「臓器移植でドナーの記憶が乗り移る」説、本当の話

「臓器移植でドナーの記憶が乗り移る」説、本当の話

臓器移植を受けた人は、ドナーの持ってた趣味や嗜好が似てきたり、ドナーの記憶も受け継いだりするという動画がバズっています。ただし、残念ながら科学的には、「臓器移植でドナーの記憶や人格が移る」という話は確認されていません。

動画の内容は、次のようなものです。


ある男性に、一面識もない女性が、いきなり「結婚してください」と言ってきた。

「俺達、初対面ですよね」

「すみません。ハンカチで手を拭く姿を見て、やるじゃんって思っちゃって」

それは、男性の亡くなった恋人にも言われたことだった。

その女性は、心臓移植の経験があるが、ドナー(臓器提供者)はまさにその亡くなった恋人だった。

……という、ありがちなショートストーリーですが、snsやYouTubeを見ると、「心臓移植でドナーが乗り移る(か?)」というテーマの書き込みや動画が出てくるわ出てくるわ……。

これだけ、医学も科学も発展したこんにちでも、亡くなった人が蘇る、という夢を現代人は捨てたくないんですね。

過日、AIで亡くなった人を蘇らせる記事を書きましたが、あれはしょせん、誰でもAIが作った物とわかります。

しかし、臓器は作り物ではなく、確かに「亡くなったその人のものだった」という点が、今回の違うところです。

「ドナーの記憶が移る」という科学的証拠はない


記事にもなっています。


ただし、冒頭に書いたように、科学的にはそのようなことは証明されていません。

現在の神経科学では、記憶は脳の神経回路に保存されると考えられています。

心臓・肝臓・腎臓などの臓器には、記憶を保存する神経回路、長期記憶を作るシナプス構造などはありません。

ただ、一部の研究報告には、移植患者の約90%が何らかの性格変化を感じたとされています。

ただしこれは、「ドナーの人格が移った」わけではありません。

科学者が考えている主な理由


研究者は、次のような要因を挙げています。

1. 生死を経験した心理変化
移植患者は、長い闘病、生死の境目、新しい人生の実感などを経験することで人生観が変わり、性格が変わったと感じることがあります。

2.免疫抑制薬・薬の影響
移植後には、免疫抑制剤、ステロイド、神経系に影響する薬を大量投与します。

これらは、気分、行動、睡眠、食欲などに影響します。

3.意味づけ(心理効果)
人は、「誰かの臓器をもらった」という事実に強い意味を感じます。

すると、ドナーのことを想像し、自分の変化をドナーと結びつける心理が働きます。

これは心理学でいう確証バイアスの典型例です。

4.体の化学状態の変化
臓器は、ホルモン、代謝、神経伝達物質に影響します。

例えば、腸はセロトニンの多くを作る、心臓・腎臓はホルモンに関係などがあり、体の化学状態が変わることで、趣味や嗜好が変わることはあり得ます。

ただしこれは、「記憶が移る」こととは全く別です。

釈迦仏教も臓器乗り移り説は否定しています


そこまで否定されてしまうと、「科学がそうでも、宗教ならもう少し話がわかるのではないか?」と、思う方もいるかもしれません。

しかし、神道にはそうした教えはなく、キリスト教はとくにカトリックが明確に否定しています。

そして、釈迦仏教も、こうした「乗り移り」の類を明確に否定しています。

釈迦仏教は、科学の唯物論に近い哲学であり、「肉体」と「精神」と「エネルギー」が分かたず一体になったときにのみ、生命は成立すると考えます。

したがって、脳死した肉体から心臓だけを取り出しても、それはもはやただのパーツであり、移植して引き続き動いたとしても、もう元の人とは無関係であるととらえます。

「あの世」ではなく心のなかに生き続ける


結論として、臓器移植によってドナーが「物理的」に乗り移ることはありません。

でも、がっかりしないでください。

それは決して寂しい結論ではないと私は思っています。

亡くなった人は、誰かの体の中で「部品」として生き続けるのではなく、その人を大切に思う人たちの「心」の中で、確実にその人自身の精神として生き続けるからです。

「あの人が好きだったハンカチの使い方」を思い出し、胸が熱くなる。

その瞬間、その人の記憶の中で、間違いなく故人はこの世界に存在しています。

私たちが故人を忘れない限り、故人の「生き様」は、遺った人たちの記憶のバトンによって、静かに受け継がれていく。

霊魂とかオカルトな話ではなくて、精神は滅することはないと思うのです。

そう、思いませんか?

