認知症を患いながらも舞台に立ち続けた伝説の女優を描いた『喝采』
2026年1月9日に全国公開された映画『喝采』(原題:The Great Lillian Hall)を観に、東京・新宿のkino cinemaに行ってきました。認知症を患いながらも、舞台に立ち続けた伝説のブロードウェイ女優を描いた感動のヒューマンドラマです。
本作は、ブロードウェイで活躍した、伝説の舞台女優マリアン・セルデス(Marian Seldes、1928年8月23日~2014年10月6日)をモデルとした物語です。
主演のジェシカ・ラングが、チェーホフの戯曲『桜の園』の公演を控えた大女優リリアン・ホールを演じています。
認知症の影響に負けずに演じきれるか
76歳のジェシカ・ラングが、認知症を患う舞台女優という難役を見事に演じきったことに、多くの観客が感銘を受けています。
認知症の進行で、舞台稽古中に台詞を忘れたり、亡くなった夫の幻覚を見たりして混乱するリリアン。
医師から認知症を患っていることを告げられます。
レビー小体型認知症として、幻視、睡眠障害、迷子など、症状がリアルに描かれており、医学的にもかなり具体的なな描写となっています。
リリアンのアシスタント兼家政婦イーディス(キャシー・ベイツ)は、自分の父親が認知症だったので、彼女の発症を知り、最初は降板を強く勧めます。
ある時、彼女は、薬を飲んだかどうかも忘れ、規定量よりも薬を飲みすぎて倒れてしまいます。
その時に娘・マーガレット(リリー・レーブ)が初めて母親の状態を知り、またアシスタント兼家政婦だけが事情を知っていたことで、実娘の立場が蔑ろにされたと思い取り乱します。
稽古は常に代役が控えて、プロデューサーと演出家が、交代させる・させないで揉めます。
が、結局彼女でないとチケットが売れず、彼女で行くと決めたプロデューサーは、開演直前まで幻覚による放浪(徘徊)で劇場入りしない状態でも、彼女に賭けます。
イーディスは、舞台裏から無線を使って、彼女がセリフを失念したときに耳元にセリフを送ります。
隣人の芸術家・イケオジのタイ(ピアース・ブロスナン)は、彼女の話し相手ですが、彼女の続投が決まってからは、自宅の稽古の相手もつとめて協力します。
リリアンがタイに、「芸術は人生を超えるかしら」と問うセリフが、天命、天職ともいえる俳優業への傾倒ぶり、生き様を象徴していて、舞台に立つ間だけでも認知症の影響に負けずに演じきれるかが見どころとなっています。
今を生きることを諦めない生き様を描いた
***絶賛上映中***
— シネ・リーブル神戸 (@cinelibrekoube) January 24, 2026
『#喝采』
ブロードウェイの第一線で活躍してきた伝説の大女優リリアン・ホールは、俳優にとって致命的な危機に直面する。
演劇に尽きせぬ情熱を注いできた自分自身と向き合い、「人生のエピローグをいかに生きるか」という選択を迫られていく。 pic.twitter.com/A8To3PpdQR
本作では、チェーホフの『桜の園』が劇中劇として登場します。
『桜の園』のテーマである「栄光の終焉」と、リリアンのキャリアの終幕が重なり合い、物語に深みを与えているわけですが、劇中劇ながら、これもまた本格的なのです。
私は、この劇中劇をスピンオフとして観たくなったほどです。
認知症を題材とした作品では、十朱幸代と千秋実が出演した『花いちもんめ』をご紹介したことがあります。
十朱幸代、『花いちもんめ』で見せた認知症介護の“至福”とは… https://t.co/hT4xtAoUow #認知症
— 無明子 (@shirimochigome) January 29, 2026
こちらは、引退した考古学者が、急激に症状を悪化させて困惑していく中で、夫婦関係もうまくいっていない主婦が、介護と家庭生活を立て直していく話ですが、千秋実は実生活で脳卒中による高次脳機能障害が残る中での熱演でした。
そうした作品に対しては、「自分の親も認知症だが、もっと酷かった」と自分の体験をすべてと思ったり、もっとひどいのは「軽症だから舞台をつとめられたのだろう」と決めつけたりと、本質でない感想が入るのが常です。
が、これは医学ドキュメントではありませんから、認知症そのもののリアリティをとことん追求するというより、困難なことがあっても、今を生きることを諦めない生き様が見どころだと思います。
認知症に限らず、高齢者が突然ライフワークを取り上げられそうになったとき、どんなふうに生きるかを考えさせてくれる作品だと思います。
人生の終盤に来て、自分が、認知症、脳卒中の後遺症、がん、糖尿病の合併症、不慮の事故など不可逆的な困難により、今までの生活で締めくくれなくなるかもしれなくなったらどうでしょう。
諦めるか、なんとか続けようと努力するか、みなさんはどちらですか。
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この記事へのコメント
この映画観てみたいけど
相方興味ないだろうなぁ~DVD出たら借りてみます
花いちもんめはその昔視聴しました
出来ること、やりたいことがやれるように周囲のサポートがあればよいなと思います。
最後までやり遂げる気持ちと周囲の協力があれば
nice!です。
相当に、それまでのその人物にとって、重要な習慣も、「し無くて良い」
と、意外なほどに意識されるようになるとも、聞き及んでおりますし。
かなり名前や言葉を忘れて来ていますから・・・
そんな中でも自分のやるべきことを忘れず、天寿を全うしたいな!と思っています。認知症になったら、きっと忘れるんだろうなぁ~・・・
この映画観たいですね。
ボランテイアで実感しています。形あるものがありますから。
正直なところわからないです。
そうならないことを願っています。
リスクが高いと言われています。
いまから覚悟しています。
認知症になっても、いろんなことを諦めたくはないですよね。
でも、周りに迷惑かな、とか考えてしまうかも。
そうならない生活を心がけたいです。
素晴らしい作品ですね。
去年11月鼠径ヘルニアで手術するのに全身麻酔しました。
12月になってから気づいたのは、健忘症、集中力の低下が
激しくなったことです。
全身麻酔をしたほかの人も同じようなことを言ってました。
もしかしてこのまま認知症になるのではないかと心配です。