家庭内性的関係の実態~沈黙を破る被害者の声と社会の役割

家庭内性的関係の実態~沈黙を破る被害者の声と社会の役割

実の娘に性的関係を強要し続けた父親が、懲役8年の判決に控訴しました。発覚しにくい家庭内犯罪を明らかにした一方で、「血のつながった親子なんだから、見逃してあげるべきだった」という無責任な意見も一部にはあります。

今日の情報源はこちらです。


決して、これは日本で唯一の事件ではありません。

警察庁の統計によると、2022年に児童相談所が対応した児童性的虐待の相談件数は2,826件に上ります。

このうち、実父による被害は約24%、実母の配偶者(継父など)が約6%を占めています。

さらに深刻なのは、これらの数字が氷山の一角である可能性です。

内閣府の調査では、性的暴行被害経験のある女性のうち、加害者が「家族・親族」であったケースは約15%に上ります。

家庭内性暴力は密室で行われるため、発覚しにくく、被害届が出されないケースが少なくないのです。

過去10年間で、その認知件数は増加傾向にあります。

これは、事件そのものが増えているというより、社会の関心の高まりや、被害者の声を聞く体制が少しずつ整ってきた結果と考えられます。

つまり、発覚する割合が高くなってきたということです。

2010年頃と比較すると、児童性的虐待の相談対応件数は約2.5倍に増加しています。

また、DV防止法の対象に「配偶者からの性的暴力」が明記されたことで、婚姻関係内での性暴力も「犯罪」として認識されるようになってきました。

家庭内性暴力には、以下のような特徴があります。

見えにくい犯罪である
家庭という密室で起こり、証拠が残りにくい
被害者が声を上げづらい
経済的・情緒的依存関係があり、告発が困難
長期化しやすい
逃げ場のない環境で繰り返し被害に遭う
心理的影響が深刻
信頼できるべき家族からの被害は、心に深い傷を残す

特に子どもに対する性的虐待では、被害者が成人するまで、あるいはそれ以降も声を上げられないケースが少なくありません。

福山里帆さんのように、時間が経ってから勇気を振り絞って告発するケースも多いのです。

子の人生を支配する親であってはならない



「いや、でも自分や、自分の親は、こんな鬼畜ではないよ」

と、多くの方は思われるでしょう。

それは確かにそうだろうと思います。

ただし、私がなぜこれを取り上げたかというと、この問題の本質には「毒親」というキーワードであり、「性」のことさえしなければいい、というものではないと思ったからです。

毒親とは、心理療法士および作家のスーザン・フォワードが、1989年に上梓した『毒になる親』で使われている言葉であり、毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親のことを指します。

もちろん、無謬万能な親などはいません。

しかし、スーザン・フォワードによると、「子供に対するネガティブな行動パターンが※執拗に継続※し、それが子供の人生を支配するようになってしまう親」(1、※間は傍点)が存在するといいます。

具体的には、

①神様のような親
②義務を果たさない親
③コントロールばかりする親
④アルコール中毒の親
⑤残酷な言葉で傷つける親
⑥暴力を振るう親
⑦性的な行為をする親、

などに分けられるそうです。(2)

そのうち、④⑥⑦は比較的わかりやすい毒ですが、それ以外は「親が良かれと思ってやっているに違いない」「親は子を生み、苦労して育てたんだから親のほうが偉い。だから仕方ない」など、まさに①に囚われる考えを持つ人が少なくないことも問題を深刻にしています。

つまり、「性」のこと(⑦)でなくても、①~⑥に当てはまる行為は、子の人格や人生に影響を与える意味で、実は今回の「鬼畜」とは、軌を一にする面もある、ということです。

2020年(令和2年)4月1日からは、親が子にしつけのつもりであっても、体罰を加えることは法律によって禁止されています

これをもって、「息苦しい世の中になった」と言われる方もおられるかもしれませんが、法律が親子関係に介入せざるを得ない不明を恥じ、「自分は毒親にはならない」もしくは「自分が親から受けた毒で世間に迷惑をかけない」と心することが大事ではないかと思います。

