世界を動かす「レアアース」――資源、地政学、環境をめぐる静かな争奪戦

「レアアース(希土類)」という言葉をニュースなどで目にする機会が増えています。ハイテク産業や軍事技術に欠かせない存在でありながら、一般にはまだ広く知られているとは言い難いこの資源。しかし実は、私たちの暮らしや国際政治に深く関わっているのです。
レアアースとは、物質を構成する基本単位である元素を、周期律を利用して並べた「周期表」でいう「ランタノイド15元素」に加え、スカンジウムとイットリウムを含む17元素の総称です。
代表的なレアアースには以下のようなものがあります。
ネオジム(Nd):強力な永久磁石に使用。電気自動車や風力発電に不可欠。
セリウム(Ce):研磨剤や排ガス浄化触媒に使用。
ユウロピウム(Eu):蛍光体として液晶ディスプレイや照明に利用。
ジスプロシウム(Dy):高温でも磁力を維持するため、モーターに必要。
名前に「レア(希少)」とありますが、実際には地殻中にそれほど少ないわけではありません。
ただし、特定の鉱石から分離・精製するのが極めて困難で、採掘コストが高いために「レア」と呼ばれているのです。
スマートフォン、ノートパソコン、EV(電気自動車)、LED照明、風力発電タービン、さらには軍用レーダーや戦闘機の誘導ミサイルまで、現代のテクノロジー製品には必ずと言っていいほどレアアースが使われています。
たとえばスマートフォン1台には、10種類以上のレアアースが含まれています。軽くて丈夫、しかも磁力が強く、電気特性にも優れるという特性が、次世代技術には欠かせないのです。
レアアースをとりまく現状
レアアース覇権、環境汚染のみ込んだ中国 40年の計で生産ほぼ独占https://t.co/694aBQU98E
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) June 21, 2025
◆ 中国が握るレアアースの供給網
現在、世界のレアアースの約60~70%以上を中国が生産しており、加工能力に至っては90%以上を中国が担っています。
この偏在性が、レアアースをめぐる「資源の地政学」を非常に複雑なものにしています。
過去には、中国が日中関係の悪化を受けてレアアースの対日輸出を制限したこともありました(2010年の尖閣諸島問題)。
この出来事は、日本だけでなく世界中に「特定国への依存リスク」を強く印象付けました。
そのため、アメリカ・日本・オーストラリアなどは、レアアースの供給源多様化を進め、再資源化(リサイクル)や代替材料の開発も進行中です。
環境問題とレアアース
レアアースの採掘・精製には、多くの化学薬品を使い、有害な廃棄物も発生します。特に、中国の内モンゴル自治区にあるバヤンオボ鉱山では、放射性物質を含む排水が環境問題を引き起こしていると指摘されています。
また、廃棄された電子機器からレアアースを取り出す「都市鉱山」も注目されつつありますが、現段階では採算性や技術的課題が多く、全面的な代替には至っていません。
日本が資源立国になる可能性は?
南鳥島に眠るレアアース、世界3位の量https://t.co/GD5r58eHmL
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) June 20, 2025
中国の輸出規制対象の中・重希土類を多く含む「レアアース泥」が存在します。日本政府は開発に力を入れ始めましたが、国産レアアースを採掘・精錬するハードルは高いです。 pic.twitter.com/IlP62eaCxJ
日本は資源の乏しい国ですが、実は世界有数のレアアース埋蔵国になる可能性を秘めています。
特に注目されているのが、南鳥島周辺の海底です。
世界の需要を数百年分満たすほどのレアアース泥が存在するとされており、その品位(含有量)も非常に高いと報告されています。
ただし、採掘には課題もあります。
南鳥島は、本土から約1900kmも離れており、水深6000m級の深海にあるため、技術的・経済的なハードルが高いのです。
また、環境への影響も慎重に考慮する必要があります。
それでも、資源安全保障の観点から、日本はこの海底資源の開発に本格的に取り組み始めており、将来的には中国依存からの脱却も視野に入っています。
前述の「都市鉱山」と呼ばれる戦略ですが、これは、使用済みのスマホや家電、パソコンなどから貴重な金属を回収・再利用する取り組みです。
2017年の東京オリンピックでは、メダルの材料を都市鉱山から集めるプロジェクトが実施され、大きな話題を呼びました。
Copilotによると、特に注目されているのは金・銀・銅・インジウム・タンタル・リチウムなどの貴金属やレアメタルです。
日本国内に眠る都市鉱山の規模は、世界の埋蔵量と比べても驚くべきものです。
以下のような推計があります。

Copilotより
たとえば、携帯電話100台からは約5gの金が回収できるとされており、これは数万円相当になります。
持続可能な社会を目指す上で、こうしたリサイクルと循環型経済の実現がますます重要になっています。
「21世紀の石油」で日本は資源立国になれるか
インドのレアアース輸出規制に伴い、
— 湯浅忠雄 YUASA TADAO (@GrwaNnKqMn5nG68) June 15, 2025
国産のレアアース開発が注目を浴びます。
南鳥島には、中国の50倍のレアアースが
眠っていると言われています。
日本の安全保障とも関わるだけに、強い
政権が必要です。 pic.twitter.com/NxsPL7bPYb
かつて、石油が国家間の外交や軍事、経済を動かしていた時代がありました。
今、レアアースは「21世紀の石油」とも称され、テクノロジーと安全保障の中核資源として注目されています。
私たちが使っているスマートフォンの中に、風を受けて回る風力発電の羽根に、そしてEVの静かな走行の裏に、見えない「レアアース」の力が宿っているのです。
その恩恵と同時に、その採掘・供給・環境への影響にも目を向け、持続可能な資源管理と技術革新の両立を目指すことが、今後の課題と言えるでしょう。
私は、日本の再浮上にこのプロジェクトは期待しています。
みなさんのお考えはいかがですか。
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この記事へのコメント
日本は資源輸出国になるのですけどね
いくら海底にレアアースがあっても経済的に採取できなければ
意味がありません
でも、なにぶん海底にあるものだし採掘することも容易ではないんでしょうね。
あるのがわかっているのに、手に出来ないのは何とももどかしいですね。
お邪魔しました (o^―^o)☆彡
>2025年06月30日 00:38
レアアースは、供給が滞ると、産業全体に甚大な影響が出ます。メタンハイドレートも重要ですが、天然ガスの供給源としては代替手段が存在します。
また、レアアースの場合は、特定の国に供給を依存することによる地政学的なリスクが非常に高く、単なる経済性だけでなく、国際情勢に左右されない安定的な供給源を確保するという戦略的な視点がより重視されています。
一方メタンハイドレートは、日本政府が「損益分岐点」を考慮し輸入を選択しています。
要するに、メタンハイトレードは、損してまでは要らない(から無理してまで取りに行かない)。レアアースは日本の産業競争力と安全保障にとって極めて重要と、全く捉え方の異なるものです。
nice!です。
考えます。
成功してほしいです。
今朝も朝から暑さの予感。
採算性や技術的問題などハードルは高そうですが期待したいですね。
中国からの脱却は外交問題の観点からも必要だと思います。
また中国が行っている採掘や製錬による環境に与える影響も心配です。
話は変わりますが東京オリンピックのメダルは都市鉱山を活用したんですよね。
限られた資源ですから、こういった取り組みはもっと推進してほしいです。
問題はやっぱり採算性なんですかね。
このプロジェクトは早期に着工して、他国への切り札にしたいですね。
レアアース、いつまであるんでしょうか。
この利用によっていろんな技術が進化しましたが
なくなったら大変ですよね~ 😂
南鳥島にあるなんて、ほっておくわけなないですよね。
先のことでしょうが。
名田間だ飼っての言い分をつけてネコババするのは許さないという強い意志表示が必要だと思っています
精製するのに環境汚染が問題になっていますね。
なかなか簡単ではない問題ですね。
色々と学ぶこと多しです。
頭を使いましょう。
やる気を出しましょう。
遠かったら中間地点を作ればいい。
深かったら浅くする手段を考えれば良い。
要は、やる気の問題のみ。