猪木啓介『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(講談社)
アントニオ猪木という人物を振り返るとき、多くの人が思い浮かべるのは「燃える闘魂」という強烈なイメージではないでしょうか。リング上で豪快に戦い、時にはその生きざまで人々を奮い立たせる姿こそが、国民的スター・猪木の代名詞でした。
しかし、そのイメージの奥に隠された人間・猪木の姿は、決して公の場だけでは語り尽くせないものがあります。
実弟・猪木啓介氏による『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(講談社)は、弟として長年寄り添った立場から兄の人生を描き出した一冊であり、ファンにとっても新鮮で心に響く証言集です。
本書の大きな魅力は、決してプロレス本ではなく、「身内ならではの視点」にあります。
ブラジル移民時代の苦労
猪木の誕生日である2月20日に
— 2代目 懐かしラボ (@dietjijyou) January 29, 2025
『兄 私だけが知るアントニオ猪木 』
が出版される
著者は弟の啓介さん
身内の方がインタビューなどではなく
ちゃんとした本を出すのは珍しい事
どんな『僕の知らない猪木』がいるのか?
今からとても楽しみだ😊 pic.twitter.com/Ej0GSAIFSg
アントニオ猪木という名前が世界に知れ渡るずっと前、猪木寛至は家族と共にブラジルへ渡り、過酷な労働の日々を送っていました。本書ではその時期の苦労が率直に語られています。
猪木一家は、横浜の鶴見で、幼稚園を経営して食い詰めていたわけではなかったのに、安定が嫌いな一族で、常に変化を求めて動き続けるマグロのような人生観をもっているそうです。
ちなみに、私の父の兄一家も、やはりブラジルに移民経験がありますが、こっちはたんなる山師です。
それはともかくとして、猪木さんの実像は、マスコミから脚光を浴びるのが好きで、寂しがり屋だそうです。
そして、人が予想だにしないハプニングを起こすのが大好き。
そのためなら、結果を考えず走り出してしまう。
モハメド・アリ戦などは、そのような気持ちから実現したそうです。
そして、マスコミ受けする発言のターゲットは、いつもジャイアント馬場(笑)
それでいて、レストランで一緒になると、ペコペコ頭を下げて勘定を払ってもらう。
「馬場さん、猪木さんが伝票を置いていきましたよ」
「ん」と言って、表情も変えずに払ってあげる馬場さん。2人の関係は、プロレスファンでもよくわかりませんでした!
ただ、そういう人なので、猪木さんはタニマチに恵まれました。
金に困ったとき、自分が起業した新日本プロレスの株を売って、債務保証したのが佐川急便会長。
かわりに、IGFという団体を設立したときに、スポンサーになってくれたのは外食産業大手のジー・コミュニケーション。
莫大な稼ぎを、事業道楽で使い果たしていた猪木さんのために、葬儀もスポンサーによって行われました。
一方で、「猪木を利用して一儲けしよう」という悪い人が、いつも近づいてきたそうです。
慎重居士の馬場さんは、そういう人をいっさい寄せ付けませんが、猪木さんは「みんなで良くなろう」と言って案の定トラブルに巻き込まれます。
日本プロレスのっとり、アントン・ハイセル、度重なる興行のトラブル……
被害者から文句を言われると、「俺は知らない。俺も被害者だ」というお定まりのコメントで失笑する展開が何度あったことか。
婚姻は、事実婚も含めて4回。
3回の離婚は、すべて猪木さんの不倫があったそうですが、最初の妻(アメリカ人)はお子さんも亡くなりました。
2人目が倍賞美津子さん。娘(寛子さん)が1人。
3人目の妻には息子さんがいますが、猪木さんのことで連絡を取りたくても「弁護士を通せ」という絶縁状態。
4人目の妻は田鶴子さんというカメラマンで、猪木一族やタニマチ、マスコミなどとの関係は最悪だったといいます。こちらは猪木さん健在のうちに死別しました。
遺言と4人目の妻の「処遇」
