今年も続く「24時間テレビ」の是非論争

今年も続く「24時間テレビ」の是非

スポニチの報道によると、日本テレビの長寿慈善番組「24時間テレビ」が今年も放送されることが決まったそうです。この番組は1978年に始まり、40年以上にわたって続く国民的番組だが、近年は「感動ポルノ」との批判が相次ぎ、存続そのものが問われる状況となっています。


「感動ポルノ」とはどのようなものか



「感動ポルノ」という言葉は、障害者や困難を抱える人々を「感動的な物語」として消費し、視聴者の自己満足に利用するメディアの手法を批判的に指す用語です。

この概念が広まったきっかけは、オーストラリアの障害者活動家ステラ・ヤング氏のTEDトーク「私はあなたの感動の材料ではありません」でした。

「24時間テレビ」では、障害者が「頑張る姿」や「困難を乗り越える姿」が強調され、過剰な演出とともに描かれることが多いといわれており、これに対し、「障害者を感動の材料として利用している」「障害者の日常を特別視し、健常者の自己満足に利用している」という批判が生まれています。

具体的な批判点について



1. 障害者の「努力」の過剰演出について
同番組では、障害者がマラソンに挑戦するなど、過酷な挑戦を「感動的なストーリー」として描くことが定番となっています。しかし、これは「障害者は特別な努力をしなければ価値がない」という誤ったメッセージを発信していると批判されます。障害者権利条約でも「障害者の社会参加は特別な努力によるのではなく、社会の側がバリアを取り除くべき」とされているのです。

2. 寄付金の使途問題について
番組で集められた寄付金の使途について、透明性が不十分だとの指摘もあります。寄付金の一部が番組制作費に充てられている可能性や、実際に障害者支援にどれだけ役立っているのかが不明確な点が批判されてきました。

イギリスの「Children in Need」やアメリカの「Telethon」など、海外にも慈善番組は存在します。

しかし、これらの番組は、寄付金の使途を明確にし、受益者のプライバシーを尊重し、過度な感情に訴えない作りになっていることが多いです。「24時間テレビ」は日本の独自性を保ちつつも、こうした国際的な基準を取り入れる必要があるでしょう。

3. 一過性の支援について
1年だけの「特別な支援」で終わらず、持続的な支援システムを構築すべきだとの意見もあります。24時間という限定的な時間で感動を消費し、その後は忘れ去られてしまうのでは意味がないという指摘です。

4. 障害者の多様性の無視について
番組で取り上げられる障害者は限定的で、障害の多様性が反映されていません。特定のタイプの障害者だけが「感動的な物語」として選ばれ、他の多くの障害者は無視されているという問題があります。

番組に必要な改革


批判がある中で番組を続けるのであれば、以下のような根本的な改革が必要ではないでしょうか。

1. 障害者のエンパワーメントについて
障害者自身が番組制作に関与し、どのように描かれるかを決定できる仕組みを作るべきです。障害者を「客体」ではなく「主体」として扱うことが重要だと考えます。

2. 寄付金の完全透明化について
集まった寄付金の使途を完全に公開し、制作費との明確な線引きを行います。また、寄付金がどのような支援に役立ったのか、具体的な報告を継続的に行う必要があります。

3. 「感動」ではなく「現実」を伝えること
障害者の日常や社会が抱えるバリアをありのままに伝え、視聴者に考えさせる内容へと転換します。過剰な演出を排し、障害者の生活実態や社会の課題を伝えるジャーナリスティックな視点が求められます。

4. 持続的な支援への転換について
単発のイベントではなく、年間を通じた継続的なキャンペーンとして展開します。また、支援の成果を追跡調査し、フォローアップ報道を行うことで、一過性で終わらない取り組みを示すことができます。

5. 多様性の尊重について
さまざまなタイプの障害を平等に取り上げ、障害者の多様な生き方を伝えます。特定の「感動ストーリー」に偏らないバランスの取れた構成が必要です。

視聴者のリテラシーも必要


「24時間テレビ」には、長年にわたる実績と社会的影響力があります。

私たち視聴者も、単純に「感動した」で終わるのではなく、より良い形で存続させるためのリテラシーが必要だと思います。

「24時間テレビ」、ご覧になってますか。

「感動ポルノ」と向き合う 障害者像にひそむ差別と排除 (岩波ブックレット 1058) - 好井 裕明
「感動ポルノ」と向き合う 障害者像にひそむ差別と排除 (岩波ブックレット 1058) - 好井 裕明

この記事へのコメント

2025年07月30日 23:32
日テレの金は芸人を救うは見る気もないです
2025年07月30日 23:40
「感動ポルノ」という言葉、知りませんでした。
確かに、障害者の方が「頑張る姿」や「困難を乗り越える姿」が感動ドラマとして描かれていたりしますよね。
毎年似たような構成だなと思っていました。
なので、最近は見ていないです。
いつだったか、寄付金の横領事件もありましたよね。
それなのに、続けるのかな~って思いました。
2025年07月30日 23:47
こんばんは、いっぷくさん。
昔は見ていた時期もありましたが、今は24時間テレビは見ていません。
2025年07月31日 00:05
NICEです👍
2025年07月31日 00:30
基本的に寄付はお金に余裕がある人がするものだと思っていますので
お金に余裕がある人が先導して、お小遣いを貯めている子どもたちから
寄付を募る番組は止めるべきだと思います。

アーティストが無償で集まって実施された「We are the World」のように
作品を発表して印税分を全て寄付するというならわかりますが、名前も
知らない芸人とかを救済して、テレビ局が利益を挙げるようなのには全く
賛同できないですし、障碍者や被災者で稼ぐなと言いたいです。

