「精神・発達障害の障害年金不支給増加」問題から考える公平性と社会保障のあり方

「『あなたの年金申請は認められません』うつ病女性の涙 精神・発達障害で不支給が2倍増?ナゾを追った」という記事がトレンド入りです。この問題は、障害年金の審査において、精神・発達障害を持つ人々への判定が、厳しくなっているという現実を浮き彫りにしています。
「精神・発達障害」というと、自分はそうではないし、それは限られた人の話だろう、と思われるかもしれません。
しかし、「障碍者手帳」は、直腸がんや脳梗塞の後遺症なども該当しますし、うつ病やがんも、障害年金の対象になります。
ですから、いまは対象ではない人も、これからの人生、誰でも関係のある話なのです。
そこで、この記事では、トレンド入りしている「障害年金不支給増加」について、様々な角度から検証し、「公平公正」という観点から考察してみたいと思います。
障害年金制度とは何か
障害年金というのは、病気やけがで一定の障害がある場合、現役世代でも受給できる公的年金制度です。
全国で約240万人が受給しており、多くの障害者の生活を支える重要な社会保障制度となっています。
それが、共同通信の調査によれば、2024年に入ってから「障害が軽い」との判定により不支給となるケースが増加しており、特に精神・発達障害においては、不支給率が2023年の2.2%から2024年には4.4%と約2倍に増加しています。
事例から浮かび上がる問題点
「あなたの年金申請は認められません」うつ病女性の涙 精神・発達障害で不支給が2倍増?ナゾを追った | 2025/4/11 - 47NEWS https://t.co/VB9whdT6iT
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) April 12, 2025
このOGPで紹介された城島志帆さん(仮名)のケースは象徴的です。
発達障害があり、うつ病も発症した彼女は、主治医の診断では障害基礎年金2級(月約6万9千円)相当と判断されていましたが、日本年金機構の審査では不支給となりました。
その理由として「抗うつ剤の処方がされていない」ことが挙げられていましたが、これには彼女が過去の薬の過剰摂取という事情があり、医学的配慮から一時的に服薬していなかったという事情がありました。
このケースからは、以下の問題点が浮かび上がります。
1.書類審査のみによる判定の限界
……当事者に会ったこともない医師が書類だけで障害の程度を判断するという現行制度の問題
2.個別事情の考慮不足
……医学的理由があっても、形式的な判断基準(薬の処方有無など)で評価される点
3.判定プロセスの不透明性
……審査を行う判定医の専門性や経験、「事前判定」を行う職員の影響など、いわゆる「ブラックボックス」の存在
4.時代に合わない判定基準
……障害年金の判定基準が50年以上も変わっていない
例えば2級の基準は、「活動の範囲がおおむね病棟内や家屋内に限られるもの」とされていますが、現代では障害者の社会参加が進み、多くの受給者が作業所に通ったり企業で働いたりしています。
この古い基準を持ち出されて、「何だ、作業所通えるじゃない。あなたの障害は重くないですよね」と不支給にされるケースも報告されています。
しかし、作業所では、「普通のOL」ほどの収入は見込めません。
ですから、その差額としての年金は、決して「不正受給」ではないのです。
つまり、社会の変化や障害者を取り巻く環境の進展に、判定基準が追いついていないという矛盾が生じているわけです。
公平性の観点からの考察
「公平公正」という観点から考えると、以下のような論点が浮かび上がります:
1. 障害種別による不公平
調査では、精神・発達障害の不支給率が2倍に増えた一方、身体障害や知的障害はほとんど増加していません。また、高次脳機能障害の認定も難しいと言われています。つまり、わかりにくい障害に対する理解不足や、判定医の専門性の偏りが影響している可能性があります。
2. 判定プロセスの公平性
介護保険の要介護度認定や、障害福祉サービスの支援区分判定では、調査員による訪問調査と複数の専門職による合議制を採用しています。一方、障害年金は診断書作成から審査まで医師一人の判断に委ねられており、客観性や透明性に欠ける仕組みとなっています。
3. 情報格差による不公平
