このゴミは収集できません(滝沢秀一著、角川文庫) Kindle版

このゴミは収集できません(滝沢秀一著、角川文庫) Kindle版

このゴミは収集できません(滝沢秀一著、角川文庫)は、お笑い芸人の滝沢秀一がゴミ清掃を始めて経験したゴミ清掃員エッセイです。お笑い芸人で食えなくてゴミ清掃員を始めましたが、今やゴミ清掃員お笑い芸人としてオンリーワンのポジションを獲得しました。

本書『このゴミは収集できません』は、お笑い芸人マシンガンズの滝沢秀一さんが上梓しました。

太田プロ所属。名前、聞いたことあるかなあ……ぐらいの認識で、もちろんマシンガンズの芸風もわかりません。

世間に浸透していないということは、まだ芸人として一人前ではないと言うことかな。

少なくとも、お金については十分とは云えず、夫人に稼いでこいと迫られ、闇営業を探すも、美味しい話などあるわけはなく、やめた元仲間が就いていたゴミ清掃員を始めることに。

そこでの体験をまとめた書籍です。


清掃は自治体の仕事ですが、現場はゴミ集荷清掃業務を民間企業に委託しています。

ですから、著者がはたらいているのも民間の会社ということです。

しかし、皮肉にも、というか、苦肉の策で始めた清掃員が、逆に芸人としてのオンリーワンになり、SNSでは多くのフォロワーを擁する注目芸人になりました。

そんな著者のゴミ清掃を始めてたどりついたエッセイ

ゴミから見る格差社会や、ゴミ清掃員おすすめの物件、ゴミ清掃業界のとび抜けた人材などが描かれています。

中は漫画も含めていろいろ書かれていますが、その中から苦労話をご紹介しましょう。

著者も思わず「清掃員って人間ですよ?」



たとえば、ゴミを出し忘れた人が、「ゴミを持っていかなかった」と「苦情」を入れて、強引にゴミを回収させるという話があります。

ひどい人もいるもんですね。

私だったら、その程度でも我慢ならないな。

このように、清掃業を馬鹿にし、清掃員を人間扱いしていないエピソードがたくさん書かれています。

著者が、ゴミ清掃業に身を転じて間もない頃、朝礼で常務が、いきなりこう言ったそうです。

「えー、先日も話しましたが、最近、作業中に後ろからバットで殴られた人がいました。ですから作業中は絶対に、必ず全員ヘルメットをかぶってください」

えっ? なんで? 著者はびっくりしますが、他の清掃員は、顔色ひとつ変えず聞いている。

殴るどころか、ナイフで刺されることもあったそうです。

理不尽で常軌を逸したエピソードなど、いくらでもあるとか。

いつも優しい老婦人が、生ゴミの日に、資源ごみの缶をもって行ってくれと頼むので、「今日は違うんです。資源ごみはこの地区だったら金曜日に……」と言いかけると、「同じゴミだろがァァァ」と豹変してアルミ缶を投げつけたという話もあります。

そのときは、回収車に乗って逃げたらしいのですが、以来、そのババアは、ゴミ回収時に様子をうかがい、別の場所も自転車で後追いして、見ず知らずの他人の家のポリバケツをチェック。

ゴミが残っていると、「ちゃんとっていないだろぉぉぉぉ」と、わずかに残っていた新聞紙1片をビニール傘で突き刺して、追いかけてきたそうです。

常務は、身の危険を感じるトラブルがあったら、「まず車に逃げ込み」、それでも乗ってこようとする人がいたら、開けてあるスライドドアを閉めて「足を折ってください」と、究極の正当防衛策まで授けています。

ゴミ現場だけではありません。著者は、YouTuberの話も書いています。
ゴミ清掃員になってから、あっそうだと思い、気紛れで「YouTube」でゴミ清掃 の動画を見てみようと思った。 その動画を見て何とも嫌な気分になったのだが、わざと少し大きめのゴミを出して、 持っていくかどうかを隠し撮りして、実験しているのである。僕から見ても粗大ゴミかど (182ページ中の79ページ目)

うか微妙な大きさである。 〇〇やってみましたああ、じゃねえよー 集積所が映し出されていて、声だけが入っている。 「この清掃員は持っていきませんでしたね。じゃ違う集積所に持っていって、実験してみましょう。持っていった、持っていった、ゴミ持っていったーなぜ清掃員によって判断が違うんでしょうね?キチンとした取り決めがないんでしょうかね」

