毒になる親 完全版(スーザン・フォワード著、玉置悟翻訳、毎日新聞出版)

『毒になる親 完全版』は、アメリカのセラピスト、スーザン・フォワードさんが上梓した悩む数千人のカウンセリング結果と解法の名著です。毒親というのは、子にとって毒のような悪影響を及ぼす親という意味で使われる言葉です。

最近、タレントのローラが母親の故郷で本名を公表して農業を始めたニュースが話題になりました。
彼女の転身は単なるキャリアチェンジではなく、「スピリチュアル」な世界観への「転向」が背景にあるとされています。
なぜ、人気絶頂のタレントがそのような選択をしたのでしょうか。
その背景には、父親の犯罪問題に悩まされた経験があったと報じられています。
【悲報】ローラ(佐藤えり)「和多志、氣付いちゃいました」 https://t.co/rl85FpVTK4
— 宇宙から来た缶詰 (@universecan) March 20, 2025
枕→精神壊す→一時期ムキムキに→女性らしいめりはりボディを目指す→体に良い情報を漁る→オーガニックやらヴィーガンにハマる→整体やら鍼灸にハマる→→スピる→氣付く
ここまでテンプレ pic.twitter.com/oFNFpV6dgP
まさに「毒親」に振り回された典型例と言えるでしょう。
親を「毒」と呼ぶことの難しさ
自分の本当の気持ち、強く蓋をして、出すことを恐れていませんか?#毒親育ち pic.twitter.com/1bp7pxYMrX
— ゆうさん@毒親育ち専門マインド塾 (@yusola88) March 23, 2025
『毒になる親』は2021年に『完全版』として改訂されました。原書の刊行は1989年、つまり35年の歳月が流れたことになります。
本書によると、「毒になる親」に傷つけられた子どもの心は、歳を重ねても癒されないといいます。著者は「悪い親なら許さなくてもいい」「親だからといって正しいとは限らない」というメッセージを伝えています。
もちろん完璧な人間などいませんが、「子供に対するネガティブな行動パターンが執拗に継続し、それが子供の人生を支配するようになってしまう親」が存在するのです。
具体的には、以下のような親が「毒親」に分類されます:
1. 神様のような親(自分が絶対的で悪いことを認めない)
2. 義務を果たさない親
3. コントロールばかりする親
4. アルコール中毒の親
5. 残酷な言葉で傷つける親
6. 暴力を振るう親
7. 性的な行為をする親
例えば、子どもの進学や就職、結婚に過剰に干渉する親は①と③に該当します。
子どもが「結婚したい人と結婚できなかった後悔」を抱えても、親は何の責任も取れません。たとえ親子であっても、その人の人生はその人のものなのです。親には子どもの人生を邪魔する権利などありません。
しかし、これに対しては「親だって良かれと思っているから仕方ない」「親は子を生み育てたのだから偉い」という反論が常に出てきます。日本では、親孝行イデオロギーが強く根付いており、どれほど毒親絡みのトラブルがあっても、親は感謝の対象であって批判すべき対象ではないという考え方が蔓延しています。
その背景として、我が国には、未だに家制度の因習を事実上残す目的で、子は親に無条件で従う奴隷であることを示す法律(民法第818条)があります。
たとえば、親であることをタテに、子に特定の選択や価値観を強要する毒親は、今の日本では虐待など違法行為が公然としたものでない限り「合法」になってしまうのです。
それが、親が絶対などという、インチキ道徳を生み出す原因だと思います。
本書は、そうした旧弊な考え方と向き合い、情愛と行為の善悪は区別すべきという理性的な視点を提供しています。
仏教では「親が偉い」などとは教えていない
仏教では「縁起」という考え方が世界の万物を成すとされています。
つまり、物事は因果関係ですべてが繋がっているという考え方です。
「縁起は『表に縁って(表を縁として)裏が生起し、裏に縁って(裏を縁として)表が生起する』のであるから、表あるいは裏だけでは単独に存在し得ない。つまり裏と表は『等価』ということになり、優劣は決められない」(平岡聡『<業>とは何か:行為と道徳の仏教思想史』、筑摩書房、2016年、pp.217-218)
この考え方が示すのは、親子の関係も等価であるということです。
親は子があってはじめて「親」になるのであり、子の誕生と同時に親も誕生するのです。
親が子を扶養するのは「親の役割」にすぎず、それを果たしたからといって子に対して絶対的な権勢を振るえるわけではありません。
仏教は因縁のつながりとしての親の重要さは説いても、親の子に対する絶対的な優劣や善悪は教えていないのです。
毒親の「毒」の部分を自分の代で食い止め、子孫に引き継がせないためには、親の「毒」に無条件に振り回される必要はありません。むしろ、振り回されてはならないのです。
「毒親」という言葉を、身構えずに自戒を込めて正々堂々と受け止められる社会になることが、健全な親子関係の第一歩ではないでしょうか。親を敬うことと、有害な行動を見過ごすことは別問題です。
子どもの幸せを願うなら、まず親自身が「毒親」になっていないか振り返り、そして社会全体が「親は常に正しい」という思い込みから解放される必要があります。そうすることで、次世代に「毒」を引き継がない、健全な親子関係を築いていけるのではないでしょうか。

毒になる親 完全版 - スーザン・フォワード, 玉置悟
この記事へのコメント
怖い言葉ですね・・・
もうとっくに子育ては終っていますが
果たして”毒親”だったかどうか不安です (*^_^*)