記事によれば、社会保険労務士が代行した申請の不支給率は低く、一般の人が自分で申請した場合はさらに高い可能性があるとされています。専門知識を持つ人の助けを得られるかどうかで結果が左右される現状は、真の意味での公平とは言えないでしょう。
改革への提言
障害年金法研究会など専門家グループからは、以下のような改革提言がなされています:
1.時代に合わせた判定基準の見直し
2.審査過程の透明化と複数医師による合議制の導入
3.障害年金に特化した検討の場の設置
4.当事者の声を反映させる仕組みの構築
これらの改革は、単に「もっと年金を出せ」という「緩和」を求めるものではなく、真に支援が必要な人に適切に給付が行われる公平で透明性の高い制度を目指すものです。
「本当に公平公正か」という問いは価値判断なので、答えは簡単ではありません。
しかし、現行の障害年金制度には、判定基準の古さ、審査プロセスの不透明さ、障害種別による判定の差異など、公平性の観点から見直すべき点が多く存在することは明らかです。
障害者の社会参加が進む現代において、「障害があっても安心して暮らせる社会」を実現するためには、障害年金制度の抜本的な見直しが不可欠です。
そのためには、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、議論を深めていくことが重要なのではないでしょうか。
問題提起
ということで、この障害年金の問題について、みなさんはどのようにお考えでしょうか?
1.ご自身や周囲の方で、障害年金の申請経験はありますか? 申請過程でどのような困難に直面されましたか?
2.精神・発達障害の「見えにくさ」について、社会的理解を深めるためにどのような取り組みが必要だと思いますか?
3.障害年金の審査をより公平にするために、具体的にどのような改善策が考えられるでしょうか? 例えば、複数医師による合議制、定期的な面談の実施、当事者参加の審査会など。
4.「支援が必要な人に届く」制度と、「財政的持続可能性」のバランスをどう取るべきだと思いますか?
コメントを通じて、問題に対する理解を深め、より良い社会保障制度のあり方を共に考えていきたいと思います。ご意見をお待ちしております。

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この記事へのコメント
不正受給が有る事もなんかの番組で見た記憶もあります
微妙な問題ですよね
AIでってわけにもいかんだろうし
確かに、精神や発達の障害は見た目ではわかりにくいですよね。
それを、一人の医師の判断だけで判定を決められてしまうのもちょっと疎かと言うか…
そもそも、年金の判定基準が50年以上も変わってないなんて驚きました。
物価だって変わっているし、障害の程度だって変化してきてると思うし。
財政的に厳しいのかもしれないけど、弱者にはもっと優しい世の中であって欲しいです。
ナイスです。
近年ヘルプマークを付けている方をよく見掛けるようになりましたが、いったいどこが悪いのか?と疑問に思う方が大多数なので、やはり「見た目」だけでは判断が難しいですね。
となりますから。左前のような、世界のどこかの御国に住む人間としては、
「何かあったら自分は終わり」という自覚で、キホン常に、人生を送る
べきという事も、大事なのでしょうね。このさき、ホントに「保険制度」
は持つのかといった世界の話か?
日本国憲法第二十五条は、(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
からして経済的困窮のある障碍者には年金の支給は必須でしょう。
一方不正受給は厳しく取り締まらなければ不公平感の払拭はできないでしょう。
議論・改正の時代が到来しているといえます。
申請時になにか困ったことがあったとは聞いてないです。
精神障害は具体的症状が分かりにくいけど、判定は公平でないとダメですね。
多いですよね。
コロナ対策を含め、問題の多い所と思っています
全くその通りですね
誤解のないよう「ファクト」を整理しておくと、「病気」と「障害」は違います。
つまり、「障害」は、原状復帰とかリハビリによる健常者と同等の回復は通常有り得ず、つまり建前では障害年金は「一時的」になっていますが、事実上生涯給付される老齢年金を早めに給付されるようなものなのです。
また、「精神障害」や「発達障害」による申請は、過去何年もに遡って通院歴を提出させます。(つまり通常の方法でインチキはないという前提)
社会保障問題も大変多いことが分かりました。