「かかと上げ・落とし」のエビデンスについて

「かかと上げ・落とし」のエビデンスについて

一昨日の「かかと上げ・落とし」の記事で、「かかと上げで骨密度は上がらない」と決めつけるコメントがあったのですが、それはこんにちの老年医学で確立されて知見に反する見解なので、エビデンスがどうなっているかを追加情報としてお伝えします。

一昨日の記事です。


かかとを上げることで、ふくらはぎに刺激を与えて血流を改善し、ストンと落とす際に骨に衝撃を与えることで骨密度を高め全身の代謝や自律神経、さらには血管の若返りまで促進する画期的なメソッドとして、それを採り上げたサイトやYouTube動画が増えています。

結論から書くと、それらには医学的根拠があり、たとえば「かかと落とし」は、査読付き論文と言って、他の研究者のチェックを通った、「現時点でもっとも信用できる学術論文」があります。

Weight-bearing exercise and ground reaction forces: a randomized controlled trial」という、1995年に英国の生理学者E.J. Bassey教授らが学術誌『Bone』に発表した研究報告は、閉経後の女性を対象に、体重負荷運動が骨密度に及ぼす影響を定量化し、地面反力(ground reaction force)の強度と骨形成の関連を検証しています。

Bassey教授らの研究をはじめ、骨への垂直方向の衝撃(インパクト)が骨密度に及ぼす影響は、老年医学やスポーツ科学の分野ですでに確立されている知見です。

つまり、かかとをストンと落とす運動が、骨密度に有意に影響を与えることは、信用できる医学的な報告です。

「骨密度が上がらない」という誤解の正体


コメントをされた方は、おそらく以下の2点を混同されている可能性があります。

「最大骨量」と「骨量維持」の混同
この運動で、成長期の子どものように、プロアスリート然とした強固な骨へ変貌するわけではありません。しかし、加齢による「順当な」骨密度の低下を食い止め、微増あるいは維持させることは、立派な「骨密度向上(または改善)」です。

強度の誤解
「かかとを落とす程度の軽い衝撃で変わるはずがない」という直感的な否定です。体を変えるには、相応の激しい運動をしなければならないだろうという先入観です。しかし、骨細胞は「強い衝撃」よりも「日常的ではない加速度のついた衝撃」に反応しやすいため、自重によるかかと落としは非常に効率的な刺激になるというのは、先の論文等で考察されています。

たとえば、Harold M. Frost(1997、1990等)は、メカノスタット理論といって、骨には「一定以上の負荷がかかると骨を作り、負荷がないと骨を壊す」という閾値を見出しました。

それによると、骨は「力の大きさ」ではなく、ひずみ(strain)=変形量を感知する、しかも「一定の閾値を超えたときだけ反応する」としています。

つまり、かかとを落とす「ストン」程度の力こそが、回数や頻度を重ねることで、ある時骨密度の向上という結果が現れるということです。

哲学では、こうした現象を「量的変化から質的変化へ」といいます。

たとえば、水を加温すると、だんだん高温のお湯になりますが、液体であることはかわりありません。ところがそれが100度になったとき、お湯は沸騰して気体になります。液体から気体に性質が変わります。

かかと落としも、「ストン」の積み重ねが一定のレベルにきたときに、骨密度が上がると報告しているわけです。

また、近年の研究では、骨に衝撃を与えると、骨形成を阻害する物質「スクレロスチン」が減少し、骨を作るスイッチが入ることが分子レベルで解明されています。(Robling et al., 2008(J Biol Chem))

さらに、記事に貼った動画でも紹介していますが、徳島大学などの研究グループも、閉経後の女性などを対象にかかと落としの有効性を検証しており、骨代謝マーカーの改善を確認しています。

Bassey教授や徳島大学が、閉経後の女性を対象としているのは、閉経後の女性は、一生のうちで最も急激に骨密度が低下する「骨の危機的状況」に直面するからです

つまり、かかと落としは、人間の肉体の切実な課題から生じた研究であり、エセ施術家やYouTuberが、受け狙いででっち上げた「民間療法」ではないということです。

「ストン」の健康効果への期待は決して信用ならないものではない


このことを通じて、私がいいたいことは2点あります。

ひとつは、YouTubeの動画を含めて巷間の健康情報は、何の疑いもなく真に受けることも、逆に体験談や思い込みでアタマから否定することも、慎むべき態度だということです

もうひとつは、科学的知見(再現性・統計・査読等の客観性)と、個人的主観(体験談や価値判断など)を、ごちゃまぜにしないこと。

「自分に効いた(効かない) → みんなに効く(効かない)」
「ある一例 → 一般法則」
「なんとなくそう思う(そう思えない) → 因果関係がある(全否定する)」など、

個人の体験をただちに一般化した結論にするのではなく、データや再現性が必要です。

これは、このことだけではないんです。

たとえば、「自分は幽霊を見た」という体験をもって、ただちに「幽霊は存在する」とはなりません。

見間違いかもしれないし、誰かに騙されているのかもしれません。

それをすっとばして、安易に結論づけるメンタリティが、霊感商法やカルト教団に騙される素地となるのです。

そこで、本当かどうかを調べるのが学問の役割です。

私は、科学者や医学者ではありませんが、研究者の努力と情熱が詰まった「研究結果」というバトンは、正しく読者の皆様にお渡ししたいと考えております。

ということで、「ストン」の健康効果への期待は、決して信用ならないものではありませんから、骨密度がご心配のみなさん、特に女性は立位の機会に、5回、10回と積み重ねられてはいかがでしょうか。

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この記事へのコメント

kinoppe
2026年04月24日 00:25
「かかと落としの話」とは違いますが、一般化厨はいます。
自分や、せいぜいその周囲1~数名の同意をもって、「みんながそう思っている」とか大げさに言うw
2026年04月24日 03:52
勉強になりました^^
2026年04月24日 05:12
おはようございます!
nice!です。
pn
2026年04月24日 06:14
「ストン」くらいの衝撃の方がなんか説得力あると思うんだがなