ドン底すぎる女たち Vol.9(ぶんか社)で描く嫉妬や自己愛、群集心理

ドン底すぎる女たち Vol.9(ぶんか社)で描く嫉妬や自己愛、群集心理

ドン底すぎる女たち Vol.9(ぶんか社)は、『私、憎まれてます~人の悪意が一番怖い~』というサブタイトルがつく短編マンガ集です。なぜ「憎まれている」かというと、その人自身の問題ではなく、他者からの嫉妬や自己愛、群集心理による被害。実にリアリティがあります。連休の谷間、Kindle読み放題に入っていた短編漫画集をご紹介します。

本書『ドン底すぎる女たち Vol.9』(ぶんか社)は、川端みどり、小野拓実、さやかゆみ、椎名ほの、三谷三枝子さんらの短編マンガを収載したものです。

それぞれ別々のストーリーですが、共通したテーマは、人間の嫉妬や自己愛、群集心理など。

被害者側からストーリーは展開しています。

収録作品をご紹介します。

・「花 朧」川端みどり
嫁姑問題。ひどい姑の嫁いびりは、自分もそうされていたからだった。
・「いじめの罪」小野拓実
いじめで級友を自殺に追い込んだ女生徒に起こった「報い」
・「償いの行方」 さやかゆみ
小学校のときにいじめていた元級友が同じ職場になって……
・「悪意の眼差し」椎名ほの
マンションに越してきたセレブ然とした女性と意地悪な管理人。結末は大どんでん返し
・「棄てられた女」 三谷三枝子
愛人に子供ができたからと、熟年離婚させられた女性の復讐劇

私が子供の頃、『婦人公論』に載っていた手記に、このテの話がよくありました。

本記事では、その中で「いじめの罪」をご紹介します。

嫉妬と自己愛から取り返しがつかないことに


ストーリーは、転校生に友達を取られたような気になった女生徒が、メンツもあって転校生をいじめて自サツに追い込んだものの、ネットで個人情報をさらされて家庭も崩壊したという話です。

