YouTubeで話題の「日本すごい系歴史動画」を検証:史実と演出の境目とは
YouTubeチャンネル「日本人のひみつ」で公開された動画が話題になっています。鹿児島県の郡山八幡神社で見つかった、約450年前の「落書き」について解説したもので、その落書きが“海外の学者たちを震撼させた”という内容ですが、確かめる必要ありそうです。
動画は、鹿児島県の神社で発見された、約450年前の「落書き」について詳細に説明しています。
この「落書き」は、当時の大工が、仕事の発注主が焼酎を振る舞わなかったことへの不満を墨で記したものです。
その事実をもって、当時の日本の庶民の識字率が、世界的に見て非常に高かったことを示す歴史的証拠として、海外の学者たちを驚かせたとしています。
また、江戸時代の寺子屋教育が広く普及していたことが、この高い識字率を支えていた背景として紹介され、この発見が当時の人々の生活や文化、そして焼酎の普及状況を明らかにし、大きな話題となっていることが述べられています。
さて、これって本当なんでしょうか。
「事実」と「誇張」のないまぜ
もとの動画情報です。
ChatGTPに、この動画を見せました。結論から述べると、動画の内容は、史実(落書きの存在と内容)は本当ですが、海外の反応部分は、SNS特有の誇張(演出)である可能性が高いです。
「落書き」自体は、歴史的に非常に有名なもので、事実に基づいています。
しかし、それが、「諸外国の学者を震撼させた」というドラマチックなエピソードは、動画の再生数を稼ぐための「後付けの演出」であると見られます。
ChatGTPは、「確認できる内容」と「信頼できない・過剰な主張」とを枚挙しています。
確認できる内容
・郡山八幡神社(鹿児島県伊佐市大口大田 1549)には、本殿が昭和29年(1954年)に解体修理された際、柱貫の「木鼻(きばな)」の付け木の裏から、墨書(落書きに近い)とされる木片が発見されたという記録があります。
・その墨書には、「永禄2年(1559年)8月11日/作次郎・靍田助太郎」などの記載があり、また「その時座主ハ大キナこすてをちやりて一度も焼酎ヲ不被下候/何共めいわくな事哉」などの文言が確認されています。
つまり「座主(神社あるいは別当を指す)が非常にケチで、一度も焼酎を出してくれなかった。何とも迷惑なことである」という大工の愚痴と解される墨書です。
・さらに、この「焼酎」という字が記録上、現存する日本最古レベルのものとされており、鹿児島県有形文化財として指定されている旨の市や県の資料があります。
信頼できない・過剰な主張
「日本人の識字率の高さが諸外国の学者から再評価された」という形で、世界規模・学術的なインパクトの主張までは、確認できる一次資料が見当たりません。
動画のように「世界が震撼」という表現や、海外学者の評価という形での言及について、学術誌・国際論文・海外データベースなどで確認できていないため、少なくともそれを裏付ける公的/学術的な裏付けは薄いと言えます。
また「450年前」「450年前の落書きで…」という語りは、1559年/現在(2025年)から約466年前ということで「約450年前」という表現自体は大きくはズレていませんが、情報が「動画用に煽られた」可能性もあります。
この墨書を「識字率の高さの証明」に結びつけるには慎重さが必要です。落書きを残せる大工という特定の職人階層が対象であって、一般庶民の識字率全体を反映するとは限りません。
学術的に「日本最古の焼酎文字」という主張も、「記録上確認できる範囲では」という但し書き付きで紹介されており、絶対的に「最も古い唯一の証拠」と断定されてはいません。
「歴史の疑似科学」はファクトチェックを!
「でも、もとになる出来事が本当なら、基本的にいいんじゃネ。YouTubeも競争が激しいし、多少盛るのは目をつぶってあげても」
と、思う方も、おられるかもしれません。
しかし、先日もご紹介した「疑似科学」とは、1から10まで嘘や創作ではなく、ところどころに本当のことがあり、それを勝手な憶測でつなげたり、確認できない結論に導いたりしていることに問題があります。
今回の動画も、間違った歴史認識に利用されないとも限りません。
最近のSNS動画(FacebookリールやTikTok、YouTubeショート)では、歴史修正主義といい、昔のことであるのをいいことに、客観的な証拠も論考もなく、日本の過去を、一方的に美化しなおす歴史観が、主に自称右派的な人々によって行われています。
たとえば、軍隊や警察は実は優しい人たちだった。日本は身分差別がなかったなどなど……。
いやいや、だったら特高警察なんて言葉はないしさ、江戸時代の士農工商は明治の壬申戸籍まで引き続き、「貴族」「士族」「平民」「エタ」「非人」などの旧身分が書き記され、就職や縁談に影響しなかったでしょう。
でも、それを信じる人たちは、学問ではなく宗教として「日本無謬万歳」と信じてやまないので、今回のような動画は、いっそうその人たちの信仰を補強することになりかねません。
私は、本当に日本人なら、日本の歴史と正しく向き合って、悪いところは克服し、良いことは発展させていくべきだと思うので、嘘とお為ごかしの「歴史の疑似科学」は全く歓迎しません。
ということで、面倒な時代になりましたが、極端に称賛したり、逆に貶めたりする意図の記事や動画は、それが事実と照らし合わせてどうなのか、一歩立ち止まってファクトチェックされる方が良いと思います。
感情を揺さぶられるような「ニッポンスゴイ」動画は、最近経験ありませんか。

Not Found9 -ネットから削除された禁断動画- - ---
この記事へのコメント
百姓の識字率も同じとはならない。
当時政策にかかわったであろう石切り職人の暗号が残され
今でもそれを見る事が出来ます
個人的に、当時は武家や高級商人以外は言葉を書くって認識なかったのかな?
バカであるはずはありません。
能力はあるのに、使わずにバカに見える人はいると
思います。
でも、大工の娘としては、「座主(神社あるいは別当を指す)が非常にケチで…」なんて墨書きはしないで欲しかったな。
自分自身が詳しい分野なら薄っぺらな内容だとすぐに気付きますが、そうでない場合には「へ~そうなんだ」と思ってしまう可能性はありそうですね。
嘘を広めて何が面白いのだろうと思ってしまいますが、ネットで何か調べる時も、ヒットした記事の出所を確認してから読むように心掛けています。
nice!です。
昔から建物の柱などに文字を残すことは
ありますね。
重要文化財の建物に宮大工が残される記録は
とても貴重なものだと思いますがお酒をふるまって
もらえなかったと・・・そんなこと残しますかね。
したにしても、恐らく匈奴や鮮卑に対抗するために、騎馬民族
が、航海術が未熟である事を利用して、武器開発を隠しする為、
海が発覚の障壁になるような場所に、元々は派遣・隔離された、
前漢王朝期の、特別な技術者集団だったのではないかと、私は
祖先を一応、尊敬はしていますが。小生のブログ、公開してる
けど。世間じゃほぼ、現定説とかけ離れているので無視ですね。(笑)
今は これっぽっちも ありません・・・
お客様は神様です
でも、こういうのをまるっと信じる人
信じられません。
昨日で各地の菊花展やコスモスフェスタも終わって
殺風景な季節になりますね (#^.^#)
嘘動画を見分けるのも大変そうですが、公共の落書きは困りますね。
宮大工は大工さんの世界でも一番厳しい仕事だと思います。
志願する青年が出てきてほしいですね。