教師という生き方 仕事と生き方(鹿嶋真弓著、イースト・プレス) (イースト新書Q) Kindle版

教師という生き方 仕事と生き方(鹿嶋真弓著、イースト・プレス)は、30年間、公立中学校の教員として勤務した元教師の半自伝です

教師という生き方 仕事と生き方(鹿嶋真弓著、イースト・プレス)は、30年間、公立中学校の教員として勤務した元教師の半自伝です。いじめや学級崩壊を起こさせない取り組みのひとつである「構成的グループ・エンカウンター」実践者として注目されているそうです。



本書は、高知大学教育学部を卒業後、30年間教員生活を経験。

その後、大学准教授になり、評論活動などを続けている元教師の話です。

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日本の中学校教師は世界一多忙!? 生徒との関わり方、授業の工夫、同僚とのつき合い、保護者対応、様々な校内トラブルなど。教育現場が複雑・多様化するなかで、変わらない教師の資質、醍醐味とは何か。30年間、公立中学校の教員として勤務し、いじめや学級崩壊を起こさせない取り組みのひとつである「構成的グループ・エンカウンター」実践者として注目される著書が仕事への想いを語り尽くす。(Amazon販売ページより)
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色々書かれていて、教員を目指す人には興味深い内容だと思います。

ただ、私のような、その世界とは全く無縁のものから見ると、全体を通して、特殊な世界で完結している感もなきにしもあらずです。

これまで、鉄道職員、アパート管理人、警備員など、様々な職業者の書籍をご紹介しましたが、いずれも、「一般のサラリーマンはこうだけど、私たちはここは同じで、ココが違うんだよ」というように、その比較や境目を中心に教えてくれたので、様々な立場の人が読者になっても、その職業に対する感情移入ができました。

でも、本書はまさに「教職の話」だけです。

だから、具体的に本文から引用して紹介しにくいのです。

それはひとつには、たぶん、一般社会と比較できるほど、教職者が世間を知らないことがあると思います。

相対的な視点は?


たとえば、本書では、日本の中学教員は朝8時から夜9時まで仕事をして、OECDも認める世界一多忙な仕事だと表紙の帯にまで書かれてていますが、民間の労働者には、とうてい同意できかねることだと思います。

私が最初に入った、丸の内にビルがあった(現在リニューアル)業界1位の損害保険会社。

9時にはじまり、会議があれば夜9時まで、さらに社員の自主的な勉強会と言って、8時からなんかヤッてたし。

ナンジャクな私は、精神的体力的についていけず、疲れすぎて夜眠れなくなっていました。

そのため、精神を病んでいた知人から睡眠薬(ユーロジン)を少しもらって、週末に服用して無理に寝たものの、今度は月曜になっても、薬が抜けずに呂律が回らず、「あいつは違法な薬物でもやってるんじゃないのか」と疑われたこともあります。

センセーはそこまで苦労してんのかって。

教師が多忙ではない、といっているのではありません。

教員にありがちな、教育現場で完結する相対的な視点の足りなさを示しました。

教職と民間企業では仕事の質が違う?

だったらなおさら、忙しさを量的に述べることには意味がないと思います。

「何時から何時まで働いて大変なんだ」といわれたら、「いや、こっちだって何時から何時まで働いているよ」という返しになるじゃありませんか。

著者は、「教職は素晴らしい仕事だから結婚なんて考えられない」といって教壇に立っていたはずなのに、早くも2年目には同僚と結婚しています。

同一書籍の数行後に変心しているのです。

それなら最初から、「教師だって結婚しますよ、同僚との職場結婚は結構あります」とサラッと書けばいいのです。

なぜそう書かないのかといえば、本来なら結婚をしなくてもいいほど立派な職業だが、私は恋に落ちてしまったと、2つの自慢をしたいからだろうと読めます。

どんな仕事だろうが、結婚したい人はするし、そうでない人はしない、それだけの話です。

残業手当にかわるものもわずかにあるが、有給や育休ではそれはつかないとも書かれていますが、やはり民間なら当たり前の話です。

育休中は籍だけあって、給料自体が支払われないこともあります。

民間では当たり前の話が、なぜ教職に限ってゆるがせにできない話になるのでしょうか。

ひとつは世界が狭いことと、もうひとつは、教職は偉大な職業で、民間ごときの待遇といっしょにしてくれるな、といいたいのかなと、うがった見方をしてしまいます。

そもそも、公立中高の教師の平均年収は、民間のそれよりも約200万円も高いことを、著者を含めた現場の方々はご存知なのでしょうか。

と、書くと、それは民間に問題がある、というツッコミもあるでしょうが、善悪の問題ではなくて、教員が相対的に恵まれていないわけではない、という話です。

ことほどさように、この著者、文章の端々に「教育者とあろうものがこんだけ苦労しているんだぞ」と、下々の苦労人である私から見ると、相対的視点に欠けている印象を受けました。

私が学校時代、先生との関係はいつも最悪だったから、今も怨みが残ってるかな(笑)

学校生活以外も含めての生徒の情報把握


ChatGTPに、現在の教育現場の問題点を尋ねてみました。

すると、次の点が挙げられました。

1. 画一化された教育システム
2. 過度な受験重視
3. (生徒の)精神的・身体的ストレス
4. 教師の負担
5. デジタル教育の遅れ

「1」について思うところですが、普通学校(公立)と予備校・学習塾は、学校レベルでの公式な連携はほとんどありません。

ここにも、公教育>私塾というヘゲモニー意識を勘ぐってしまいます。

いずれにしても、これは改善の必要があると思います。

一方、私立や通信制高校は、予備校や塾との連携があります。

特別支援学校(障害者の学校)も、放課後デイサービスとの連携や一部情報共有が行われています。

もし、ある生徒が予備校における何らかの悩みが原因で、学校生活に影響が出ていても、連携がなかったら、教員たちはいくら学校生活から原因を探ろうとしてもできないでしょう。

いまどき、学校が全てという子どもはいません。

塾に行ったり、ネットを楽しんだり、スポーツや趣味にいそしんだりしています。

それらの「学校以外」の情報も含めての指導が、必要な時代になっているということです。

みなさんは、学校教育や、学校時代の先生方に対し、どんな思い出や印象を持たれていますか。

教師という生き方 仕事と生き方 (イースト新書Q) - 鹿嶋真弓
教師という生き方 仕事と生き方 (イースト新書Q) - 鹿嶋真弓

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