「就職氷河期世代」の教員採用。バブル崩壊の犠牲者たちに新たな光

文部科学省が、40~50代の「就職氷河期世代」を対象に、これまではほぼ閉ざされていた教員採用を積極的に進める方針を打ち出しました。この世代はバブル崩壊後の厳しい就職環境の影響を直接受けた人々で、教育業界を志望しながらも、夢を断念せざるを得なかった方々も少なくありません。
初等・中等教育、つまり高校までの教員になるには、新卒が事実上の条件でした。
40~50代の教員採用は不可能ではなかったものの、非常に高いハードルがありました。
何より、多くの自治体では、採用の年齢制限を、35歳前後で設定しているケースが主流でした。例えば、
東京都の教員採用試験(2020年まで):35歳未満が原則
大阪府:受験年度の4月1日時点で40歳未満
愛知県:35歳未満(特別選考を除く)
といった具合です。
つまり、民間企業など社会人経験に乏しい人が、これから社会に出る人を指導するという、正直なところ違和感のあるシステムといえないこともありませんでした。
それが今回、文部科学省がそれを見直し、40~50代の社会の荒波に揉まれた「就職氷河期世代」を対象に、採用する方針を打ち出したのです。
少子化という「静かなる緊急事態」が招いた人材戦略の転換
求む、バブル崩壊で教員を断念した40~50歳代…文科省が「就職氷河期世代」の積極採用通知へ
— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) June 24, 2025
https://t.co/Khj4EsSIIP #教育ニュース #就活
近年、少子化の進行は、教育現場に深刻な影響を与えています。
生徒数の減少は当然ながら教員の需要減少にもつながりますが、一方で都市部では依然として教員不足が続いています。
この矛盾した状況の中で、文科省は「量」から「質」への転換を図ろうとしているようです。
多様な人生経験を持つ人材を教育現場に迎え入れることで、教育の質的向上を図ろうというのが今回の通知の根底にある考え方です。
興味深いことに、教員採用の年齢制限を撤廃する動きは以前からありましたが、今回は特に「就職氷河期世代」に焦点を当てている点が特徴的です。
この世代は現在40~50代で、子育てが一段落した時期に差し掛かっている人も多く、教育に携わるための時間的・精神的余裕が生まれやすい年齢層と言えます。
40~50代教員がもたらす「大人の知恵」新卒者にはない強み
就職氷河期世代の40~50代が、教育現場に加わることで期待できるメリットは多岐にわたります。
第一に、人生の浮き沈みを経験した者としての説得力があります。
就職活動に苦労した経験は、現代の生徒たちの進路指導に活かせるでしょう。
また、様々な職業を間近で見てきた経験は、キャリア教育において貴重な資源となります。
第二に、社会人としての基本的なマナーや仕事への取り組み方を自然に教えられる点です。
新卒の教員では気づかない、知り得ないようなビジネスシーンでの常識を、実体験に基づいて伝えることができます。
第三に、保護者世代との年齢的近さによる、信頼関係の構築が容易という点です。
特に中学校や高校では、保護者と教員が同世代であることで、教育方針についての理解が得られやすいという報告もあります。
例えば、企業での勤務経験がある教員は、生徒たちに実社会で役立つスキルを伝えることができます。
子育て経験のある教員は、保護者とのコミュニケーションにおいても独自の強みを発揮できるでしょう。
このような多様性こそが現代の教育現場に必要とされているのです。
実際、ある調査では社会人経験を経て教員になった人々の約70%が「以前の職務経験が教員として役立っている」と回答しています。
企業でのプロジェクト管理経験が学級運営に活かせる、営業職で培ったコミュニケーション能力が保護者対応に役立つなど、具体的なメリットが報告されています。
「再チャレンジ」可能な社会へ
巡り合わせが悪いだけで辛酸を舐めてきた世代ですからきっと生徒に寄り添ういい教師になるでしょう。 https://t.co/jHAJA1HV4K
— 有馬哲夫 (@TetsuoArima) June 24, 2025
「巡り合わせが悪いだけで辛酸を舐めてきた世代ですからきっと生徒に寄り添ういい教師になるでしょう。」
私はこのポストに同意です。
私はつねづね書いているように、人生は「必然」と「偶然」、仏教で言う「因」と「縁」で成り立っています。
つまり、本人の能力や努力や心がけなどは、それを結実させる機会と出会えるか否かによって、結果を出せるかどうかが決まってくるのです。
「売り手市場」の世代に生まれたか、「氷河期」に生まれたかは、その人の責任ではありませんからね。
一般に、その「めぐりあわせ」を「運(がいい・悪い)」といいます。
運なんてないんだ、と言い張る人はいますが、いったいその人は人生をどれだけ真剣に生きてきたのでしょうか。
時代が悪くて教師になりたくてもなれなかった、就職も大変だった、そうした方々が、社会人として苦労して、自分なりの教師像を描きチャレンジできる道が開かれたのは、すばらしいことです。
それとともに、実は私は優等生ではなかったため、おおむね教師との関係は最悪で、だから教員評価にはちょっと点が辛いです(笑)
いやもちろん教員=NGということではなくて、そこに従事する人に懐疑的なのです。
社会人として苦労した経験もないくせに、一段高いところで人を指導することで、いつのまにか不勉強や独善のワナに嵌まってはいないか。
以前も書いたように、日本の教師は世界一多忙とかいいますが、他の職業と比べてモノを言ってるんでしょうか。
働き過ぎなんて、どこの世界でもいわれているじゃないですか。なんで教員だけ労られるんですか?何様?
