「かかと上げ・落とし」のエビデンスについて
一昨日の「かかと上げ・落とし」の記事で、「かかと上げで骨密度は上がらない」と決めつけるコメントがあったのですが、それはこんにちの老年医学で確立されて知見に反する見解なので、エビデンスがどうなっているかを追加情報としてお伝えします。
一昨日の記事です。
かかと上げ・落とし、本当の話 https://t.co/nxSw3P4VqP
— 無明子 (@shirimochigome) April 22, 2026
かかとを上げることで、ふくらはぎに刺激を与えて血流を改善し、ストンと落とす際に骨に衝撃を与えることで骨密度を高め、全身の代謝や自律神経、さらには血管の若返りまで促進する画期的なメソッドとして、それを採り上げたサイトやYouTube動画が増えています。
結論から書くと、それらには医学的根拠があり、たとえば「かかと落とし」は、査読付き論文と言って、他の研究者のチェックを通った、「現時点でもっとも信用できる学術論文」があります。
「Weight-bearing exercise and ground reaction forces: a randomized controlled trial」という、1995年に英国の生理学者E.J. Bassey教授らが学術誌『Bone』に発表した研究報告は、閉経後の女性を対象に、体重負荷運動が骨密度に及ぼす影響を定量化し、地面反力(ground reaction force)の強度と骨形成の関連を検証しています。
Bassey教授らの研究をはじめ、骨への垂直方向の衝撃(インパクト)が骨密度に及ぼす影響は、老年医学やスポーツ科学の分野ですでに確立されている知見です。
つまり、かかとをストンと落とす運動が、骨密度に有意に影響を与えることは、信用できる医学的な報告です。
「骨密度が上がらない」という誤解の正体
コメントをされた方は、おそらく以下の2点を混同されている可能性があります。
「最大骨量」と「骨量維持」の混同
この運動で、成長期の子どものように、プロアスリート然とした強固な骨へ変貌するわけではありません。しかし、加齢による「順当な」骨密度の低下を食い止め、微増あるいは維持させることは、立派な「骨密度向上(または改善)」です。
強度の誤解
「かかとを落とす程度の軽い衝撃で変わるはずがない」という直感的な否定です。体を変えるには、相応の激しい運動をしなければならないだろうという先入観です。しかし、骨細胞は「強い衝撃」よりも「日常的ではない加速度のついた衝撃」に反応しやすいため、自重によるかかと落としは非常に効率的な刺激になるというのは、先の論文等で考察されています。
たとえば、Harold M. Frost(1997、1990等)は、メカノスタット理論といって、骨には「一定以上の負荷がかかると骨を作り、負荷がないと骨を壊す」という閾値を見出しました。
それによると、骨は「力の大きさ」ではなく、ひずみ(strain)=変形量を感知する、しかも「一定の閾値を超えたときだけ反応する」としています。
つまり、かかとを落とす「ストン」程度の力こそが、回数や頻度を重ねることで、ある時骨密度の向上という結果が現れるということです。
哲学では、こうした現象を「量的変化から質的変化へ」といいます。
たとえば、水を加温すると、だんだん高温のお湯になりますが、液体であることはかわりありません。ところがそれが100度になったとき、お湯は沸騰して気体になります。液体から気体に性質が変わります。
かかと落としも、「ストン」の積み重ねが一定のレベルにきたときに、骨密度が上がると報告しているわけです。
また、近年の研究では、骨に衝撃を与えると、骨形成を阻害する物質「スクレロスチン」が減少し、骨を作るスイッチが入ることが分子レベルで解明されています。(Robling et al., 2008(J Biol Chem))
さらに、記事に貼った動画でも紹介していますが、徳島大学などの研究グループも、閉経後の女性などを対象にかかと落としの有効性を検証しており、骨代謝マーカーの改善を確認しています。
Bassey教授や徳島大学が、閉経後の女性を対象としているのは、閉経後の女性は、一生のうちで最も急激に骨密度が低下する「骨の危機的状況」に直面するからです。
つまり、かかと落としは、人間の肉体の切実な課題から生じた研究であり、エセ施術家やYouTuberが、受け狙いででっち上げた「民間療法」ではないということです。
「ストン」の健康効果への期待は決して信用ならないものではない
このことを通じて、私がいいたいことは2点あります。
ひとつは、YouTubeの動画を含めて巷間の健康情報は、何の疑いもなく真に受けることも、逆に体験談や思い込みでアタマから否定することも、慎むべき態度だということです。
もうひとつは、科学的知見(再現性・統計・査読等の客観性)と、個人的主観(体験談や価値判断など)を、ごちゃまぜにしないこと。
「自分に効いた(効かない) → みんなに効く(効かない)」
「ある一例 → 一般法則」
「なんとなくそう思う(そう思えない) → 因果関係がある(全否定する)」など、
個人の体験をただちに一般化した結論にするのではなく、データや再現性が必要です。
これは、このことだけではないんです。
たとえば、「自分は幽霊を見た」という体験をもって、ただちに「幽霊は存在する」とはなりません。
見間違いかもしれないし、誰かに騙されているのかもしれません。
それをすっとばして、安易に結論づけるメンタリティが、霊感商法やカルト教団に騙される素地となるのです。
そこで、本当かどうかを調べるのが学問の役割です。
私は、科学者や医学者ではありませんが、研究者の努力と情熱が詰まった「研究結果」というバトンは、正しく読者の皆様にお渡ししたいと考えております。
ということで、「ストン」の健康効果への期待は、決して信用ならないものではありませんから、骨密度がご心配のみなさん、特に女性は立位の機会に、5回、10回と積み重ねられてはいかがでしょうか。

10秒かかと上げで足裏の痛みが消える! 足底筋膜炎 モートン病 - 冨澤 敏夫
この記事へのコメント
自分や、せいぜいその周囲1~数名の同意をもって、「みんながそう思っている」とか大げさに言うw
nice!です。
いう状態を続けるという行為を避けるように、これからも私は
心がけます。刺激が無いと、その部分の組織の更新は不要と、
脳みそは誤解してしまうという事のようですね。
モモちゃんも歳を取りました。視力も落ちてます。
というのがあったのですね
PCが不調で訪問が遅れてすみません 😂
W11のパソコン、しばらく入院します。
当面はW10の古いパソコンでの運用になります。
安易な結論付けは危険、一度立ち止まってしっかり考えねばなりませんね。
ネットでの情報は受け入れ側が自己の責任で対処したいです。
いつも有難うございます。
大変勉強になりました。
脹脛の血行を良くする。
骨密度を高める。
効果あると思います。
自分も勉強になりました!
ありがとうございます!!!
nice!です!!!
今朝、アナウンサーの有働さんが出ている番組で
つま先立ちで階段を上るといいと言っていました。
ヒラメ筋が鍛えられて血流がアップするとか。
バス待ち時間、暇持て余し時、骨を鍛えよう!!
効果云々よりも、やったという実感があるので
破骨細胞に負けない様、日々頑張ってやってみます。
家の中で動いていると、あまりそれがないので、なるほど~それで弱ってきたのかと実感、以来意識してますが、そんなに回数はやっておりません。時々、すっかり忘れちゃうし。
ポイントを詳しく解説していただいたので、励みになります^^