難病が教えてくれたこと(なかのゆみ、笠倉出版社)

難病が教えてくれたこと(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。人間はいつ誰がそうなるかわからないし、そうなってもおかしくない。そんな厳しい人生の偶然を考えさせてくれます。

『難病が教えてくれたこと』は、なかのゆみさんが描き、笠倉出版社から上梓された漫画です。
「家庭サスペンス」というレーベル名がついています。
全17冊にわたり、認定されている難病、まだ認定されていない難病、そして障害などと向き合う家族の話を描いています。
一話完結で、1冊あたり3~5話が収録されています。
特定の人物や家庭をモデルとした「実録」ではありませんが、その「難病」の一般的な症状を経験するストーリーになっています。
以前、第3巻のアスペルガー症候群の話をご紹介したことがあります。
全17巻の構成
全17巻の目次構成をご紹介します。
難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~ 1巻
小児糖尿病、進行性骨化性繊維異形成症、プラダー・ウィリー症候群、小児くも膜下出血
難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~ 2巻
遅発性統合失調症、痙性斜視、過食症、全身性エリテマトーデス、帯状疱疹
難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~ 3巻
トゥレット症候群、アスペルガー症候群、アペール症候群、先天性上顎欠損症、寄生性双生児
アスペルガー症候群の苦労と苦悩を漫画化した『心が読めない』(なかのゆみ著)は、『難病が教えてくれたこと』第3巻に収録されています。アスペルガー症候群の頻度は10000人に91人といわれ、原因となる遺伝子は見つかっていないそうです。https://t.co/LNhqLBR0cr #アスペルガー症候群 pic.twitter.com/qUA5njAhGu
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) October 30, 2023
難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~ 4巻
顔を無くした女、右脳を無くした子、狂犬病、頭蓋骨切断、腐った腕の再生
難病が教えてくれたこと2~あの芸能人が発症した病気~ 1巻
もやもや病、若年性パーキンソン病、突発性硬化症、ベーチェット症
難病が教えてくれたこと2~あの芸能人が発症した病気~ 2巻
クローン病、橋本病、網膜剥離、皮膚癌
難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~ 1巻
薬物依存症、アルコール依存症、タバコ病、舌癌、夏型過敏性肺炎
難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~ 2巻
化学物質過敏症、アナフィラキシー症候群、脳脊髄液減少症、食物アレルギー
難病が教えてくれたこと4~知られていない奇病~ 1巻
ロンバーグ病、先天性魚鱗癬、歌舞伎症候群、大理石骨病
難病が教えてくれたこと4~知られていない奇病~ 2巻
ヴァスキュラーマルフォーメーション、無痛無汗症、ヒルシュスプルング症候群、モルガーニ孔横隔膜ヘルニア、
難病が教えてくれたこと5 ~母親失格~
小児卵巣癌、若年性鼻咽腔血管線維症、聴神経腫瘍、5歳児の脳腫瘍、神経芽細胞腫
難病が教えてくれたこと6 ~妊婦の闘病~
不育症、卵巣癌、18トリソミー、はラーマン・ストライフ症候群
難病が教えてくれたこと7 ~私たちの終活~
末期癌、髄芽腫、進行性スキルス癌、骨肉腫
難病が教えてくれたこと8~失われてゆく記憶~
頭蓋咽頭腫、高次脳機能障害、認知症、統合失調症、大うつ病
難病が教えてくれたこと9~死に至る感染症~
猫ひっかき病、劇症肝炎、髄膜炎菌血症、カプのサイトファーが感染症
難病が教えてくれたこと10~奇跡を呼んだ医術~
嚢胞性二分頭蓋、人魚症候群、右手右足切断。左手だけのピアニスト、オトフェイシャルシンドローム、腺癌
難病が教えてくれたこと11~遺伝性・不治の病~
筋ジストロフィー、リュウマチ、変形性股関節症、ムコ多糖症
多くが中途障害や突然の罹患ですが、法的に認定された難病、そうでない難病、障碍などを含めて「難病」としています。
受傷や罹患するのは家族の父であったりり母であったり、子であったり祖母であったりと様々です。
いずれにしても、必ずといっていいほど「難病」をめぐって周囲の偏見、夫婦の不仲などが発生しますが、その都度真剣に向き合い、克服していきます。
といっても、治療法が確立していなかったり、あまりにも症例が少なく難病認定すらされていなかったりするケースもあり、いつもハッピーエンドというわけではありません。
たとえば、『難病が教えてくれたこと2~あの芸能人が発症した病気~ 2巻』には網膜剥離の話がありますが、主人公は失明します。
