司葉子の可憐で寂しげな佇まいを引き出した成瀬巳喜男監督の『乱れ雲』
東宝スタートランプ。
— 下村 健 (@Shimo_x2) June 7, 2019
佐原健二、宝田明、夏木陽介、ミッキー・カーチス、香川京子、北あけみ、田村奈巳、司葉子、原知佐子、水野久美 各氏の直筆サインを入り。#フォロワーさんが絶対持ってないであろう物を晒せ pic.twitter.com/r2bt9kJ7Gl
今日は、司葉子さん(1934年8月20日~)の誕生日です。おめでとうございます。そして、司さんにとっては代表作ともいえる『乱れ雲』のメガホンを撮った成瀬巳喜男監督(1905年8月20日~1969年7月2日)の生まれた日でもあります。『乱れ雲』は男女の葛藤を表現した素晴らしい作品でした。
清く正しく美しい女優と恋愛映画の名匠
司葉子は、共立女子短大に在学中、メイ牛山が探していた雑誌モデルをとして『家庭よみうり』の表紙を飾ったことがきっかけでスカウトされ、東宝と契約。
映画『君死に給うことなかれ』(1954年)でデビューしましたが、「「清く正しく美しく」を社是とする東宝の健全なお嬢さんイメージを代表する1人とされ、看板女優として活躍」(Wikiより)しました。
これ司葉子の最高傑作。
— タニグチ (@L6n9JdEXA1liUZ3) March 29, 2020
その場所どころか日本映画史に残ってもおかしくない。日本にしか作れない、作っちゃいけないテーマ。ゴジラと表裏一体の話。早坂文雄の繊細なスコアも盛り上がる。芝居はまだまだたが司葉子の美しさ!ソフトも放送も無理そうだからフィルムを焼くべき。 pic.twitter.com/WHCdB4RTFq
成瀬巳喜男監督は、工手学校(現工学院大学)を家計の都合で中退して、松竹蒲田撮影所に小道具係として入社。
2年後に助監督になりますが、下積みが長く、いつまでたっても監督になれず、山本薩夫とともにPCL(後の東宝)に移籍します。
しかし、東宝では労働争議が起こったため、黒澤明や谷口千吉らと共に東宝を離れ、映画芸術協会を設立して大映や松竹などの作品を撮ります。
その後、東宝で林芙美子原作、原節子と上原謙主演の『めし』(1951年)が高い評価を受けて東宝に復帰。
1955年に監督した高峰秀子、森雅之主演の『浮雲』が最高傑作といわれています。
浮雲
成瀬巳喜男『浮雲』 戦時下の仏印で出会った女たらしで自堕落な妻ある男への未練。別れても別れても別れきれないと女と男の腐れ縁。運命に翻弄される高峰秀子の演技の振れ幅、森雅之の崩れた気品と色気、若き岡田茉莉子。戦後の風景、モノクロの美しい映像。情感とやるせなさ、抒情的音楽が纏わる名作 pic.twitter.com/1qxMZi519e
— 魔の山 (@manoyama12) August 8, 2020
戦争中、タイピストとしてベトナムら渡ったゆき子(高峰秀子)は、農林省技師の富岡(森雅之)と出会い不倫の関係になります。
森雅之は結婚の口約束をするのですが、戦争も終わって帰国しても結局守られません。
高峰秀子もいろいろな男と関係を続けながら、森雅之との関係もきれません。
脚本家の鎌田敏夫氏曰く、『浮雲』(成瀬巳喜男監督)のヒロインは、ひたすら男に尽くす従順な女ではなく、「私の生活は私がやっていくのよ。それしかないのよ」という女。でも2人は別れられないところが「戦後最高の恋愛映画」と評しています。
⇒『浮雲』の高峰秀子と『男女7人秋物語』の大竹しのぶ
「別れても別れても別れきれない」ことに「翻弄される演技の振れ幅」が見どころなわけですが、それを今度は「「清く正しく美しく」を社是とする東宝の健全なお嬢さんイメージを代表する」司葉子に演じさせたのが、このブログでも過去にご紹介したことのある『乱れ雲』なのです。
ただし、森雅之は「自堕落な妻ある男」でしたが、司葉子の相手は、若大将キャラクターそのままの加山雄三です。