「この世に生まれた感謝」の表現の仕方


こうした事件があっても、少数ですが、

「血のつながった親子なんだから、もみ消すべき」
「育ててもらった恩があるだろう」
「家族の恥を外にさらすな」
「父親の人生を台無しにするつもりか」

と、被害者を責める意見もあるそうです(DeepSeekより)。

とくに中高年には、「家族は常に安全で温かい場所であるべき」という理想化された家族観が根強く存在するといいます。

そのため、家族内での犯罪を認めたくない、あるいは見て見ぬふりをしたい、そんなものは“ないこと”にすべきだ、などという心理が働きます。

こうした意見は、被害者に二次被害を与え、声を上げづらい環境を作り出しています。

特に地域社会や親族内では、こうした「わかっちゃいない」意見が被害者を苦しめるケースが少なくありません。

では、具体的にどうすればいいでしょうか。

児相(児童相談所)のような、家庭内犯罪相談所の設置がまず必要だと私は思います。

「親子の問題」ではなく、社会の力を必要とすると思います。

同時に、そこにたどり着くまでの道のり、そしてその後も続く長い旅路を、社会全体で支えていく視点が不可欠です。

それには、私たちが意識を変えること。

前述のように、「血のつながった親子なんだから、もみ消すべき」などという意見は「隠蔽」ですから、犯罪の片棒担ぎなのだという自覚と認識を持つべきです。

SNSで正しい情報を発信したり、もし身近に被害者がいたら、「あなたは悪くない」と伝えたりすることでもいいと思います。

身近にそのような人がいたら、どうされますか。


(1)スーザン・フォワード著、玉置悟翻訳『毒になる親 完全版』、毎日新聞出版、2021年、p.23
(2)スーザン・フォワード著、玉置悟翻訳、上掲、pp.37-295

毒になる親 完全版 - スーザン・フォワード, 玉置悟
毒になる親 完全版 - スーザン・フォワード, 玉置悟

この記事へのコメント

2025年10月30日 23:04
第2次ベビーブームの頃問題になったのがいじめと格差
その子達が、親になってるから人を敬うよりも蹴落とすような教育を受けてきたような気がします
その子達が今親になってるからこんな問題が??
2025年10月30日 23:11
私もこのニュースを見てびっくりしました。実の親が!、一番あってはいけない事なのに、平然としていた父親にもびっくりしました。
そして、よくぞ、名前まで出して堂々と訴えた勇気をたたえてあげたい!と思いました。
最近は依然と違って、ジャニーズ問題のように、声をあげ易い世の中になったので、こういう風に明るみに出たのだけど、昔はほとんどもみ消していたんだろうなぁと推測されます。家庭内暴力や心理的暴力なども含め、もっと社会で守ってあげる場所や法律が必要だと思います。
2025年10月31日 00:00
この裁判については、娘さん良く実名を出してまで訴えたなって感心しています。
それについて、父親の方は控訴してるなんて自分の行いを振り返ってみて欲しいですね。
そう言えば、昔は躾と称して子供を叩く親が多かったなって思います。
私の隣に住んでた幼馴染の男の子は、いつも両頬真っ赤にしていました。
でも、家の中の事ご近所でも誰も何も言えないでいました。
今だったら、きっと通報されるレベルだと思います。
2025年10月31日 00:48
なんと言っていいかわからない
2025年10月31日 01:04
親子で性的関係、理解不能です。
もし妊娠したら、奇形の確率大ですよ。
2025年10月31日 04:18
鬼畜以下。
断罪すべし。
2025年10月31日 05:23
おはようございます!
nice!です。
2025年10月31日 05:58
見当たらないので考えた事、一度も無かったと言うのが、私の
場合正直なところ。子供のころ、理髪店に置かれた女性雑誌で、
「可能なら当時の『世話好きオバさん』と相談し、結論的には、
子どもの側から別居」を勧めていた記憶が、微かに有ります。
「世話好きオバさん」居無い社会も。子供には孤独で暗いねえ。
pn
2025年10月31日 06:20
実父の方が多いってーのがびっくりだわ。
こういうのを擁護する人はやっぱそっち側の考えである意味予備軍、あるいは過去にやってるんだろうかね。
2025年10月31日 06:36
朝日。連載してますね。
闇に埋もれてるの、たくさんでしょう、きっと。
koh925
2025年10月31日 08:00
私も娘をもった父親の一人です
まったく理解できないです、コメントも書けません
これが同じ父親とは嘆かわしい、何とも嫌な事件です
2025年10月31日 09:41
全く信じられません。なんということでしょうね。
2025年10月31日 10:09
こんにちは(^^)/
近親相姦は言葉は知っていましたが・・・
今回の裁判ニュースを聞いてショックを受けています。
2025年10月31日 11:28
子供にとっては地獄ですね。
親側を擁護する気持ちが1mmも理解できません。
相談できる場所、声をあげやすい環境が必要ですね。
bgatapapa
2025年10月31日 11:59
ナイスどすえ~(^^)
2025年10月31日 12:34
私が育った村でもありましたね。
S20年頃、知能の低い男親と、暮らしていた娘さん
(彼女も無能力学校にも行っていない)
村中の話題になる親子・相姦?悲しいですね。
2025年10月31日 15:34
まさかそんなことが起きているとは、周りは気づかないでしょう。
そのために、子供が訴えても信じてもらえないケースもあるようですね。
子供だって、表沙汰にするのは辛いですよ。
でも事件はいくつも発覚しているし、統計上にも出てきています。
性的虐待は論外ですが、もっとわかりにくいケースもあるでしょうね。
被害が長くならないうちに、子供の方も気づけるといいのですが。
周りは、ありえないと思い込まず。
子供や家庭内の弱者は、周りに助けてもらえるようでありたいですね^^
2025年10月31日 17:33
このニュースは見ましたが、子に対しての溺愛でもなく
信じがたいですが、秩序のない親としか思えないです。