恵は合わないと、首を縦に振らなかったからといわれています。
だからといって、他社の看板女優で、かつライバルである桜田淳子の起用は、当時の堀威夫・ホリプロ社長や、山口百恵としては心中穏やかでないものがあったのではないでしょうか。
これまた、桜田淳子の芸能生活のハイライトと言ってもいいエピソードであると思います。
桜田淳子版も松坂慶子版もまた観たい
『若い人』は、1995年を最後に映画化もドラマ化もされていません。
桜田淳子版のように、もう原作を書き換えないと現代に通用しないと思われているからかもしれませんが、作品としては素晴らしいものなので、もちろん桜田淳子版を含めて、過去の作品をCSやBSで是非放送していただきたいなと思います。
『若い人』ご存知ですか。

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この記事へのコメント
めっちゃ親近感あるのですが、
某宗教どっぷりの時は、やっぱり引きました(^_^;)
それが気になりますね。
某宗教にのめり込んだのが残念でなりませんが、一昨年近影をテレビで拝見しましたが、相変わらず綺麗でした。
桜田淳子さん、子供心に中三トリオの中で一番きれいだなと思っていました
多感な時期に寝る間もなく何も考えなく疑うことなく走ってきた結果なんでしょうね
もっぱら某宗教の広告塔になった話ですが・・・。芸能界復帰(?)の話も聞こえていたと思いますが、その後どうなったのでしょうね・・・。
わたしにとっての桜田淳子は、
イセキのCMの、
『やっぱり、早苗だべさ』
で、決まりです。