客入れが難しいとされる“ニッパチ”公開は条件的に厳しかったが、それでも草なぎ剛の『僕と妻の1778の物語』とともに興行収入10億円は突破した。
商売では数字が伸び悩むと言われるのがいわゆる“ニッパチ”。読んで字のごとく2月と8月のことだ。2月は28日しかなく、8月はお盆休みということがその理由にあるが、お客商売の興行の世界では、8月はともかく、2月は確かに厳しい。
夏冬春休みにもかからず、それどころか入学試験、学年末試験、定期試験の時期で、学生・生徒は映画どころではない。社会人にしたって、今どき暖房のない映画館はないだろうが、1年中でいちばん寒い2月に、じっと座っている映画館に積極的に行こうという気はおきないかもしれない。かといって映画会社も映画館もそれが仕事だから、何かを上映しなければならない。
そんなハンデを抱えた2月に公開されたのが、山下智久が主演する実写版『あしたのジョー』(曽利文彦監督)だった。2月7日には、ボクシングやプロレスの常打ち(定期的に興行が行われる)会場、“格闘技のメッカ”である後楽園ホールで試写会を行った。
ボクシング映画だからボクシングの常打ち会場で試写会を行う。2000人程度収容できる会場は大きすぎず、さりとて小さすぎず。
リングと客席の程良い距離感は選手にも観客にも好評で、原作にも実名で登場するほどだ。そこで試写会を行っただけでも粋だが、それだけでなく、何と会場には、世界チャンピオンに上り詰めた12人の日本人元プロボクサーも駆けつけた。輪島功一、ガッツ石松、大橋秀行、内山高志、畑中清詞、中島成雄、飯田覚士、レパード玉熊、佐藤修、川島郭志、坂田健史……。
ボクサーも引退してしまうと“ただの人”になってしまうのか、消息がわからなかったり、表舞台に出てこなかったりする場合もある。だから、これだけのメンバーが揃うのは、ボクシング関係の行事として記念すべきことなのだ。
もちろん、ボクシング映画のPRとしてはこれ以上ない光景だ。それら往年の名選手とともに、主演の山下、伊勢谷友介、香川照之、さらにはヒロインの香里奈までリングに上がって全員揃ってファイティングポーズで記念撮影。その模様はスポーツ紙を派手に飾った。
その写真を見れば分かるが、主要な配役の3人とも、実にポーズが決まっている。たんにファイティングポーズの格好いいだけでなく面構え、つまり目がボクサーになりきっている。役作りを徹底して行ったことがわかる。
山下智久が、「うむ、これならやっていける」と確信を持っただろうことは想像に難くない。
>>山下智久の迫力が伝わってくる作品はコチラ 楽天市場