臓器移植の誤解をとく - 吉開 俊一
臓器移植の誤解をとく - 吉開 俊一

この記事へのコメント

2026年03月12日 22:22
そんな動画が盛り上がっているのですか。
肝臓や骨髄移植なら、ドナーは生きてますから、乗り移ったら大変なことになりますね。
2026年03月12日 22:58
確かに、姿かたちは無くなってしまっても、考え方や生き方は思い出としてずっと残っていますね。
2026年03月12日 23:21
テレビで、心臓移植をした人に記憶が乗り移ると見た事が有りますが
臓器にも意思が?と思ってしまいます
2026年03月13日 00:21
いつもお世話になります。
臓器移植ですか?
あり得そうななさそうな話ですね。
人間の想像力の話のように思いますが・・・。
脳だったら或いは変化が???
2026年03月13日 00:32
同じようなテーマの小説も読んだしドラマも観た事があります^^;
あくまでフィクションとして楽しみました。
骨髄移植で血液型が変わることなどから、臓器移植でドナーの記憶が・・という発想になるのかもしれませんね。
亡くなった人は心の中で生き続ける、そう思います。
2026年03月13日 01:03
反復継続されたことによる電気信号を何らかの形ではんしゎするとか夢は広がります
2026年03月13日 01:26
iPS細胞から臓器を作れるようになって、
それを移植したら?
臓器に記憶はないと思うのです。
2026年03月13日 05:16
おはようございます!
nice!です。
2026年03月13日 05:55
よく、映画やドラマで描かれますよね。
私は信じたいな。
pn
2026年03月13日 06:12
殺された人の角膜移植された人が犯人見つけるって小説だかドラマだかあったな。
2026年03月13日 06:50
たしかにあり得ないかも知れないけど、思う気持ちは忘れないでいて欲しい!とは思います。
ミステリアスだけど、ロマンも感じ、あったらいいな!的な気持ちはあります。
2026年03月13日 06:58
故人との接触で生じた記憶が、残された者にとって
もともと意味が有れば、そう簡単には消えませんね。
「心臓移植で」は、ありそうな話で、今回の記事は、
興味深かったです。
2026年03月13日 07:45
おはようございます❗
臓器移植・・・難しい問題を含んでいると思います❗
2026年03月13日 08:03
心の中に生き続ける。思い出大切にしています。
2026年03月13日 08:08
科学には証明できない。まああると思いますよ^^
だって!ニコは臓器ではないけど、ドクターに一生歩けないと言われた。
それでも自主トレーニングで歩けるようになった。
臓器にも魂?思い?があると思います。
2026年03月13日 09:32
興味深い話ですね。 勉強になりました。
2026年03月13日 12:24
みなさん、コメントありがとうございます。

>芋の芯さん
>2026年03月12日 22:22
>肝臓や骨髄移植なら、ドナーは生きてますから、乗り移ったら大変なことになりますね。

おっしゃるとおりです。
もしそんなことが本当にあったら、乗り移られた人は、乗り移った人に人格の一部を乗っ取られることになります。
そんなことが「あってほしい」と信じるのは、乗り移られる人に気の毒ではないでしょうか。
その葛藤を描いたのが、「妻、小学生になる。」という漫画です。
1度レビュー記事書きましたが、また紹介しましょうかね。
2026年03月13日 13:28
んん--難しいけど 解明できない何かがあっても おかしくないのでは??
と、、思うので  あり得るかも・・・
2026年03月13日 14:35
科学的に根拠がなくても
不思議なことは起こるものなのですね。
2026年03月13日 15:52
ドラマチックな感じですね。
2026年03月13日 16:58
「臓器移植でドナーの記憶が乗り移る」説、ドナーの立場だったら、そうありたいと少しだけ思いました。ブログ箱庭「カワウさんが獲物を獲りました」においで頂き、ありがとうございました。この後どうなったのか見なかったのが残念です。
2026年03月13日 17:04
ウイルスや細菌が免疫により複雑な絡みが生じて細胞に作用して趣味嗜好が生まれると想像します。
2026年03月13日 18:32
まだまだ人間には分からないことがたくさんあると思います💕
2026年03月13日 21:06
いつもわがブログにご訪問いただきまして、ありがとうございます!
ドナーの記憶がうつるってのは本当にあるんでしょうか?
nice!です!!!
2026年03月13日 21:46
無いでしょうね。
2026年03月13日 21:56
臓器移植・考えた事もないけれど心臓を頂いて延命し
人格が変わる・・・何となく怖くて望まないです。