平均給与も、労働者全体のそれよりも教員は200万円ぐらい上回っています。
相対的には決して不遇ではありません。
「この道一筋」もいいけど、外の釜の飯を食わないことで視野が狭くなる憾みというのはありえますよね。
氷河期の皆さんが採用されたあかつきには、ぜひその世界に風穴を開ける突破口になるべく頑張っていただきたいと思います。
そして、教職に限らず、産業界が再チャレンジに道を開けば、さらに社会はそれを契機として発展するのではないでしょうか。それを私は希っています。
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この記事へのコメント
方や、今は新入社員が高給でもてはやされる時代なんて皮肉ですね。
でも、今回の文部科学省の措置で「就職氷河期世代」の方たちが積極採用されるようになったら、他の業界でも希望が持てるのかなって…
人生経験を多方面に生かして頂けたらって思います。
手を汚さずに出来る仕事を選ぶ傾向と
安易に暮らそうとする傾向がみられます。
これは教員に限らず例えば医師や看護師もそうで病院と言う閉鎖社会で純粋培養された方もやはり全員と言う訳では有りませんが常識がズレていると感じる事が多々あります。
こう言う閉鎖社会ではカースト制度だったり風通しが悪く新しい事には後ろ向きな姿勢となりがちなので、そう言う意味でも新しい風が吹く事を期待したいですね。
nice!です。
家のランチのお客様は教員退職者が多いのです。
ちょっと頭が固いというか、新しい事に挑戦しようとする考えが少ない感じがします。安定志向型。子供を指導していくには子供に夢を持たせる経験豊富な人材が必要かもしれません。きっとniceな方向に行くと思います。期待しています。
ハテそれは、いったいどこが違うのだろう?
再チャレンジができる社会は人手不足の日本には必須です。
教員の不祥事も ニュースに 残念でなりません 若い教員も良いですが
苦労を知る 中堅の方の カムバック 願いたいですね
を大きなタッパに入れて
漢検の払込用紙を手に、支払いに来た
公立高校の若い男性教師がおりました。
決して、悪びれることもなく
当然のごとく(`ε´)
しかも、タッパにいくら(総額)あるのかも
分からないらしく、呆れてしまいました。
この方に教えられる生徒さんが本当に不憫でならず
精算機にかけて、支払を済ました経緯がございました。
>民間企業など社会人経験に乏しい人が、これから社会に出る人を指導するという、正直なところ違和感のあるシステム
激しく、賛同致します
素晴らしいことです。
コメントありがとうございました。
子供の頃からお勉強ができて、学校を卒業するとすぐにガキの世界でボスになり、閉鎖された職員室で多くの時間をすごす。
親や子供から「先生」などと呼ばれ、教師を超えた「先生」と錯覚。
成績のいいこ、クラスで中心的なこにはすり寄る。そういう人たちは多かったものの、何人かの教師は生徒のことをよく見ていて、自分の時間も費やして向き合ってくださいました。
尊敬できる立派な方、そういう恩師に出会えたら生徒さんは幸せですね。
なぜなら教師が子供に与える影響は非常に大きいです。
私は聖人君主ではないので大卒のペェペェが子供たちと接する自信がない。
でも、今でも教師になりたいという志があって、
異なる社会で経験を積まれた方が教師になることは良いことだと思います。
教師一筋の方とは異なった視点で子供たちを指導できそうです。
これからは少子化で働く人が減少します
教員になる人も減少します、古い規制や
慣習にメスを入れる必要が有るでしょうね
人生自分ではどうにも成らない子がありますね。
大相撲で長谷川という強い関脇がいましたが当時の
横綱、大関は充実。 ついに大関になれませんでした。
私らの時代は戦後の団塊世代の影響で小学校は遅番、
早番の1教室を午前組、午後組で使いました。
大学受験も大量の浪人たちと戦いでした 😂
ただ、愛知県などは情実採用がいまだに当たり前という話を頻繁に耳にしますし、採用する側が異業種から応募してくる人に対して本気で対応できるか?という面に関しても非常に強い危惧を感じます。
何しろ異物は何が何でも排除するという力が直ぐ働く「超事なかれ主義」が全て!というのが公共教育業界ですからね。
こういう記事を書くと、必ず「今の教師は大変なんだ」という意見はあるのですが、別に教師が楽だといっているのではなく、職業柄、社会全体における自分たちの相対化の視点を失うリスクは否定できないといっているのです。
で、出遅れました(汗)
でも、おかげさまで、いっぷくさんはじめ、みなさんの様々な目線でのお意見に触れることができました。大変勉強になりました。
とってもNICEです(^^)
大人なのに意外と世間を知らない?変わった人が結構多かったという印象あります。
もちろん、人格者も、面白い人も、中にはいらっしゃいましたが。
社会人を経験した後で教師になる、のは良い面あるような気がします^^
私の希望は教師になる事でしたが経済的理由で
義務教育しか受けられず夢と化しました。