まさに「清く正しい」キャラクターの男が、悪気なくズンズン迫ってくるのです。
ある意味、女性冥利に尽きるかもしれませんが、ではそれをすんなり受け入れるわけにはいかない事情とはなにか……。
乱れ雲
『#乱れ雲』は交通事故の加害者(#加山雄三)と被害者の妻(#司葉子)という“#禁断の愛”を描きました。#成瀬巳喜男 監督 pic.twitter.com/BNIWvSJxI7
— 畠中由宇・相互フォロー100% (@hata_follow) August 19, 2020
『乱れ雲』(1967年、東宝)は、成瀬巳喜男監督に松山善三脚本という黄金コンビによる作品です。
通産省官僚である夫(土屋嘉男)のアメリカ行きが決まり、懐妊もして夢いっぱいの妻・由美子(司葉子)
しかし、夫は突然、史郎(加山雄三)の運転による交通事故で死亡します。
由美子(司葉子)は夫をなくし、夫の実家からは離籍され(←どうやら設定は旧民法の時代)、胎児は堕胎を余儀なくされます。
一方、史郎(加山雄三)は事故は無罪になりましたが、常務の娘(浜美枝)と婚約解消、青森へ転勤となりました。
由美子も、東京の生活が辛くなり、義姉(森光子)が切り盛りする、やはり青森の実家の旅館へ帰ります。
加山雄三は、律儀に自分の給料から毎月1万5000円を司葉子に直接払い続けることで、2人は接点を持ち続けることになります。
加山雄三は、司葉子のために自分は青森にいないほうがいいと転勤を希望しますが、駐在員もいない西パキスタンにとばされることになり、お別れに司葉子に十和田湖を案内してもらうことに。
しかし、当日は突然の雨で、発熱した加山雄三を司葉子が寝ずに看病。
司葉子は思わず加山雄三の手を握りしめ、加山雄三も握り返します。
深い因縁があるにもかかわらず、悪気のない真っ直ぐな気持ちの“若大将”にどんどん惹かれていく司葉子。
いったんは求愛を拒んだものの、加山雄三が出発の日に、思い切って加山雄三のアパートを訪ねます。
加山雄三が発つ直前に到着できた司葉子の、喜びを抑えきれない、でも加山雄三が受け入れてくれるかどうかを心配する表情は、司葉子の芸能生活最高の表現ではないかと思います。
7年後にはテレビドラマ化も
#これ見た人美しい女優の画像貼れ
— わいわい (@fyoshiyoko) October 22, 2019
邦画からは、成瀬巳喜男監督の遺作『乱れ雲』のヒロイン・司葉子様。
可憐で寂しげな佇まいに、
恋してしまいました。 pic.twitter.com/yGj4IqbJUY
しかし、結局この禁断の愛は結実しませんでした。
2人が結ばれようとするときに、交通事故のけが人を運ぶ救急車を見てしまったのです。
そして、成瀬巳喜男監督にとって、本作は遺作になりました。
7年後に、『もうひとつの愛』というタイトルで、やはり司葉子主演による同じストーリーで東宝がテレビドラマ化しています。
成瀬巳喜男の世界をもう1度演じたいと思ったのでしょうか。
いい作品だったと思います。
司葉子さんは、今日で85歳。
インタビューや催しなどで拝見すると、年齢よりもずっとお若く見えます。
これからもお元気でお過ごしいただきたいですね。

甦える大地 - 石原裕次郎, 司葉子, 三國連太郎, 岡田英次, 志村喬, 滝沢修, 浜田光夫, 川地民夫, 北林谷栄, 奈良岡朋子, 寺尾 聰, 渡 哲也, 中村 登, 猪又憲吾, 石原裕次郎, 大工原隆親, 小林正彦

乱れ雲 - 加山雄三, 司葉子, 森光子, 浜美枝, 草笛光子, 成瀬巳喜男, 山田信夫
この記事へのコメント
それはさて置き調べてみたけど獄門島も女王蜂も観てるのに印象が無いんだよなぁ(^_^;)
1名だけでも相当価値があると思いますが、それが複数名とは凄いです。
友人が絶賛していたのを覚えています。
私は見る機会を逃しました。