虔十公園林(宮沢賢治著)常不軽菩薩が杉林を育てる話

虔十公園林(宮沢賢治著)は、周りから馬鹿にされていた虔十少年の植えた杉が、本人が亡くなった後も大きく育ち公園林になった話です。知的障害者に対するあふれる家族愛とともに、「仏の十力」が表現された宮沢賢治さんらしい仏法的童話です。

『虔十公園林』は、生前未発表だった宮沢賢治さんの短編童話です。
『虔十公園林』の主人公は虔十少年。
『法華経』に出てくる、常不軽菩薩(じょうふきょうぼさつ)がモデルといわれています。
宮沢賢治作品は仏教色が強く、たとえば『銀河鉄道の夜』(原作/宮沢賢治著、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)は、臨死体験を描いた童話を漫画化しています。
銀河鉄道の夜(原作/宮沢賢治著、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)は、銀河鉄道の不思議な旅を描いた童話の漫画化です。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道に乗車し、不思議な乗客と旅をする物語です。https://t.co/TRG7CcuzJt #銀河鉄道の夜 #宮沢賢治 #臨死体験 pic.twitter.com/4tvUrybdrR
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漫画で読む文学『注文の多い料理店』(原作/宮沢賢治、漫画/だらく)は、狩猟に来た青年2人が入った奇妙な西洋料理店の話です。
漫画で読む文学『注文の多い料理店』(原作/宮沢賢治、漫画/だらく)は、狩猟に来た青年2人が入った奇妙な西洋料理店の話です。宮沢賢治が生前に出版した唯一の童話集『#注文の多い料理店』の中のメインの作品で、今も絵本やアニメ化される初期の代表作。https://t.co/VqqZcDvHm0 #五戒 #仏教 pic.twitter.com/hGhnWG5oep
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『風の又三郎』は、「久遠実成の釈迦如来」をモチーフにしたと言われています。
#風の又三郎(原作/宮沢賢治、漫画/片山愁、Jコミックテラス)は、不思議な少年が谷川の岸の小さな小学校に転校してきた話。原作者の死後に発表されましたが、原作者にとっては代表作に。さまざまな刺激的行動のシーンが漫画化されています。https://t.co/0gxcEmNBi3 #久遠実成 #釈迦如来 #仏教 pic.twitter.com/kzkM7b0IdK
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) October 9, 2023
本作は、その中でも仏教色、具体的には法華経のモチーフが感じられる作品です。
たれがかしこくたれが賢くないかはわかりません
知的障害があると思われる虔十少年は、いつも笑っていて周囲からバカにされています。
しかし、生き物や雨や風から多くを感じとることができる少年でした。
そんな虔十少年が、農家である父親から杉苗700本を買って貰い、家の裏手にある痩せた広場に植林します。
広場は粘土質の痩せた土地だったので、杉の木は高さが2~3m程度までしか育つことができないといわれていました。
それでも、少年は杉の苗を植えることにこだわりを見せました。
その後も、杉林の成長を巡って周りと軋轢も生みますが、虔十少年は伐採を拒み杉を守ります。
しかし、虔十少年は、チブスにかかってシにました。
月日が経ち、町全体がかわっても、育った杉林だけは残りました。
杉林は、土壌保全・土砂災害防止とともに、子どもたちの遊び場として役に立っています。
十数年後、子供時代に杉林で遊んだ博士が里帰りしました。
変わってしまった町の中で、杉林が残っていることに驚き喜びます。
杉林は、虔十少年の父親が、虔十少年の形見だと考え売却しなかったために、そのまま残っていました。
博士は言います。
「虔十という人は、少し足りないと私らは思っていたのです。いつでもはあはあ笑っている人でした。毎日丁度この辺に立って私らの遊ぶのを見ていたのです。この杉もみんなその人が植えたのだそうです。ああ全く誰がかしこく誰が賢くないかはわかりません。」