いきなり、女子中学生・高橋絵真が遺書を残して自サツするシーンから始まります。

遺書には、同級生の紅粉美咲を、「こいつだけはゼッタイゆるさない!!」と書き残しています。

高橋絵真は、6月に転校してきました。

ちょうど、紅粉美咲が風邪で3日間休んでいたときです。

学校へ行くと、紅粉美咲のいちばんの親友である朋香が、高橋絵真と楽しそうに話をしていました。

紅粉美咲は、友達を取られた嫉妬心が芽生え、「嫌だな」と思います。

高橋絵真の家は母子家庭で、貧困家庭でした。

紅粉美咲が、家に帰ってそのことを母親に話すと、

「母子家庭でそんなに貧しいの。大丈夫なの、その子。お友達は選ばないと」

片親は何しでかすかわかったものではない、と娘に刷り込んでいるのです。

そんなある日、その紅粉美咲の母親の財布から1万円がなくなったといいます。

「そういえば美咲。今日お友達来てたわよね。絵真ちゃんの家って貧乏なんでしょ?まさか」と母親。

夫が怒り出します。

「いい加減にしろ!!娘の友達疑うなんて最低だぞ!!いいよ。俺が取ったことにして!!それでいいだろ!?」

格好良すぎる夫。ですが、実は夫が真犯人だったのです。

さすがに、娘のクラスメートが犯人扱いされていることで、黙ってはいられなかったようです。

しかし、このことで、紅粉美咲は、別のクラスメートに「家のお金を盗まれた」と言いふらし始めます。

そして、絵真の「ボロい家」を教えて印象操作に励みます。

ところが、紅粉美咲が家に帰ると、犯人はオヤジという真相が明らかになります。

「お父さん、ひどい。今更仲直りなんかできない。絵真なんかに頭下げるのはまっぴらよ」

噂は広がり、美咲は罪人呼ばわり。

しかし、自己愛の強い美咲は謝りません。それどころか、自分を正当化するために、朋香の財布を美咲のカバンに入れて事件をでっち上げ、ダメ押しします。

その結果、担任教師まで絵真を疑うようになり、とうとう絵真は……。

しかし、冒頭の遺書の内容が明らかになり、ネットで紅粉美咲の実名や行状や連絡先までがさらされます。

父親も左遷。

社会的制裁は、父親までも巻き込みました。

父親も、1万円くすねたことが高くつきました。

美咲は居づらくなって、母方の姓を名乗って転校しますが、それでも制裁は終わらず……。

結末は本書をごらんくたさい。

なかなか興味深いストーリーでした


私も母子家庭だったので、盗みを疑われたことはありませんでしたが、何かというと、「あそこは、お父さんがいないから」というロジックは、腹が立ちましたね。

私が小中学の頃(1970年代)の差別キーワード。

1.片親
2.在日
3.同和

東京の場合、「3」は関西程ではないのですが、まあ、要するに世間は、なにか理由をつけて他人にマウントを取りたいんでしょうね。

それと自己愛ね。なんとかなりませんかね。

自己愛の人というのは、仲良くしていても、いざとなれば平気で人を裏切ったり、嘘をついたり、美咲のように自己正当化のための仕掛けをしたりしますからね。

短編マンガではありますが、考えさせてくれます。

他のストーリーについても、また後日、機会があったらご紹介します。

みなさんは、過去に、いじめられたり、悔しかったりした経験が、今も心に影を落としている、なんてことはありませんか。

ドン底すぎる女たち Vol.9 私、憎まれてます ~人の悪意が一番怖い~ - 川端みどり, 小野拓実, さやかゆみ, 椎名ほの, 三谷三枝子
ドン底すぎる女たち Vol.9 私、憎まれてます ~人の悪意が一番怖い~ - 川端みどり, 小野拓実, さやかゆみ, 椎名ほの, 三谷三枝子

ドン底すぎる女たち Vol.9 私、憎まれてます ?人の悪意が一番怖い?【電子書籍】[ 川端みどり ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
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この記事へのコメント

2024年05月02日 06:52
おはようございます^^
虐められたことはないですが、ちょっとカッコ良過ぎるかな~いじめられる人をかばったことはありますよ(^^
2024年05月02日 07:32
おはようございます!
イジメはなくならないですね~!
2024年05月02日 07:34
今「無縁死」の本読んでいます。ドキュメント。ちょっとした踏み外し。おもてなし・もやいなぞ昔の社会のこと思います。
今年はスナップよくできて、キヌサヤがいけません。
2024年05月02日 08:01
正当な理由もないのに、ターゲットにされるのは許せないです(; ・`д・´)
2024年05月02日 11:56
うちも片親だったけどやたら哀れんでくれてたなぁ、あれはあれでマウント取ってたんだろう(笑)
2024年05月02日 17:11
昔も今もいじめはなくならないですね。
行動には結果が付きまといます。
2024年05月02日 17:22
ドン底すぎる女たちとか憎まれているなど考えすぎです。
他人はそんなにまで見下したりはしてないですよ
2024年05月02日 23:28
小学生の頃にいじめられた経験は自分の性格に大きく影響したと感じています。けっこう壮絶ないじめで、自分がいじめる側になることもありました。
勉強などを頑張って自信を持てるようになりましたが、病弱のため夫の実家から責められ、また自己肯定感が下がってしまいました。
なぜ人はマウントを取りたがるのでしょうね?そういう人に出会うと、「この人はゴリラだ」と思うようにしています(;^ω^)
2024年05月02日 23:44
自分がされたらやだなぁ
2024年05月04日 23:37
親の何気ない偏見って、結構いじめとかに発展するん
ですよね。・・・だから・・・だ!みたいな。
自分の母親も(偏見が)酷かった・・・・