その「先祖論」、本当に一貫していますか?姓をめぐる違和感について

その「先祖論」、本当に一貫していますか?姓をめぐる違和感について

3日前、私が姓の「読み」を変えたという「改姓」の経験を書いたところ、こんなコメントをいただきました。「姓のお話。それは重いですね。ご先祖様にかかわりますから。」。今日はそのことについて、コメントのコメントになりますが、長くなるので記事としてまとめさせていただきました。


まず、私はブログで「改姓」と書きましたが、「読み」だけで字はそのままですから、「重い」だの「ご先祖様云々」だのというのは、さすがに大げさすぎると思います

そもそも、日本では、人名の「読み方」に法的な拘束はありません。つまり、ありていにいえば「何と呼ぶことにしてもいい」のです。


たとえば、現役最古参のプロレスラー・グレート小鹿(北海道出身)は、「こしか」と読むそうですが、東京に来てからは、公私とも「こじか」と呼ばれているそうです。

それに対して、「ご先祖様に関わる」などという話は、「こじか」さんご本人から未だかつて聞いたことありまっせん。

21世紀の東京でそんなこと言ってたら、「よほど高貴な家柄なんでしょうな」と皮肉られるのが関の山です。

ということで、本来はそれで終わってしまう程度の話なんですが、ただ、姓とはなんだろうということを考えるきっかけになるテーマだと思うので、今日は姓について考えてみたいと思います。

姓が「先祖の連なり」になったのは最近のこと


日本では昔から、

「姓=家の歴史」
「自分は先祖の連なり(=姓の連なり)の中にいる存在」

という刷り込みが、ごく自然に行われてきました。

だから、「姓を変えるのは軽いことではない

と感じるのかもしれません。

しかし、江戸時代から家制度だった貴族や士族ならともかく、大多数の「農・工・商」の階層にとって、法律で姓をつけることが定められたのは、150年前、つまり、私たちのせいぜい祖父母か、曽祖父母世代になってからのことなのです。

それまでは通称として、農民は「家名(いえな)」、工・商は「屋号」を使っていました。

「源七家」「庄兵衛家」「大屋」「小屋」「近江屋」「伊勢屋」みたいな感じです。

そもそも、江戸時代以前は、「家族」という意識は薄く、絆はイエやムラ、親族などの共同体が提供するものだったといいます

ですから、特定の「ご先祖」崇拝は、少なくとも家制度以降の発想ですから、そういう発想は江戸時代以前はなかったということです。

「ご先祖様」なんていう言い方自体が、最近のことだということです。「歴史」といえるほどのものかどうか……。

一方、家制度であった士族にしても、代々続いた姓を、婿養子に入ることで「終了」することはめずらしくありませんでした。

以前、写真でご紹介した私の曽祖父は、伊達藩(宮城県全域、岩手県一関周辺、福島県浜通り)の筆頭家臣傍系でしたが、家督相続者ではなかったため、福島の庄屋に婿養子に入りました。

高祖父もやはり伊達藩のおサムライさんでしたが、婿養子に入りました。

士族は今で言う公務員ですから、生産手段を持たない無産階級なので、分家されず家督を相続できなければ、資産家の婿養子になるしか生きる道はなかったのです。

では、「姓を捨てた」私の曽祖父や高祖父は、責められるべきなのでしょうか?

だいたい、そんな事を言ったら、現在の日本は、婚姻に伴う改姓の約97%が女性側だと言われています。

もし改姓がそれほど重大なものであるなら、既婚女性のほとんどは、「先祖に関わる」ことをやらかしたことになります

かといって、自分の妻には夫婦別姓は認めたくないというわがまま(笑)

要するにそこには、論理や法律というよりも、「そうあるべきだ」という、無理屈の前提が潜んでいるように思えてなりません

女は結婚して改姓しても仕方ない。男は万世一系の姓を守るべし、という合理性のない前提です。

「先祖に関わる」とはどういうことか


姓を変えたときに起きるのは、

・戸籍上の表記が変わる
・社会的な呼び名が変わる

という事実です。

一方で、姓を変えようが

・先祖との血縁が変わるわけではない
・先祖の存在が消えるわけでもない

という事実もあります。

むしろ、先祖との関係の実質的な価値は、後者にこそあるのではないでしょうか

私の人生はむしろ、ひとさま以上に「先祖」を意識し続けてきたかもしれません。

私より年配のイトコたちが知らんぷりしていても、私は一面識もない父方祖父の年忌法要(23~50回忌まで)は、やはり一面識もないどころか血縁関係すらない私の母と2人きりで行ってきました。

取れる戸籍謄本はすべて取得し、家系図まで作って所持しているのは、やはり親族では私一人だけだと思います。

ですから、わたしは実践的に、先祖を受け止めて生きてきたという自負があります。

一方、先祖の姓を名乗っているイトコたちは、な~んにもしていません。自分の曽祖父の名前も知らないんじゃないかな。

姓さえ継げば先祖孝行である、ということに合理性などないことがわかるでしょう。

姓(名前)は誰のためのものなのか


そもそも、姓は、先祖のためのものでしょうか。

私は、姓は、自分の人生を前に進めるためのものだと考えています。

必要、そして可能なら、改姓して何が悪いのでしょうか。

ですから、夫婦別姓制度は、再三書いているように、ご先祖の姓を守るだのハチノアタマだのという非合理で封建的な理由なら反対、自分の人生のための姓は自由であるべきという理由なら賛成します

昨年から、戸籍にも読み仮名が入るようになったため、私のように「読み」だけを「改姓」できるケースはもうないと思いますが、夫婦別姓など、姓についての議論は、これからも行われることでしょう。

みなさんも、ご自身のお考えを決めておられると、世の中の出来事や法制度についての理解がしやすくなるのではないかと思います。

姓を変えることはいかが思われますか?

