脳神経細胞の再生と維持に必要な健康法
かつて医療の世界では、脳や脊髄などの神経細胞は一度壊れると再生しないと考えられてきましたが、近年の研究でその常識が覆されています。
最新の知見によると、損傷を免れた既存の神経細胞が、新たな枝を伸ばしてネットワークを繋ぎ直す「スプラウティング(芽吹き)」という現象によって、機能が回復することが明らかになっています。
人生には、交通事故や、火災、水害、さらには脳卒中、心筋梗塞などで、脳が直接損傷を受けたり、酸素不足で神経細胞が壊死したりする不運に遭うことは誰でもありえます。
また、歳を取ると認知症も心配になります。
脳の神経細胞は、いったん死んでしまうと、もとには戻らない、つまり再生されないと言われてきました。
ところが、1998年、フレッド・ゲージ(Fred Gage)らの研究チームが、人間の死後脳の解析により、高齢者であっても、障害者であっても、海馬で新しい神経細胞が生まれていることを確認しました。
神経細胞の再生の仕方は、最新の研究により、単なる細胞の再生ではなく、「既存の残った細胞が適応して機能を補完する」というメカニズムの存在が明らかになりました。
具体的には、失われた神経細胞が再生されるのではなく、存する神経細胞の軸索や樹状突起が新しく枝を伸ばして、脳内のネットワークを再構築するのです。
その現象をもって、脳神経細胞のスプラウティング(sprouting:軸索や樹状突起が新しく枝を伸ばす現象)といいます。
成人の脳でも再生される
情報源は、久々に石黒成治医師の動画です。
19世紀~20世紀前半の神経科学では、「成人の脳はほとんど変化しない」という考えが長く支配的でした。
これが20世紀後半の神経可塑性研究によって覆された、という歴史があります。
カナダの心理学者、Donald Hebbによって、脳のシナプスは変化するという仮説が発表され(1940~60年代)、神経生理学者Eric Kandelは、神経回路が実際に変化することを医学的に裏付けました(1960~70年代)。
さらに、神経科学者Joseph Altmanにより、大人のラットの脳から、成人でも神経細胞が生まれる(1960年代 → 1990年代確立)ことが示唆され、冒頭に書いたように、1998年には人で証明されました。
一般的な健康法が脳の再生にも役立つ
冒頭に書いたように、脳の中途障害は誰にでも起こり得ることなので、これはいい情報には違いありません。
ただし、このスプラウティング(機能の補完)が正常に起こるためには、細胞を取り巻く環境が整っていることが条件といいます。
細胞のエネルギーと健康
新しい枝を伸ばすにはエネルギーが必要なため、生き残った細胞内のミトコンドリア機能が健康に保たれている必要があります。
炎症や酸化ストレスのない環境
神経の周囲に慢性的な炎症や高い酸化ストレスがあると、スプラウティングは阻害されてしまいます。高血糖や、内臓脂肪から分泌される炎症性の物質も脳の修復スイッチをオフにしてしまいます。
生活習慣によるサポート: 神経の修復能力を高めるためには、睡眠中に脳の老廃物を除去すること(グリンパティック系)や、運動によって脳由来神経栄養因子(BDNF)を分泌させること、そして空腹時間を設けて神経の重要エネルギー源となるケトン体を生成しやすくすることなどが非常に重要です。
日常的な健康法が大切
……ということで、様々な健康情報でいわれている、がんや糖尿病対策のための健康法は、そのまま脳の神経細胞再生のリハビリとして役立ちます。
たとえば、運動では、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの「有酸素運動」です。
心拍数が上がる、中等度からやや高強度の有酸素運動(息が少し弾む程度の運動)を、1回20~30分程度、週に数回継続して行うことが、脳内のBDNF分泌を効果的に高めると多くの研究で報告されています。
また、体内の炎症を抑える食べ物として、魚(DHA、EPA)やナッツ類を積極的に摂取、精製糖質を控えめに……、といったことも対策になります。
脳は、水分を除くと重量の約60~65%が脂質(油)で構成されているといわれており、不飽和脂肪酸の摂取は脳の再生に使われます。
脳の脂質バランスを保つことは、脳の老化や認知症の予防にも重要です。
さらには、食事の間隔を長くすること(1日3食を1~2食とする)で空腹が生じると、エネルギーとして体内でケトン体(脂肪が肝臓で分解されて作られる代替エネルギー源)が生成され、神経の修復に必要なエネルギー環境を整えることができるともいわれています。
ケトン体療法は、実際に医療現場において、脳障害の治療に用いられています。
脳の中途障害の人だけでなく、最近脳が衰えてきたのか忘れっぽい、認知症の始まりかもしれない、認知症にならないよう予防したい、と悩んでいる方は、こうした健康法を実践され、他の生活習慣病も併せての予防対策にされてはいかがでしょうか。
ちなみに、私は、「有酸素運動」以外の、ケトン体維持や、不飽和脂肪酸食材を重点的に摂取するといったことなど実践しています。

脳細胞は甦る (祥伝社黄金文庫) - 三石 巌
この記事へのコメント
ずっと続けていると、歩かない日があったりすると体調もちょっと変化したりします。
とは言っても半世紀生きてるおいらの脳は。。。
nice!です。
日々の生活が鍵だというのであれば、ならないように頑張ってみようと思いました。
は、スイッチしてしまいました。MCT替えたら、アマニ油を体
が欲していたのか、気分は良いです。が、そのうち直前した事の
思い出し能力が、また落ちて来たと感じたら、MCT/アマニ油
混合に、それでは、再度切れ替えたいと思います。なお暇なとき
には足を動かし歩行するは、実践中。
もうTake-Zeeの脳細胞はおそらく40%は
減っていると思われます 😂
25歳の頃MRI画像を当時の主治医が初めて見せてくれた。
左の脳が委縮していますね。と言われて、25年~~!
ちょっと興味あるからMRI撮ろうかなあ~^^
いつもお世話になります。
脳ですね。
左脳と右脳ですが。
私は自分で右脳人間と勝手に思っていましたが・・・
左脳人間でした。
記事と外れていて申し訳ありません。
脳を使えば、神経細胞が増えていくと、何かの文献で
読んだことがあります。
ただ、神経細胞が壊れる数は、再生される数を上回る
から、結局は減っていくのでしょうけれど、も。
NICEです
なるほど、ケトン体療法ですか。
試してみよう、自己責任で(^^)
運動不足が課題です。
自分は定年を過ぎて仕事は身体を動かす仕事で、毎日25,000歩ほど動いて
います!
nice!です!!!
それにしても読んでいて嬉しかったのは
有酸素運動を続けることが神経細胞にも
良いというくだりです。
不飽和脂肪酸は摂ると良いと知っていますが
足りてはいないので工夫したいです。
仲間と、江戸東京博物館など都心へのバス旅を計画していますが
そのときに、日本橋の福徳神社へ案内しますが、この神社は
芽吹き稲荷を祀っています、熱心にお祈りしてきます
ネタ拾いに出歩いて、なるべく短く判るように文章をまとめる
出歩くには健康体を・年齢にサバを読んで78歳(本当は90歳6ヶ月)
随分と前に某国営放送が「脳と心」と言う番組を放映していたので視聴していました。
朗報ですね!健康である事が1番の宝