父親がネトウヨに転落したディレクターによるドキュメンタリー
NHK「ハートネットTV」で放送された「対岸の父」は、知的で寛容だった父親が、ここ15年ほどの間に差別的・排外的な言動を繰り返すようになった過程を追ったドキュメンタリーです。特筆すべきは、この番組を作った女性ディレクター自身が、自分の父親の変容を題材にしている点です。
かつての父親は、本を愛し、他者に開かれた視野を持ち、多様な生き方を尊重する、今で言う「リベラル」な人物でした。しかし現在は、ネトウヨ系のYouTubeショート動画やSNSの書き込みを鵜呑みにし、マイノリティに対して攻撃的な態度を示すようになっています。
「ネトウヨ」とは何か??単純な学歴・収入問題ではない
今日の情報源です。
「ネトウヨ」になった高齢の父を娘が撮ったハートネットTV『対岸の父』が解散・衆院選決定のタイミングで放送されたのは何かの因果か…
— 大塚大輔 / OTSUKA Daisuke (@amaguribouzu) February 3, 2026
大分でも某政党・無所属候補の演説や集まりを見ると、このお父さんと似た感じの人がやっぱり目立っていて??これもある種の連帯なのか。https://t.co/zzJYsW0TvV
「ネトウヨ」の定義は、以前「ネトウヨとは何だ、これがネトウヨだ」(https://kamibaku.com/article/2018-06-09.html)という記事にまとめたことがあります。
1.とんちんかんでも極論でも、ズバッと言い切ってしまうことでカッコよく受け取られる
2.異論反論疑問者は、反日というレッテルを貼るが、根拠が単純もしくは虚偽
3.基本は排他主義(「強い」ものに憧れ「弱い」ものを唾棄する)
4.判断や根拠が、ネットコンテンツに全面依存で、自力調査や独自の論考はない浅学無責任
要するに、「右」テイストですが、純然たる保守とか右派とはいえない無責任層です。
しかも、重要なのは、ネトウヨ=低学歴・低収入というわけではない点です。
大阪大学・辻大介教授らの調査によれば、ネトウヨには学歴・収入が中程度以上で、家庭を持ち、会社では役職についている人々も含まれているのです。
つまり、階層や知性に関係なく、何らかの価値観に基づき、「知らないことを知るための労力を避ける怠惰な人たち」というのが、私のネトウヨ観です。
だからこそ、文化的な水準が低くなさそうなNHKディレクターの父親が「転落」した経緯は、非常に示唆に富んでいます。
番組内の親子対話ーデータと感情の衝突
番組では、ディレクターである娘が父親と直接対話する場面がありました。
そこで明らかになったのは、父親の主張が、ネット上のありふれたヘイト発言の繰り返しであり、データに基づく娘の指摘に対して、感情的に反発する姿でした。
父:「外国人の犯罪のニュースも結構多いよね。ろくでもないDNAを混ぜない方法が必要だ」
娘:「データでは外国人の数は増えているのに、犯罪検挙者数は減っている」
父:「娘が同性と結婚したいと言ったらみんな悩む。子孫が途絶えるから」
娘:「結婚の目的が必ずしも出産とは限らない」
こうした冷静な反論に対し、父親は「私は、全部あなたの言うことを認めなければいけない? それはおかしいと思うよ。」と過剰反応して、対話は打ち切られてしまいます。
政治学者の秦正樹教授(大阪経済大学)は、この反応を、「他者に攻撃的な言動をしていたのは、動かしがたい現実から逃れるためだった」と分析します。
父親は自論に都合の悪い事実と向き合いたくないか、まともな反論の根拠を持ち合わせていなかったのです。
社会学者の伊藤昌亮教授(成蹊大学)は、こうした人々の心理を、「自分たち(中間層)も大変なのに、弱者・マイノリティ(高齢者、障害者、非課税世帯、生活保護受給者等)ばかりが注目されることへの不満」ではないかと指摘します。
「お前たちがいなければ自分たちが守られるのに」という感情です。
伊藤教授は「そういうことを言う人は、本当に『普通の人』なんですね」と語ります。
しかし、ネトウヨの根本的な誤りはそこにこそあります。
正すべきは、中間層ですら不安を感じる「政治そのもの」であって、保護される「弱者」ではないのです。
父親の「転落」を整理する二つの要因
分かる……「報われなかった」という感情も大きいけど、
— 自来也 (@MSamanNft) February 3, 2026
