減税か、給付か、財源は?
先日の選挙の争点の一つでもありました、減税か、給付か、それ以外の方法かで議論のある経済問題について、保守の一部や、れいわ新選組などが求め、立憲民主党の主流派がに反対する積極財政政策についてまとめてみます。
MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)ってご存知ですか。
端的に言うと、「自国通貨を発行できる政府は、インフレにならない限り、貨幣を発行して財源の制約を気にせず支出を増やせる」という経済理論です。
提唱者の一人であるステファニー・ケルトン教授は、2016年のアメリカ大統領選挙でバーニー・サンダース上院議員(民主党)の顧問を務めており、サンダース氏がMMTを支持したことで、アメリカ国内でも注目が高まりました。
従来の経済学が、政府の財政は家計と同じで、収入(税金)の範囲内で支出すべきだと考えるのに対し、MMTは、通貨発行権を持つ政府は、民間部門が貨幣を必要とする限り、いくらでも自国通貨を発行できると主張します。
景気が悪いときは、通貨を積極的に発行して、経済を活発にしろ、税収が増えてきたら発行は引き締めろ、という政策です。
さて、日本ですが、失われた30年などといわれます。
1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本経済が長期にわたる停滞を経験した期間を指す言葉です。
原因は、緊縮財政と、消費税による経済の冷え込み、構造改革の遅れなどにあるといわれています。
そこで、注目されているのが、れいわ新選組や、保守の一部に見られる、積極財政論です。
とくに後者は、明確にMMT(現代貨幣理論)による景気回復策を打ち出しました。
ところが、その前に、自民党が下野していた民主党政権の時(2009~2012)、「どんどん金を刷れ」と言っていた人がいました。
下野前の総理の麻生太郎さんです。
コロナ増税が話題ですが、それではここで野党時代の麻生太郎さんをご覧下さい。我が国は自国通貨建。新規国債をインフレターゲットを上限に増発すべき状況だのに、なぜ税金を財源とするのか。国の借金は国民の借金などではない。不況なのに消費税があること自体おかしい。
— 若者勝手連 (@seijiwakamono) March 28, 2021
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麻生太郎さんは、野党の気楽さから、「高橋是清は、どんどん金を刷ったから、国民から1銭も税金を取らずに当時の景気を立て直したからね」と言って、民主党の緊縮財政を批判しました。
そして、自民党が政権に復活し、財務大臣になると、自分は「平成の高橋是清になる」とまで言ったものです。
ま、結果として財務省の軍門に降った麻生さんは、何も出来なかったのですが……。
第20代内閣総理大臣・高橋是清は、金本位制を停止して、通貨の供給制限を撤廃、円安による輸出拡大と通貨発行による景気刺激を行った、つまり麻生さん流にいえば、どんどん金を刷って経済を活性化させたのです。
それは、MMTの理論のようだ、ということから、こんにち、高橋是清はMMTの先駆者であるように言う人もいます。
れいわ新選組の山本太郎代表は、MMTとはいいませんが、政党としては唯一、積極財政を最優先の政策に掲げています。
昨今の経済対策として、減税か、給付かなどといわれていますが、その財源として、MMTは現在の日本でも有効なのでしょうか。
積極財政のメリットとデメリット
お金をたくさん刷り、市中の貨幣が増えれば、相対的に貨幣価値は下がります。
つまり、インフレになります。
自民党や立憲民主党の主流派は、MMTに批判的ですが、それはインフレにより通貨の国際的信用が失われることを懸念しているからです。
高橋是清の積極財政が行われた当時(1930年代初頭)には、「インフレの懸念」は現代ほど強く批判されてはいませんでした。
むしろ、当時の最大の経済問題は「深刻なデフレ不況」だったため、多少のインフレはむしろ歓迎されるべきものとされていました。
ところが、それを軍部が「軍拡財源」として利用し、1930年代中頃からはお金を刷りまくって軍事費が急増。
高橋自身は財政規律を取り戻そうと軍事費の抑制に転じたのですが、これが軍部の怒りを買い、1936年の二・二六事件で暗殺されてしまいます。
その後、軍部政権によるさらなる放漫財政が続き、戦費に注ぎ込まれました。
そのため、戦後、アメリカは、国債によって軍事費の財源を作らせないための法律(財政法)を日本に課しました。
昨日、「日本は経済的にも核武装できない」と書いたのは、この法律があるからです。
現在も、「成長の起爆剤として積極財政が必要」という論もありますが、一方で「財政の持続可能性」や「インフレ制御」の面での懸念も根強く存在します。
積極財政を行うにしても様々な課題
ChatGTPによれば、高橋是清の時代と現代の違いをこうまとめています。
・高橋是清は「インフレになったら(お金を刷るのを)やめる」という明確な出口戦略を持っていた。
・現代日本では、庶民の経済が冷え込んでいるのに、コロナ禍あたりからインフレが始まってしまったので、明確な出口戦略が示せない。
・また是清の時代よりも、日本政府の債務残高が桁違いに大きいという構造的な違いもある(GDP比260%超)。
といったところから、積極財政を行うにしても、規模や期間などの現実的な計画を立てることが困難な状況にあります。
私自身は、ド底辺の人間なので、バラマキ、積極財政は、ストレートにそれだけを行うなら嬉しいのですが、たとえば小池都政の富裕層まで含めた水道料の基本料金無料化、与党などが決めた高校無償化などは、悪しき平等になっているところもあるので、経済活性化としてはどのくらいの効果があるのかなという疑問もあります。
いずれにしても、減税、給付といったお金が動くことについては、財源が問われます。
積極財政(市中のお金の量を増やす)か、それとも何か支出を抑えるか、どのような対策がよいと思われますか。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生 - ステファニー・ケルトン, 井上 智洋, 土方 奈美
この記事へのコメント
お金刷ればいいと思うけどなぁ~
でも、所得の多い人は減税しなくてもいいのでは?
