先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち(金間大介著、東洋経済新報社) Kindle版

先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち(金間大介著、東洋経済新報社)は、最近の若者の考え方をまとめた書籍です。時代遅れの教育雑誌は「ほめて育てろ」と書かれているようですが、近頃の若者は、ほめは「圧」になることを解説しています。

日本の教育現場といえば、かつては鉄拳制裁する「厳しい教師」ぐらいが真剣に教育と向き合っていて頼もしい、ぐらいの考え方が保護者側にもありました。
戦後、体罰は法律では禁止されたにも関わらず、私が小中高を過ごした昭和40~50年代でも、教師の体罰はありました。
その一方で、というか反動なのか、その後は、「子どもは褒めて育てる」という考え方が流行った時期もありました。
まるで、「北風と太陽」ですね。
仏教では「中道」という概念があるのですが、北風か太陽か、というオール・オア・ナッシングの議論自体を私は否定します。
もちろん、体罰は否定しますが、かといって、ほめて育てればいい、という観念的な微笑戦術だけで育つほど、人は優秀ではないと思うからです。
げんに、最近の心理学や脳科学の論文では、「褒めて育てる」ことを否定する報告も出てきました。
しかし、最先端の研究報告から一歩も二歩も遅れている「教育雑誌」の「ほめて育てる」論を、未だに正しいと信じ切っている、時代の変化に対応できない人もいるようです。
そこで、昨今の若者の思考潮流をもとにした、理系の研究者の報告をご紹介します。
著者の金間大介さんは、金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授という肩書です。
金沢大学の「融合研究域融合科学系」は、「異分野の融合を通じて社会課題の解決を目指す学際的な研究・教育を行う領域です。特に、人文・社会科学と自然科学を統合し、デジタル技術も活用して「総合知」を創出することを目的としています」(金沢大学の公式サイト)
簡単に言うと、学際的研究です。
社会学とか、物理学とか、工学とか、従来の縦割りではなく、複数の学問分野にまたがる研究を学際系といいます。
褒めて育てることは「圧」になる
『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』
— なんぼー | Taishi nambo (@architectizm) February 5, 2023
大学における研究と授業の現場から現在の若年層の特徴を分析する本。データとロジックに基づく非常にちゃんとした本で、若年層の考え方を知る一助として非常に有用。
筆致が優しいのもいいです。批判でなく視線が温かい。#なんぼ本https://t.co/jtesisHOOi pic.twitter.com/UQbx0aC87F
いきなり結論から書くと、褒めて育てることは、近頃の若者には「圧」になる、という話です。
ほめられたら、そのレベルを維持しなければならなくなるでしょう?
育つどころか、プレッシャーになるんですよ。
近頃の若者には、それは迷惑らしいです。
本書では、「いい子症候群」として、「ほめて育てる」ことに対して、若者が迷惑であることを説いています。
Amazonの販売ページには、こう書かれています。
ほめられたくない、目立ちたくない、埋もれていたい……。今、こんな若者が激増している。
・「成功した人もしない人も平等にしてください」
・選択の決め手はインフルエンサー
・「浮いたらどうしようといつも考えてます」
・LINEグループで育まれた世界観
・もう「意識高い系」とすら言わない
・上司からの質問を同期に相談する
・自分に自信はないけど社会貢献はしたい
令和の時代の重大異変を、イノベーションとモチベーションの研究家が徹底分析!
本書によると、昨今の若者は褒められて目立つのが困るそうです。
また、昨今の若者は自己肯定感が低いので、むしろ自分の提案が採用されるのが恐ろしいと考えるそうです。
ただし、指示されたことは行います。
つまり、自分で主体的に何かをするのではなく、指示待ちということです。
これらをもって、「近頃の若者は……」と、こきおろす人がいそうですが、これはいうまでもなく、社会の反映です。
つまり、社会の責任もあるということです。
日本人の問題点の例
— 倉持 薫 (@l4ikwgs8) March 2, 2025
人の足を引っ張る
出る杭を打つ
強い者には媚びる
同調圧力 pic.twitter.com/2NKScYUwkd
嫉妬とコンプレックスで、人の成功や自己実現するリア充を妬んで足を引っ張る日本人。
学歴厨。
嘘つきと裏切りの政治家。忖度のマスコミ。
それらのせいにばかりして、自分は何も反省しない衆生。
そんないい加減さに嫌気が差して、人が信じられなくなり、リアル友情よりもネットコミュニケーションを信頼。
そんな反映です。
若者を居丈高に叱れるような人がいるでしょうか。
つまり、若者が夢も希望も志もあるのに、それを全面開花させないのは社会のせいもある。
にもかかわらず、それらの問題に手を付けず、「無責任」に「キミはやれるよ、ヤれよ」と褒めそやしても、むしろ「圧」になるだけだ、ということだと思います。
褒めることが万能か?
[ゆっくり解説]いい子症候群の若者たち、そして生み出した大人たちのための本「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」で今の日本社会の問題を問う!https://t.co/yGr7s7lpWA pic.twitter.com/JP3BD7dVCa
— 哲学の草 (@sirocusaphilo) April 13, 2023
「昨今の若者は」と書いていますが、もちろん多様な若者がいるので、そうでない人もいるでしょう。
それこそ、「褒めて育てる」ことが合っている人もいるでしょう。
本書では、全体の傾向を示しています。
私自身は、褒められると調子に乗って失敗するタイプでしたね。
一方、「お前は底辺だ」と悪しざまに罵られると、猛烈に闘志が湧き、教師に「正直、すまんかった」と謝らせたいと思って頑張ってしまう。
だから、逆に褒められるのはありがた迷惑、みたいなところはありましたね。
憎ませてくれよ、みたいな(笑)
要するに、「ほめて育てる」は、教育の仕方として少なくとも万能ではないということです。
「ほめて育てる」を未だに喧伝している人は、カビの生えた教育雑誌なんか信じてないで、じかに子どもに触れあえよ、と思いますね。
本書では、大学の大教室の席の座り方などからも実証的に検証しています。
みなさんは、「ほめて育てる」タイプでしたか、「叱って育てる」タイプでしたか。

先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち - 金間 大介
この記事へのコメント
私たちの時代は悪い奴が大勢いた時代でした。
みんなの前で褒められたりしたら、イジメや
暴力の洗礼を受けたものです・・・(゚Д゚)!