この動画の恐ろしいところは、正義感を持って世の中を正して いるつもりで、悪意に満ちていることに本人が気づいていないところである。これで再生回数を上げようと思って いる心に底知れぬ恐怖を感じた。 清掃員はロボットじゃなく、人間が回収している。確かに三〇センチ以上のゴミは粗大 ゴミで回収しなければならない決まりはある。百歩譲って二八センチなのに持っていかな かったなら、まだわかる。持っていったものに対して、「持っていったぞ、おかしいぞ」っていうのは、世の中を複雑に変形させようとしているとしか思えない。(182ページ中の80ページ目 )

動画は何を言っているかと言うと、清掃員が決まりに反してゴミを持っていかなかったことを批判しているのではなく、持っていかなくてもいいものを清掃員か善意で持っていったことを以て、別の清掃員は持っていかなかったことを「批判」しているのです。

おい、YouTuber、気は確かか、と言いたくなります。

著者の指摘する通り、このYouTuberは「悪意ありき」なんでしょうね。

著者も、「清掃員って人間ですよ?」という見出しをつけています

日本のごみ処理インフラを支えるゴミ清掃業



要するに、3Kとか、勝手なレッテルで職業に貴賎をつけるから、「賎認定」したこの職業に、日頃の鬱憤バラシをしているのではないでしょうか。

もちろん、上記のようなことはごく一部の人だと思いますよ。

でも、清掃員に対する蔑視はなかったとしても、分別をきちんとしないとか、ゴミを出す時間を守らないとか、バレなきゃ良いんだ、のような態度は、実はボチボチあったりして。

その人の本性って、見えないところに出てくるもんなんですよね。

日本のごみ処理インフラは、世界的に見ても非常に高い水準を維持しているといわれています。

OECD諸国の中でも、効果的なごみ処理を行っている国として高い評価を受けています。

ごみの排出量自体が少なく、焼却処理が充分に行われていること、不法投棄や埋め立てが少ないことが評価されています。

それを支えているのが、清掃業者ではないでしょうか。

そういう日本のいいところを大事にしなければ。ご一考願いたいですね。

ゴミは、日時と分別を守って出していますか。

このゴミは収集できません (角川文庫) - 滝沢 秀一
このゴミは収集できません (角川文庫) - 滝沢 秀一

この記事へのコメント

2024年03月03日 01:21
包装紙を、「可燃ごみ」ではなく
再利用対象との注意を受けた経験アリ
2024年03月03日 07:08
落合三郎さん、金原義明さんの『いちころにころ』にも、
「あんなふう」呼ばわりされたり、
無視されたりすることが耐えがたいと書かれていました。
ごみ収集をありがたく感じました。
自治会で集積所の管理をしていますが、
約束をきちんと守ることができない人がごく一部います。
少しの手間を惜しむことはないのにと思ってしまいます。
2024年03月03日 09:15
私はいつも仕事の弁当配達しながら、あちこちで
ゴミ収集車を見ますが作業員はほとんど急ぎ足か
駆け足なので、あの仕事はとても重労働に思います。
実際1日で仕事をやめた人も知っています。
ゴミを出す人の思いやりが欲しいですよね。
2024年03月03日 10:43
ごみステーションの現場ではいろんなエピソードがあるんですね。
読んでてそんな酷いこともあるのかと思いました。気をつけます。
2024年03月03日 14:45
俺もこの人の芸は知らないけどあれこれ発信してくれてるから嬉しくて(^ν^)
2024年03月03日 15:24
何を基準に職業に貴賎を付けるのか意味が分かりません
外国でごみ収集の方達がストを起こして町中ゴミだらけになったと聞きます
その事を想像しただけでも感謝すべき職業ではないでしょうか
交通誘導員の方にも同じことが言えると思います
世の中、自分勝手な人が多くなりました
戦後の教育の問題でしょうか???
2024年03月03日 16:04
まったくもって、不愉快な話で、清掃員方々のご苦労がどれほどのものか分かった気がします。世の中にはこんな人間がいると思うと寂しくなりますね。あおり運転をする人間と共通点があるような気がします。同じ人間、もっと仲良く暮らせばいいのにと思う時が時たまあるのは残念です。
2024年03月03日 22:54
実は轢かれた動物の死体回収とかもやっているんです
よね。実際見た時、「あれは大変だ」と思ったり。
2024年03月03日 23:15
昔から分別の厳しい地区に住んでます。
でも違反ごみは後を絶たないですね。
2024年03月04日 00:36
最近はSDGs関係の発信も増えてる芸人さんらしいですね
2024年03月05日 00:24
仕事先の地域のごみ収集場所を見ても
モラルの低下というか。。。。
酷い惨状もありますね。