生活保護費の基準額引き下げ処分取り消し訴訟について

生活保護費の基準額引き下げ処分取り消し訴訟が話題になっています。国や自治体が生活保護基準額を引き下げた処分の適法性を争う行政訴訟です。これはどのような裁判だったのか、そして生活保護給付をどう見るか、についてまとめてみました。

この争いは、民主党政権下で決定された生活保護基準見直しに基づき、2013年8月に安倍政権が生活保護費の基準額を最大10%引き下げたことに端を発しています。
民主党政権の負の遺産であることは確かですが、自民党政権は積極的にそれを取り消さず、「“悪夢の民主党政権”のせいにすればいいや」と、この引き下げを強行しました。
それに対して、原告側が取り消しを求め、今回最高裁で取り消しが認められました。
生活保護費の減額は「自民公約に忖度」 処分を取り消す判決 津地裁https://t.co/kcybZzDea3
— 朝日新聞デジタル速報席 (@asahicom) February 22, 2024
生活保護費の基準額引き下げは違法だとして、受給者が減額処分の取り消しを求めた訴訟。
津地裁の竹内浩史裁判長は背景に「自民党の選挙公約への忖度があったと推認できる」と指摘し、処分を取り消した。
この裁判については、以前もご紹介した、筋肉弁護士の桜井やすのりさんが、わかりやすく解説している動画をシェアします。
筋肉弁護士の解説要約
2012年に、自民党が政権を奪還した際、2013年から生活保護引き下げを実行した。
引き下げる主な理由として、デフレ(物価調整)が挙げられたが、実際には2011年頃から日本はインフレ傾向にあり、裁判官は事実認識に誤りがあったと指摘。
そもそも、生活保護基準は、物価や賃金だけでなく、その時代の社会背景や文化を総合的に考慮し、人々が幸せに生きるための最低限の費用を確保すべきである(憲法第25条)。
#たとえば、この10年で、貧乏人であろうがスマホを持たなければ生活に支障をきたすようになったのもその一例。つまり通信料等が増えている。
自民党は、この総合的な考慮の観点が欠けていたため、「生活保護基準の引き下げ」は合理性を欠くと最高裁は判断した。
よって、判決は当然のことである。
生活保護が気に食わない国民がいるようだが、生活保護は、社会が機能し、人類が存続していくために不可欠な制度である。
外国人の不正受給はわずかに過ぎないし、どんな決まりを作ろうが、悪いことをするやつはかならず出る。
それを口実に、生活保護制度自体を否定すべきではない。
「働かざる者食うべからず」という国民もいるが、自分の生活は、自分の努力だけでなく、おおもとは生まれた「ほしのもと」や環境によるものである。
個人の能力差は相対的には小さく、生活困窮は、個人の努力不足だけが原因ではないことを理解すべきだ。
生活保護というセーフティーネットがなければ、社会の治安維持が困難になり、少子高齢化をさらに加速させる。
つまり、生活保護給付を否定する国民は、巡り巡って自分が困ることになると気づいてほしい。
……動画の後半は、健康保険制度への言及が続きますが、こちらはまた別の話なので今回は割愛します。
セーフティーネットは必要
私は、筋肉弁護士の意見に賛成します。
生活保護の問題に限らず、その人の「努力」や「成功」は、いったい何に基づくものなのか、という部分で、もっと私たちは謙虚で冷静にならなければならないと思います。
五体満足で、そうでない人に「働かざる者食うべからず」と言える、その幸運さと傲慢さに気づくべきだということです。
たとえば、「俺は、自分の努力で一流大学に合格したんだ。悔しかったらみんなも努力すればいい」
という人がいます。
そりゃ、勉強してテストに合格できる点数をとれるようになったのは、その人自身の努力です。
でも、その人自身の功績は、そこだけです。
その努力をできる「ほしのもと」は、その人の手柄ではありません。
「一流大学」を目指すための前提となる知能は遺伝の要素を否定できず、家庭環境も「親ガチャ」です。
だいいち、いくら勉強したって、試験の日に病気になったり交通事故にあったりしたら、合格できません。
実際に、その日のコンディションが合否の明暗を分けることはあります。
つまり、「運」の要素もあります。
要するに、「ほしのもと」「その時時の運」……それらを全部くぐり抜けた奇跡的な人だけが、「一流大学」という自己実現を達成しているわけです。
努力努力って言うけど、そこにたどり着くまでにどんだけ幸運だったんだということです。
ですから、もともと人間に固有の差がそれほどあるわけではないだろう、と筋肉弁護士は言われているわけです。
また、これまでは順調な人生だったけど、何かの間違いで、これから生活保護を必要とする立場になってしまうかもしれません。
そんなときのためにも、私は、誰もが、どんな環境や「ほしのもと」でもこの社会で暮らせるセーフティーネットは必要だと思っています。

学校では教えてくれない生活保護 (14歳の世渡り術) - 雨宮 処凛
この記事へのコメント
生活保護がなくなれば、一定数の困窮者が破れかぶれになり無法行為に走るでしょう。
そのリスクを軽減するだけでも社会の安定につながります。
それこそ、みんなが浮浪者になってしまったらと思うと世も末ですよね。
それに、生きるのに必要な金額は時代や状況によって変わる、確かに。
生活保護は、大事なセーフティネットの一つ。
個人の努力はごく一部、その通りですね。
人間は集団で生きることを選択し、進歩してきました。
助け合うことが、幸福への道でしょう^^
何か基準をつくるべきで、次は立法府が真摯にこの判決をうけとめて考えなくてはなりませんね。
nice!です。
スマホエアコンはもう贅沢品じゃ無いけど生活保護でギャンブルするってーのはやっぱどうも納得いかないな俺は。
「国が傾いてる」とか何とか、事実と異なる事が
垂れ流されると、大ニュースになるような状態である
結果、再度、生活保護の給付が、認められるとも私には
思われ無いので、原告勝てて良かったですね!
勉強になりました。
10人いたら、10通りの人生。
それに対する寛容さも必要だと感じました
NICEです
絶対 働ける人も 受けられているのが・・・
各行政の 市によって 違うらしく これも なんだろなーーー
支給する側もその理念を忘れずに、
全国的な支給基準の公平性が求められますね。
コメントありがとうございました。
「精度」ではなく「制度」が正しいです。
困窮時・受給を勧められても、子供が出世した時に
行政のお金でと言われたくないと断り身を粉にしてして
育てられた人もいる、それぞれの生き方ですね。
いくら威張っていても明日どうなるかは
分かりません。
生活保護費は必要だと思いますね。
しかし、不正受給者が出てくるから、色んな問題も多い訳ですね。