それ以上に、正しさを突きつけられた瞬間の反発ってすごく生々しいよね。
このディレクターの父親の変容を、私は以下の二点に整理したいと思います。
はけ口としてのスケープゴート化
真面目に道徳的に生きてきたにもかかわらず、現代社会で幸福感を感じられない。その不満や無力感のはけ口として、より弱い立場の者を標的にし、非寛容で攻撃的になってしまった。
「自己愛」による学習機会の拒絶
「子は親に意見すべきでない」「他者からの批判は許さない」といった非合理的な態度を恥じない自己愛が、自分を省みたり、成長する機会を自ら閉ざしてしまっている。
第一の点に対しては、誤解や歪曲に対して事実を提示し続けることが重要です。第二の点については、これはもはや「ダサい」と言わざるを得ません。過度な自己防衛は、かえって成長を阻むのです。
ブログを書くこと、意見を交わすこと
これは実は、ブログを書く私たちにも通じる教訓なのです。
よくブログ記事で、「これは私個人の意見です」と、ことさら断りを入れる人もいます。
いやいや、個人ブログで書く意見なんだから、「個人の意見」なのは当然でしょ。
なのに、あえてそう断るのは、「異論や反論、事実誤認の指摘は一切ご勘弁」という自己防衛にほかなりません。
でもね、不特定多数に向けて発信する以上、様々な反響があるのは当然です。
それが全て、自分に都合の良いものとは限りません。
もちろん、悪意に満ちた論難に、いちいち義理堅く付き合ってやる必要はありませんがね。
自分を守ることに汲々としていないで、もっと相対化された視点を持てれば、気持ちも楽になり、他者からの誠実な指摘も素直に受け止められるようになるのではないでしょうか。
たとえば、自分はしょせん77億人の中の一人の「ザコ」に過ぎない!(だから無謬でも万能でもなくて当然)
と、謙虚に開き直るとか。
何書かれても、ぶったり蹴ったりされるわけじゃないんだからさ、恥を恐れず、自分に対する愚かさの指摘と向き合いましょう。
娘に正論を意見されて逆ギレするオヤジなんて、やっぱりダサいよ。

ネット右翼とは何か (青弓社ライブラリー) - 樋口 直人, 永吉 希久子, 松谷 満, 倉橋 耕平, ファビアン シェーファー, 山口 智美
この記事へのコメント
そんな感じがしました。
ネトサヨ、ネトリベ、とかは、なぜ出てこないのだろう?!
個人的な意見ですがをつけますが
おいらのブログに来られる方、心が広いのか
記事を読んでないのか、ほぼスルーされるので
あまり考えた事ないですが
数年前SSブログで吊し上げを食らった方を知ってるので
各内容には一応気を付けてはいます
nice!です。
60じゃなくて77だったんですね。定量的な議論をするとき、私も意固
地にならないよう、今後は更に注意します!
まったく初耳の言葉です。
読まさせて頂きましたが身についていません (´・ω・`)
世の中の出来事にあまり左右されない、平和な日々
補足ですが、父親が言っている「外国人のDNA」云々は、娘の反論に関係なく、それ自体が現代社会ではヘイト認定されるものです。つまり、議論以前のことです。
それと、記事が問題にしているのは、娘の反論に対して、父親が感情的になって対話を閉ざしたということです。
「統計がおかしいかもしれない」。そう思ったらそういえばいいし、言ったからには自分で汗をかいて根拠を調べること。それによって、いずれにしても新しい答えが出てくるかもしれない。
それをせず、「かもしれない」などという「(自己満足の)可能性」を後生大事にする思考停止こそが、ネトウヨ認定に値する「怠惰」だと書いています。
自分の学のなささに ショックです・・
情報氾濫の世の中。
目を通すだけで精いっぱいです。
あっ、そういう考えの人もいるんだ、
というくらいに思うようにしています。
自分中心に地球が回っていると思っていたの何時だったか忘れました。
今は人の話に耳を傾け、親は子に従えの現在です。
自分的には常に謙虚であれと心に決めています。
で、完全も絶対も無いと自覚しています。
勉強になるテーマを有難うございます。
肝に命じます。
人それぞれ、考え方は違うにきまっているのですが、
自分の意に反する書き込みなどに異常に反応する例は
少なくないですね。。。
と感じられました。
頑固一徹の親父さんですね😢
自分もそうならないようにしたいけど、ちょっと傾いてる所あるかも!と思っています。
やっとインタネット復旧しました。