同地は、博士の発案で、「虔十公園林」と彫った青い橄欖岩の碑が建ちました。
常不軽菩薩をモデルに「仏の十力」を描く
この主人公の虔十少年のモデル、常不軽菩薩とは、『法華経』常不軽菩薩品第二十に登場する菩薩です。
菩薩というのは、仏でありながら、さらに悟りを求めるもので、如来(悟った人)の次にある立場です。
先日ご紹介した、『別冊NHK100分de名著集中講義大乗仏教こうしてブッダの教えは変容した』(佐々木閑著、NHK出版)にも、「まわりの人たちからどれほど軽んじられても、 「なんとかして人々を救いたい」と願う虔十の思いの根底にあったのは、『法華経』の世界観にほかなりません。」と、本作にも言及されています。
NHK「100分de名著」ブックスブッダ真理のことば(佐々木閑著)は、「お釈迦様の仏教」をその第一人者が『ダンマパダ』から解説。たとえば、もし、あなたにとって大事な人が亡くなったら、仏教的にはどうとらえるか、という話が書かれています。https://t.co/FJSSbjvjuC #仏教 #お釈迦様 #ダンマパダ pic.twitter.com/vBebBYmFiv
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) October 5, 2023
『法華経』というのは大乗仏教のお経であり、日本の仏教諸宗派に影響を与えています。
「すべての人々は、平等に仏陀になることが可能である(衆生成仏)」という教えです。
私たちは、過去(世)において仏陀と出会い菩薩になっており、現世で善行を積めば仏陀になれる、というのが大乗仏教の教えです。
『法華経』には、「お経の神秘性を信じて、自分が菩薩であることを自覚しなさい」という悟りへの思いが込められているといいます。
そこで、『法華経』の信者の多くは、『法華経』を広めることが菩薩である自分の仕事と考え、『法華経』が説く世界をこの世に実現することを使命と考えます。
もっとも、その信仰のない人からすれば、それは迷惑な話ですから、信者は邪険にされます。
が、『法華経』によると、「迫害を受けている状況こそが、『法華経』の正しさの証拠である」としています。
真実を説くお経は、俗世の愚かな人々の目には邪説のように映って、迫害の対象になるから、日蓮宗開祖の日蓮上人も、数々の法難に遭ったということです。
その『法華経』の『常不軽菩薩品』という章に、その名も常不軽菩薩が登場しますが、誰かと会うたびに、「私はあなた方を軽蔑していないし、あなた方は人に軽んじられる人間ではありません。同じ菩薩道を歩んでいて、やがては仏陀となることが約束されているので心配しないでください」と語りかけるというのです。
聞き方によっては、マウント取られたような上から目線ですし、別に信仰がなければ、心配もへったくれもありません。
当然、「余計なお世話だ。うっせんだよ」と罵られるわけです。
しかし、常不軽菩薩はそれにもめげずに『法華経』を説き歩き、やがて立派な仏陀になって、人々の尊敬を集めることになる、のだそうです。
信者にとっては、迷惑がられることも功徳というわけです。
どことは書きませんが、法華経系の新宗教団体の勧誘が、問題になったことがありますよね。どことは書きませんよ。
主人公が途中でシぬストーリーは、「苦労しても報われないのが菩薩の正しい姿だ」ということを示唆しており、それは、つらい状況にある人が、なぜ『法華経』を信仰するのか、という根拠にもなっているのです。
さらに、物語の中で、博士は虔十少年の行為について「十力の作用」という言葉を呟きます。
十力とは、仏(如来)のみが持つ10種の智力で、衆生を救済する(成仏させる)ことができる力だそうです。
その法華経を拠り所とする日蓮の命日は10月13日。

日蓮宗総本山の池上本門寺では、4年ぶりに御会式が行われます。
本作は、法華経を熱心に信仰していた宮沢賢治らしい『常不軽菩薩品』の翻案作品です。

虔十公園林 - 宮沢 賢治
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この記事へのコメント
先日はCMがなくて見やすかったですが
今日は”詳しく読む”を押すといきなり、
イボ・ほくろの治療のような気持ち悪い
動画になりました。 すぐに消してブログを
読みましたがあまりに見にくい動画だったので
ご一報します。