ケアマネジャーはらはら日記(岸山真理子著、三五館シンシャ)
岸山真理子さんによる『ケアマネジャーはらはら日記』(三五館シンシャ)は、47歳からケアマネジャーとして現在まで活動を続ける自らの奮闘記です。Kindle版でも読むことができる本書は、介護保険制度創設の2000年から現職として、介護の最前線で見てきた人々のリアルな姿を描いています。
毎日新聞の書評でも取り上げられ、「誰しもがささやかな生を紡いでいる描写に心が揺さぶられる」と評価されている通り、がん闘病しながら要支援2のサポートさえ受けずに自立した生活をする男性や、終戦後にロボトミー手術をされた娘と離れたがらず一緒の認知症棟に入所した高齢の母など、深刻な境遇にありながらも尊厳を持って生きる人々の姿が描かれています。(https://mainichi.jp/articles/20210824/org/00m/040/003000d)
読者レビューからは「介護のやりがいや市民目線の内容で勉強になった」「読み応えがあり、ケアマネの仕事の大変さや重要さがよくわかった」といった声が寄せられており、単なる体験談にとどまらず、介護制度の理解を深める教育的価値も持つ作品として評価されています。
ケアマネジャーという仕事
ケアマネジャー(正式名称:介護支援専門員、以下ケアマネ)は、2000年の介護保険制度導入に伴い創設された、都道府県知事の登録を受ける公的資格です。
介護を必要とする高齢者やその家族に対し、適切な介護サービスを受けられるよう支援する専門職として位置づけられています。
その主な役割は、利用者の心身の状況や生活環境を把握し、個々のニーズに応じたケアプラン(介護サービス計画)を作成することにあります。
介護ヘルパーの手配だけでなく、訪問看護、ときには病院などとも連絡を取り、情報を共有化して被介護者の介護サービスをマネジメントします。
ですから、介護サービスを受ける人には、まずケアマネがつきます。
ケアマネは、介護サービス会社に所属しています。
ケアマネジャーになるためには、厳格な受験資格をクリアしなければなりません。
無資格からケアマネジャーを目指す場合、「介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士」の順序で資格を取得し、さらに5年間の実務経験を積む必要があるため、最短でも8年程度の期間を要します。
試験の合格率は、例年10~30%程度と決して高くなく、合格後も実務研修の受講・修了が必要です。
さらに、資格維持のために、5年ごとの更新研修受講が義務づけられており、継続的な学習が求められる職業でもあります。
つまり、かなりハードルの高い資格です。
その上、仕事内容は想像以上に多岐にわたり、介護職員と比べてデスクワークの占める割合が高くなっています。特にケアプランは、利用者の介護の基となる重要な書類であり、一つの間違いも許されない責任の重さがあります。
さらに、被介護者、その家族、医療機関、介護事業者、行政機関など、多様な立場の人々との調整役を担いますが、それぞれが異なる立場や利害を持つ中で、全員が納得できる解決策を見つけることは容易ではありません。
家族の意見が分かれる場合や、利用者本人の意向と家族の希望が対立する場合など、板挟みになる状況も少なくありません。
また、サービス提供事業者との連携においても、質の問題やスケジュール調整など、様々な課題が生じます。
難関をクリアされた方ですから、個々のケアマネに仕事に対する意欲はもちろんあると思いますが、人間同士なもので、相性もあるんですね。
そういう「当たり外れ」感は、被介護者からすると否定はできません。
本書では、理不尽な老人とのやりとり、困窮する利用者と家族のために奔走する著者の苦労がリアルに描かれています。
困難を乗り越えるやりがいと意義
『ケアマネジャーはらはら日記』を読了。ケアマネって、こんな職業なんだ!と勉強になりました。介護の世界は、奥深いです。いい職業だなあと思います。#フォレスト出版 #ケアマネ #岸山真理子
— リンコ (@Rinko96130) January 21, 2024
こういう大変な仕事だと、ホリエモンあたりが、従事することをコバカにするわけですが、いや、国民みんなが楽で儲かる方に打算で偏ったら、社会は成り立ちません。
というか、人間はそこまでオポチュニストにはなりきれず、報酬や仕事の大変さからすれば、選びづらいことをあえて行う価値観だってあるのです。
多くの困難がある一方で、ケアマネジャーという職業には、他では得られない深いやりがいがあります。
最も大きなものは、自分の作成したケアプランによって利用者の生活が安定し、健康状態が改善されることです。
利用者本人や家族から、「あなたで良かった」と感謝の言葉をかけられたとき、すべての苦労が報われる思いがすると本書にも書かれています。
本書は、このような現実のケアマネの日常を、美化することなく、しかし人間への深い愛情を込めて描かれています。
68歳になった今も、現役で活動を続ける著者の視点から見た介護の現場は、制度の課題や社会の矛盾を浮き彫りにしながらも、そこで懸命に生きる人々への敬意に満ちています。
本書を読むことで、介護を受ける人々の多様性と複雑さ、ケアマネジャーという職業の重要性と困難さを理解できるだけでなく、高齢社会を生きる私たち全員にとって他人事ではない現実を知ることができます。
現在は元気な方でも、将来はお世話になる可能性は十分ありますから、ご自分やご家族の介護について考えたいすべての方に、読んでいただきたい一冊です。
ご自身やご家族が、ケアマネにお世話になったことはありますか。

ケアマネジャーはらはら日記 - 岸山 真理子
この記事へのコメント
父は具合が悪くなって1週間で亡くなったので、介護より、父の仕事の後始末が大変だったのです。
母は認知症もあったし、仕事子育てと一番忙しい時で、施設にあずけていました。そういう意味ではあまりいい娘ではなかったけど、私なりに精一杯頑張ったつもりです。施設に行く前に自分で面倒を見ていただけに大変な事はよくわかります。忘れないために毎日顔を出しました。
その後、担当のケアマネージャーさんには大変お世話になり、施設への入所も実家から近い施設に早く入所出来るように取り計らって頂きました。
ケアマネが足りなくなるわけですな。
親身になってくれて、能力も高い方から変わった時はかなりめげたなぁ
たかが1か月毎に、捺印押しに行くのが億劫で、ロング
ショートステイの利用をキャンセルして、正規順番待ち
に替えた、横着な不とどき者ですけどね。
廃業してしまいました。
でも、ケアマネさんが変わるのが嫌なので、その人が
転職した居宅介護事業所と契約しました。
技量があってもツンツンしている人より、スマイルな人柄
がよいです。
nice!です。
まだお世話になったことはないです。
介護を受ける側の事情は千差万別、人対人、業務内容は多岐にわたり本当に大変なお仕事であることは間違いありません。
亡き家内はこういうのに精通してましたが私は
とんとわかっていません。
実際お会いした事がないですが、義姉は感謝.感謝でしたよ。
ケアマネ含め、介護のお仕事、並大抵な事では出来ないですね。
いずれ、お世話になり事になると思いますが
少しでも、自分の事は自分でできるように、長生きしたいと
思っています