個人的には盲導犬育成の募金には協力しています。
2025年07月31日 01:01
率直に言って、こうした演出は大嫌いです。

「人に迷惑をかけること怖れるな」
大好きな鶴田浩二さんの名作ドラマ
「男たちの旅路」の中の名台詞ですが
脚本も、私の敬愛する山田太一さん
40年も前のドラマなんですが・・・
今観ても、心揺さぶられます。

果たして、現在当事者の障碍者は
現実、本当に生きやすくなっているのか?
真実が知りたいですし
私たちが今からでも
早速出来ること等無いか
知りたいものです


2025年07月31日 01:09
昔はアニメだけ見てました
2025年07月31日 01:23
昔は見ていたころもあります。
ですが、障害者が頑張るエピソードは、やらせぽく思えて、
見世物にして視聴率稼ぎに利用していると思うようになり、
以後、見なくなりました。
自分の手足が不自由になってから、そう思うように
考えが変わったのです。
2025年07月31日 04:20
偽善番組は不要だと思います。
2025年07月31日 06:13
感動ポルノって言葉、初めて聞きましたが、たしかに当てはまらないわけじゃないな!と思いました。
私は得別気にしてみてるわけではなく、テレビを付けたら入ってるので見る程度ですが、たしかに最近マンネリ化されてる感がありますね。
寄付金の透明化は絶対必要だと思います。
pn
2025年07月31日 06:17
当初数年は24時間しっかり見てたけど、ちゃんと寝るようになり気が付くと全然観なくなった。やっぱ感動の押し付けがねぇ鼻につき過ぎるんだよ。
2025年07月31日 06:37
ボランティア活動していますから、お金を集めるのが大変なのはよくわかります。反対に「補助金」がいい加減なのも見ます。暖かく見守ってほしいです。
2025年07月31日 06:45
テレビの番組自体を、もう数年、まとまっては私見てません。
たまに、埼玉のディスカウントショップ等で、映像されて
いる姿をチラ見する程度になりました。直近は、ハードオフ
あたりでは、電気代掛かるからか。店舗に陳列したテレビの
電源すら、あんまり入れて無いみたいですがね。
2025年07月31日 08:15
いろいろなことまで考える方がいるのですね。
全く気にしないでみていました。
2025年07月31日 09:20
見たことがないのでコメントは難しいです。
「感動ポルノ」という言葉は初めて知りました。
寄付金を集める番組だという程度の認識しかありませんが、
障がい者の方を扱うのだとすると細心の配慮が必要だと思います。
2025年07月31日 10:14
1978年に始まっているのか?
長いなぁ~
2025年07月31日 10:22
こんにちは・・・(^-^)!!
こんなテレビ番組もありますね。
ほとんど見たことはないですが、平素の番組が何時に
放送されるか分らず困ります。
 唯一それは”笑点”ですが 😂
2025年07月31日 13:06
放送開始当初は見ていて、テレビ局まで募金に行った記憶があります。
アイドルタレントが大勢出演してワイワイするのに次第に興味が薄れ、見なくなって長いです。
感動ポルノ、そんな言葉があるのですね^^;
「感動」ではなく「現実」を伝える、まさにコレだと思います。
日常生活の中で何ができるのかを考えるような場になればいいのですが。
テレビ的には感動的なイベントが必要なのでしょうか。
2025年07月31日 14:24
番組が始まった頃は見ていましたが、
違和感を感じ以後見ることはないです。
2025年07月31日 16:00
うちは昔からの癖で、TVのチャンネルは24時間TVって感じです。
TVも世代交代、いろんな番組がありますから、当然いろんな意見があるのは当たり前かと...ただ折角の募金活動なのに、横領は頂けませんね。
bgatapapa
2025年07月31日 17:07
広告料を貰う為に同じ物を大量に施設に送ってるとしか思えませんね~政治家にも渡ってるのかな~想像ですけど~(^^)
2025年07月31日 19:08
一時はテレビにくぎ付けの時代も有りましたが今は
ONにしているだけ、静まり返った部屋が嫌なので
画面は見ませんがテレビは付けています。
2025年07月31日 20:24
TV自体を見なくなって久しいので24時間テレビも最初の数回くらいしか見た記憶が有りません。
一昔前のようにTVが放映しているものは全て正しいと誤認させるかのような時代とは異なり現代はSNS等の普及により偏向報道が指摘される時代、TV局も営利集団である以上視聴率を上げスポンサーも獲得し利益を上げなければならないので事実と異なる報道やヤラセ等行き過ぎた脚色が容認される雰囲気なのかもしれません。
障碍者の方々からすれば日の当たらない部分に日を当ててくれると言った反面、障碍者と言う理由だけで助けてもらいたくないと言う部分も有るようです。
障碍者の方が困っている場面で助けるのは「障碍者だから」ではなく「困っているから」助けるのであって、そのあたりを履き違えると違和感を覚えますね。
2025年07月31日 20:57
番組が始まった当初は観てました。
そのころは感動もしたし、面白かった。
今は、誰が走るかとか、司会が誰とか、完全にイベントになって主旨がちがっているように思えて、観ていません。
2025年07月31日 21:50
みなさん、コメントありがとうございます。
私はそもそもテレビを見ないので、番組自体はどうでもいいのですが、障害者に感動するアタシって素敵、と思っている視聴者がいるかもしれないところが気になります。その人には「感動はもっと別のところで探してくれ」と言いたいですね。
2025年08月01日 12:51
24時間でなく、定期的にやればいいのにと思うニコ。