ひとつだけ、よその家のことですが、ちょっと納得いかないことがありました。
4人目の妻、田鶴子さんが、猪木さんより先に亡くなった時点で、青森に「アントニオ猪木の墓」を建て、夫婦で入ることになっていたそうです。
猪木さんの療養中に、著者が確認したところ、猪木さんは、「青森は遠いから、本当は(自分は長男ではないので?)入れないんだけど、猪木家の墓がある鶴見の総持寺がいい」と言ったそうですが、改めて話し合いの結果、「総持寺に納骨するが、一部(米粒ほどでも)は青森に分骨する」ということで、納骨についての「遺言」は結論を見たそうです。
ところが、猪木さんが亡くなった後、事実上唯一の直系子孫である寛子さん(既婚)は、田鶴子さんと同じ墓にいれることを拒絶し、青森に分骨はしなかったというのです。
本書では、田鶴子さんに対して「後妻業」などという表現まで出るほど彼女は憎まれていますが、生前たとえどんな嫌われ、憎まれることをした妻であろうが、猪木さんと夫婦だったことは事実です。
猪木さんの遺言でも分骨で落ち着いていたのに、たかが米粒程度も分骨できないというのは、越権のそしりは免れないのではないかというのは私の率直な感想です。
なぜなら、それを認めてしまうと、相手の親族から嫌われていたら、たとえ夫婦当事者が配偶者と一緒の墓に入りたくても、遺族の感情次第でそれがかなわなくなってしまうケースが当然視されることになります。
夫婦のことは夫婦で決めることで、たとえ実娘だろうと、もはや同じ戸籍でもない「他所の家の人」が勝手に決められることではないと私は思うのです。
わかりやすく書きますと、両親が離婚して、その時引き取らなかった方の親と子は、もう「他所の家の人同士」だと見定めたほうがいいと思います。
冷たいですか。でも、いつまでも親子の関係にこだわっていたら、別れた親の、新しい家庭(再婚相手やその子供)の立場はどうなんでしょうか。
とくに、新しい家庭の子には何の罪もないのに、複雑な思いをさせるのではないでしょうか。
自分さえ良ければ、新しい家庭の子に嫌な思いをさせても、別れた親を「今でも親でしょ」と食らいつく気には、私だったらなれません。
まあこう書くと、「うちはそういう関係でも交流しているよ」とドヤ顔で反論する人が必ず出てくるのですが、離婚した家庭の人間関係はデリケートで、誰もがフランクに行き来できるわけではないということです。
アントニオ猪木さんも、ジャイアント馬場さんが「本家」で自分を「分家」という表現を使ったりなど、どうも猪木さん一族は、すでに民法上否定されている「家制度」の価値観に囚われすぎているように思います。
みなさんは、猪木さんの分骨問題、いかが思われますか。一般にもありがちなトラブルだと思うんですけど。

兄 私だけが知るアントニオ猪木 - 猪木啓介
この記事へのコメント
家族の数だけ事情があるので外部の人間は軽々に物申すべきではないと思っています。
もちろん、アントニオ猪木、ジャイアント馬場、子供心ながら、怖いと思ってました
感情的な対立が生じやすい問題ですな。
いくら娘さんでも、同じ墓にいれることを拒絶するなんてちょっとひどいですよね。
本気でビンタするから
あれは暴力です。
nice!です。
50年近く前に偶然新幹線名古屋駅ホームで見たアントニオ猪木さんは大き過ぎて、すぐ目に着きました。存在感ありますね。
私には正直、大問題に見えません。人それぞれで良いのでは?
う~ん、答えにならないけど、
奥さんは、ひとりがいいですね。。。。
NICEです(^^)
拝読させて頂き、勉強になりました。
それはさておき、弟さんのアゴもそれなりなのねo(^▽^)o
寂しがり屋だからマスコミから脚光を浴びたかったのでしょうか?
猪木さんに弟がいたんですね。
強烈なイメージの猪木さんだから孤独な人と勝手に
思い込んでいました 😂
何はともあれ、最後に夫婦でいた方なのではと...もめごとは困りますね。
昔はプロレスがゴールデンタイムで放送していましたから人気ありました
よね!
nice!です!!!