それも、失明してしまった後ではなく、失明するまでの心のあり方を描いています。
『難病が教えてくれたこと11~遺伝性・不治の病~』では、ムコ多糖が取り上げられていますが、漫画を発表した時点で治療薬が承認されていませんでした。
それでも、なかのゆみさんは「難病」としっかり向き合い、最期までしっかり描ききっています。
作家は、その強靭な精神力が必要なのです。
誰がいつそうなるかはわからないし、なっても不思議ではない
私、病名確定してるのの他に原因不明の症状も併発してて(いつもそう併発する。雪崩みたいに)そういう原因不明の人って割と居るよ数値が確定診断まではいかないから泳がせてる状態みたいな。「難病が教えてくれたこと」て漫画も読んで、学校で教材にしたらいいなーって思った!https://t.co/Fzs19jOjxA
— 桜 (@sakuxetgy683) September 8, 2024
これらの話から改めて感じるのは、人間、いつ誰がどんな難病になるかはわからない、ということです。
ネットでは、たとえば障碍者や難病者に対して、予算をつけることは税金の無駄遣いと見当外れの罵倒をする人たちがいます。
2016年に起こった相模原障害者施設殺傷事件(いわゆる津久井やまゆり園事件)では、一部には犯行を心情的に共鳴するネット掲示板の書き込みなどがありました。
1.意思疎通のとれない障害者は安楽死させるべきだ
2.(生産性のない)重度・重複障害者を養うには莫大なお金と時間が奪われる
3.障害を持って生まれたら不幸に決まっている
といったことでした。
しかし、真面目に向き合えば、何を訴えているのかはわかります。
真面目にとろうとしないのが悪いのではなく、とれないから「安楽死」とは、まったくもって傲慢この上ありません。
そもそも、その連中だって、いつ、本書のような難病や中途障害者にならないという保証はないのです。
たとえば、直腸がんで人工肛門をつけても、心臓のペースメーカーを入れても障害者です。
まさか、その連中は、自分だけはいつまでも若さを保って不老長寿だと思っているのでしょうか。
障害・難病者に関する予算は、今そうでない人にとっても他人事ではないのです。
そもそも、「障害を持って生まれたら不幸に決まっている」。
そんなの、なんでわかるんでしょう。
不幸かどうか、障碍者本人にヒアリングしたのでしょうか。
そういう統計、あるんですか。
それに、不幸な人は生きていてはいけないのでしょうか。
思い上がるのも大概にしてほしいですね。
そういう誤った考え方は、本書を読むことで変わらざるを得ないでしょう。
各話については、また機会を見つけて改めてご紹介したいと思います。
ご一読をおすすめします。
『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)全17冊は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
みなさんは、ご自身や、ご家族の中で、こうした闘病のご経験はありますか。

難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~ 1巻 (家庭サスペンス) - なかのゆみ
この記事へのコメント
後少しの人生を大切に生きていきたいと思います。
うちのかみさんも、自覚症状もなくいきなり手術でしたからね(>_<)
我が家は、母が急に倒れて心臓が止まっていたって事で、緊急手術をして心臓のペースメーカーを入れました。
それまで出産で入院したことしかなかったから、パニックになっていたのか記憶も飛んじゃった感じでした。
入院中も戻らず考えあぐねていたら、家に帰宅したとたん記憶も元に戻りました。
いつ何時、どうなるかなんて誰にも分りませんよね。
私も軽い過敏症だったことがわかりました
nice!です。
病気は、とってもイヤですね。
難病では有りませんがもっと身近な「がん」に付いて私は「今日から第二の患者さん」と言うマンガを持っています。
ガンになった本人だけでなく世話する周りの方目線で描かれているので、自身や周りの方がガンに罹患した時に役立つのではと思ったりしています。
で直近、統計を追っかけでは無くて、根本迄見てきちんと取れば、
ほぼ第1位になっていると、webから聞き及んで、そう私は
認識しています。
どっちにしても失格では無いような。
病気かも知れないけど、生きてる大事な命を断ち切るような事をしてはいけないと思います。
誰でもありえることと想像力を持つことが大切で、よりよい社会形成には通らなければいけない道です。
Windowsの更新が来て3回も失敗・・・
PCの性能が悪いので4時間近くかかります。
それが3回ですから、そのいらだちはピークでした (;.;)
わが家の家族が健康で過ごせることに感謝です
それでも 受け入れ 生きていかなければ 生まれてきたには 理由があるし 自分の所だから 来てくれたんだと思うしかないし・・・
小児科の時には 本当に 心痛む出来事が沢山ありましたが・・それでも
親の愛情が 一番です・・本にして 思いを語る 語り切れないけど
文章にすることで 自分の気持ちをぶつける場所を見つける 良い事です
NICEです!
