「第4のがん治療」として注目を集めているハイパーサーミア(局所温熱療法)
「がん治療」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、手術、抗がん剤、放射線治療の3つでしょう。しかし、近年、これらに続く「第4のがん治療」として注目を集めているのが「ハイパーサーミア(局所温熱療法)」です。
先日は、42度のお風呂に入って、生体防御反応(ヒートショックプロテイン)を高める話を書きましたが、今回のハイパーサーミアはさらに踏み込んで、患部を43度にしてがん細胞を死滅させる治療法です。
画期的な効果を上げながらも、残念ながらまだ広く知られているとは言えません。
ハイパーサーミアとはなにか
ハイパーサーミアの核心は、「がん細胞は正常細胞よりも熱に弱い」 という特性を利用しています。
タンパク質は、熱によって変性します。
卵を暖めると、ゆで卵になりますよね。
がん細胞も例外ではなく、高熱によって細胞内のタンパク質や細胞膜がダメージを受け、機能不全に陥ったり、細胞死(アポトーシス)を引き起こしたりします。
日本ハイパーサーミア学会より
正常な組織にはしっかりとした血管ネットワークがあり、熱が加わっても、血流を増やすことで効率的に熱を逃がし、クールダウンします。
一方、がん組織は血管が未熟で歪んでいるため、熱が加わっても血流が増えず、熱が内部にこもりやすくなります。
その結果、がん組織の内部は正常組織よりも高い温度(例えば42~43℃)にまで達し、ダメージを受けるのです。
では、どうやってがん細胞に熱を加えるのか。
昨日の、お風呂に入る方法では、それはできません。
がん細胞は、体の深部にあるので、お風呂ではなかなか熱が伝わりません。
そこで、体の深部のがん細胞だけを43度にする機械を使います。
マイクロ波や、超音波などを用いた装置を使い、体外からピンポイントで患部を加熱します。
治療中は専門の医師や技師が温度を常時モニタリングし、やけどや痛みが出ないように細心の注意を払います。
この治療は、あまり知られていないので、民間療法に思われがちですが、健康保険が適用される医療行為です。
1回の治療時間は約60分程度で、週1~2回、合計8回程度で1セットが保険適用されます。
もっと頻繁に受けたいとか、もっと長く受けたいという場合は、自由診療もありますが、たとえば8回受けて、がんが小さくなったら手術で切除してしまうという方法もあります。
ハイパーサーミアで、もっとも治療効果が高いのは、抗がん剤治療との併用療法です。
ある種のがんでは、抗がん剤が効きにくい(耐性を持つ)場合があります。ハイパーサーミアを併用することで、その耐性を打破し、効かなかった抗がん剤を再び有効にできるケースがあります。
そして、効果が増幅されるため、同等の効果を得るために必要な抗がん剤の量を減らせる可能性があり、患者の負担(副作用)軽減にもつながります。
乳がんの再発・転移巣や、軟部組織肉腫、直腸がんの局所再発などにおいて、抗がん剤との併用療法は特に有効性が示されているといわれています。
その一方で、全身が対象となる、血液のがん(白血病や悪性リンパ腫など)には適応はありません。
局所に熱を加える治療法だからです。
ネックは採算と人材
ハイパーサーミアの温度がどんどん上がっている。
— 高須克弥 (@katsuyatakasu) January 15, 2025
かっちゃんの癌が死滅するまで頑張るぞ。なう。 pic.twitter.com/MYrPdlibuK
がんが全身に転移しているという高須克弥さんも、ハイパーサーミアをされているのですね。
ただし、前述のように、この治療法はあまり知られていません。
日本では、実施している医療機関が限られているという大きな課題があります。
何よりの理由は、病院が儲からないことです。
ハイパーサーミア装置は高額(数千万円~)です。しかし、保険点数(治療に対する報酬)が決して高く設定されていません。
治療には、長時間のスタッフの拘束と専門技術が必要であるにもかかわらず、その人件費や設備投資を回収するのが難しいという現実があります。
つまり、「医療として価値があっても、病院経営としては採算が取りづらい」 というジレンマがあるのです。
また、適切に温度管理を行い、効果を上げ、副作用を防ぐには、医師、技師、看護師すべてに専門的なトレーニングと経験が要求されますが、人材を育成する土壌が整っていません。
こうした課題を解決するには、保険点数や診療報酬体系の見直し、専門家育成のための体制整備、そして何より、患者や医療者への正しい知識の普及が不可欠です。
今や、2人に1人はがんになる時代と言われていますから、なったときの選択肢として、今は必要なくても、覚えておけば役に立つかもしれない「第四のがん治療」です。
ハイパーサーミア、ご存知でしたか。

がん細胞の弱点を突く ハイパーサーミア温熱療法 - 及川 寛太
この記事へのコメント
そう言えば、もう亡くなってしまった友達がつくば大学附属病院で、この手の治療をしてた気がする。名前は知らなかったけど、たしかワンポイントで言ったような治療法で、青森から出かけて治療してました。
これを読んで、頷ける治療法だと思いました。
でも、せっかくの治療法も長時間のスタッフの拘束と専門技術それに高額なために病院への導入が難しいのはでは困りますね。
抗がん剤が効きにくいがんもありますし、治療の選択肢が広がるのは有難いと思います。採算とか人材育成などの課題がクリアできますように。
局所的に攻撃すると言う点ではリニアックやガンマナイフ等の放射線治療に近いでしょうか、それを被ばくする事無く治療出来る事は大きいと思いますし、大きいがん細胞に対してこれらと併用すると言う方法も出て来ますね。
患者さんへの希望になればいいですね。
温熱療法という名前で聞いたことがあります。
ただ、普及しない理由は今日の記事で知りました。
効果あるけど儲からないし人材育成間に合わない、で、広まらないじゃ医療の本質見失ってるような気がする。
きつくない治療がいいです。
それでもずっと主治医は色々検査をしてくれます。
でもこの治療法は知りませんでした。
癌は怖くない・・・いずれそんな時代が来ると
思っています。
色々な研究で 癌が 撲滅できる 期待したいですね
人間の素晴らしさ 発揮です
ガン、聞きたくもない病名です😭
癌の種類や部位によっても適切な対応が異なるのも問題です。
数年前、大腸の内視鏡検査で大きなポリープが発見されました。
担当の先生からは「大きさから癌である可能性が高い」ということでしたが、
切除手術後の病理検査の結果、良性だったので幸いでした。
その時考えたこと。
まず信頼できる先生と出会うこと、治療の甲斐なく死に臨むとき選択した治療方法に後悔しないことでした。
まだまだ専門的なスタッフを育成しなくてはならないので
病院としても難題ですね。
岩盤浴をしていましたが、これと一緒なんでしょうね
時間がかかるでしょうね。病院も金額もですか....
ハイパーサーミアだったかどうかはっきり覚えていませんが、知り合いが熱で行う治療を受けに九州まで行ってきたと聞いた事があります。その後オペはこちらでしたようですが、お元気に生活していらっしゃるようにお見受けします。ハイパーサーミアの事が少しわかりました。
最高に幸せな人生だったなとに感謝あるのみ。
ふつうの温熱療法は知ってますけど。
がん細胞は熱が溜まりやすい!
それに、保険適用もあるのですか。
これから高齢者まだ増えていく時代ですし。
もっと普及するように、制度を整えてほしいものです^^