それよりは、減税して頂いた方がまだ公平感が出るのではないかと思います。
日本の物価が高いのは円安だからで、輸入品が高く
なって物価が上がり、経済が鈍化しているのだから、
その話を消費税を廃止したら経済がよくなると
いうのは違うと思います。
これ以上赤字国債を増やすほうが、どうかしています。
今の民間の相場である、「だいたい1桁下げる」
という当たり前の政策をすれば、適正な納税額は
自ずと出せると確信。たとえば某、新築警察建築物
の、横の、「塀」ではなくて「溝(謎)」の作成
費用は、1億円では無く1千万円が、どう見ても
民間では相場といったような事が一例だという事。
立憲民主党の前身の民主党にも、マスコミを
使って、例のパーマンスしたときに、「やって良い」
と認めた場合は業者の言い値に近くて、そのたぐい
の突っ込み手法自体が、あんまり無かったよねぇ。
そして、消費減税を行う、でなんとかならないかな。
NICEです(^^)
とっても考えさせられる案件ですね。
財政の出口戦略と政策実行は、セット商品。
残念ながら、財政の出口戦略を『明確』に示してくれている看板が見当たりません、わたしの目線では。ということで、消去法で今回投票先を選択した次第。
年金にも税金は掛かっているので、
長い目で見たら減税のほうがありがたいかな。
う~ん、でもあと何年生きられるかわからないから一時金も魅力的。
両院とも少数与党になったので経済政策もどうなることやら。
それをどこからとるか??となると 中小企業 いじめは困る・・・
税金の為に 働いてるようで 何も残らない 苦しさ・・・
まず 役所。議員の給与カット 賞与カット 人員削減
これだけで 税収は 変わります もらいすぎです 役人さん・・
それを 誰も言うことなく 税金です 税金 そのお金
と 言いたいですね 給付金 あっと言う間になくなります
取りすぎたら返す、もらいすぎなら税率を下げる・・
単純な論理で行けばいいですね・・・(^-^)!!
>「自国通貨を発行できる政府は、インフレにならない限り、貨幣を発行して財源の制約を気にせず支出を増やせる」という経済理論です。
現在はインフレではないというのでしょうか?
実質賃金、実質金利がマイナスですが。
これをやっても効果はないのかもしれません
哀しいことですが日本という国は人間にたとえて言うのならば
60歳の老人です。高度成長期の日本は少年でしたから金をばらまけば
グングンと伸びていました。
私が密かに期待しているのが20代です。年収も高いしよく勉強している
FP3級を数年前に受験した時 受験者の99%は20代前半の若者でしたから
資産運用や株式投資にも熱心です。
彼らが消費してくれたら日本は活気ずくでしょう
それこそパブル時代の到来です。
消費税をなくしてほしいです。
5%に下げるべきですよね。
議員は多過ぎます、まず人員を減らして国民に目に見える改革を。
赤字にならないように必死ですが、消費税は国民の義務?
仕方ないですね、その分買い物を控える暮らし"(-""-)"
>pnさん
>2025年07月23日 06:15
>選挙終わったからばら撒くのやめるって言い出したとか。
減らしたとはいえ、比較第一党も守ってますし、たぶんどこかを引き入れて政権は続くのでしょうから、公約は守ったほうがいいですね。
暑中お見舞い申し上げます