持っておられた方(小学校二年生の彼は 生まれつきに腎臓の機能が不能だったんですね。少し脳の障害もあったと 当時担任の先生が話してくれました。)が周りから 変な目で見ていて陰口を。同級生の間では 彼と出逢うたびその話。
それが嫌で嫌で 何も言えなかった私がいました。(今でもなんで ~だって言えなかったんだろうって。)また特殊学級(ダウン症の子が何人かいらっしゃいました。)というのもあって 私は 特別視しちゃいけないってことは 子供ながらもやもやとでしたが理解していましたね。
その時に こういうことは してはいけない その人に限らず 人の気持ちに立って考えることを覚えましたね。というか ~だからって事ではなくて 誰もみな平等だって。杓子定規にはしてはいけないこと。多様性はとても必要なんですよね。今のジェンダーということも。
こういう風にしろというのではなくて 人としての気持ちの持ちよう倫理観をもっと 学力以上に必要なんじゃないかって。
いじめもそうですよね。私は嫌な思いを幾度もしてきましたが その時は
どうしたって自身を変えられなくて 登校拒否もしましたし。心を病んだこともありました。
でも 今となってはその時のことが 私にとって(人に誇れるようなことじゃないけれど 誇ったりはしませんが。)糧になってきたのも事実。
身体的な難病だけでなく 心の痛みを抱えた人も同じだと思うんですよね。
病気や障害と向かい合うことは そう簡単なことではないし 今でも親が障害を持って 頭を悩ますことも毎日のこと。でも ~だからじゃなくて
気持ちで負けないでいてほしいと 親には負担なことかもしれないけれど
ちょっと 否かなり 口うるさくなってしまう私も居たりします。自己嫌悪も。難しいことですが 嫌になってしまうこともありますが それでも
前向きに生活することが なにか良いことに結び付くんじゃないかと思っています。宗教的に考えたくないですが それがしあわせなのかなって。
(うまく表現出来なくてすみません。これはとても大きな問題だと私は思います。)脱線しちゃったかも。^^;
今も大変な病気を抱えている友人がいますが なかなか逢えないけれど
彼には 身体だけでなく どうか心を痛めないでほしいなと願うばかり。
^^☆彡
自分は2巻に収録されている全身性エリテマトーデスです。
現実よりだいぶあっさりと描かれていましたが、病気自体を知ってもらうのはとても貴重で大切なことだと思いました。
ほんと、健康な人にとっては病気なんて他人事なんですよね。
私だって、なぜ自分が・・・と何度も何度も思いました。(今も思っています)
健康な人の目線でいろいろと言われると、あなたみたいに強靭な精神の持ち主がこの病気になればよかったのに、と憎しみがこみ上げます。
最近もちょっと嫌なことがあり、「そもそも病気を持って生まれてきたのが悪いんだよな。自分には生きてる価値がないから、治療なんかせずにあのとき人生が終わればよかったんだ」などと思っていたところでした。
いっぷくさんが書いてくれたことに希望をもらえます。ありがとうございました。
こちらのマンガを読んでみようと思います。
気管の障害があると知らされた時は、どうなるのかと心配でした。
今もまだまだ完治してませんが、色んな障害がある事に気づかされた現実でした。参考にさせて貰います。