お名前シリーズ 2 鈴木さんの本 あなたの歴史がここにある 姓氏研究会編 実業之日本社発行 昭和51年 検:祖先 系譜 家紋 姓名判断開運指針
お名前シリーズ 2 鈴木さんの本 あなたの歴史がここにある 姓氏研究会編 実業之日本社発行 昭和51年 検:祖先 系譜 家紋 姓名判断開運指針

この記事へのコメント

2026年04月07日 22:31
仏教の立場から申せば、血縁も名も「縁起」によって仮に立つもの。姓氏が変わっても先祖とのつながりが失われるわけではありません。むしろ、どう受け止め、どう生きるかにこそ功徳が宿るのだと感じました。
2026年04月07日 22:43
「猪木」を「いのき」と読ませるのも当て字的ですしね。
キラキラネーム制限で、「かな」が法制化された2025年こそが、今の姓制度の出発点だと思います。
2026年04月08日 00:05
お邪魔しました
2026年04月08日 00:14
江戸時代は、名字帯刀が許されたのは武家ですからね。
わたしが生まれ育った田舎町では、子どもの頃、
名字ではなく、屋号で呼んでいました。
2026年04月08日 00:47
偉い人から今日から何々と名乗れといわれて改姓というのは本で目にしますよね
2026年04月08日 01:49
結婚して、姓が変わりましたけど、それが嫌とかそう言う事はありませんでした。
結婚前の姓は、父親の実家に行くと、回りは全て同じ姓の方ばかりでした。
2026年04月08日 01:59
姓は自由であるべきだと思っています。
また、夫婦別姓が「家族の一体感」を損なうとは思えません。
2026年04月08日 06:30
奥さんの姓の方が、日本史研究上価値が高い場合は、私は別姓
大賛成派です。アイドル歌手さんに「比企能員の因果で、体調
不良になり、鶴岡八幡宮の類の神社参りをしたら治った」と
宣伝されている方がおいでですが。結婚しても芸名位は残して
そんな宣伝したのは、日本史の啓蒙としても、良い行為だと私
は思います。
2026年04月08日 07:44
取り上げていただきありがとうございます。
2026年04月08日 08:10
友人も、占いで名前が良くないと言われ通称を変えていました。でもお風呂で溺死されました。関係ないでしょうけどね。
2026年04月08日 08:27
私は姓には全然こだわってないので、最初夫の姓を名乗りましたが、読み難い漢字だと間違えられて呼ばれるのが嫌でした。結婚前にもう自分の家で仕事していた事もあり、電話もとても不便だったのです。子供が生まれるのがきっかけで、夫の方に替えて貰いました。夫は家の姓になってもずっと旧姓に拘っていますけど、さすがに37年経つと少し家の姓に馴染んで来たようです。(笑)
読み方でも変えても、重くないし、先祖に問題はないと思いますよ。
pn
2026年04月08日 08:44
血の繋がりだの姓だの家柄だの、血縁者でも信用出来ない人は逆立ちしても信用出来ないんだよ、たとえ親であっても。
2026年04月08日 08:53
昔の人は  良く考えたものですが  結婚して姓も代わったので・・・
何も  考えず  昔に並んで・・・です
2026年04月08日 10:21
姓についてあまりこだわりはないです。
夫婦別姓は賛成派です。
2026年04月08日 10:22
拝見しました。
NICEです
考えたこともなかったので、いいきっかけになりました。
ありがとうございます。
2026年04月08日 12:02
私も嫁ぎ先の名字がなじめず、元の姓に拘っていましたが
いつの間にか改名後の名字に違和感なく署名をしています。
2026年04月08日 13:05
私も濁点がつく苗字なのですが、名前を呼ばれるときは清音で呼ばれます。もう、なれっこになっています。
2026年04月08日 15:11
庶民が姓を名乗るようになって年月は浅く、
自分で適当に名乗ったり、近所一帯、皆同じ姓だったり、
結構いい加減だったみたいですね。
姓に愛着を抱く人、こだわらぬ人、皆、それぞれ。
2026年04月08日 15:31
ナイスです!!
結婚して役所に結婚届を出しに行くときに、
妻の姓を名乗ろうと家を出ました。
役所の窓口で出した書類は自分の姓で出し、
いまだに「騙された」と妻から言われています。
2026年04月08日 16:04

結婚して姓を変えるか?変えないかは自由に選択できれば良いと思います。
2026年04月08日 16:38
友達に姓名判断で変えた方がいました。
「色んな人がいるんだ」その時はそう思った位で拘りないですね。
2026年04月08日 17:10
こんにちは
いつも有難うございます。
知りませんでした。
変えられるものなら変えたかったです。
koh925
2026年04月08日 17:11
ご先祖様も、わたしのような普通の家系では
3代以上前は分かりません、子供たちにもしばりつけしていません
bgatapapa
2026年04月08日 17:11
niceどすえ~(^^)
2026年04月08日 17:19
韓国では、結婚しても女性の姓は変わらないと聞いたことがあります。国により違いがあると知った時は、驚きました。ブログ箱庭「怖かった話」においで頂き、ありがとうございました。患者がどれほど怖がっているか、先生は知らないのでしょう。
2026年04月08日 21:26
ご無沙汰しております。
ナイスですw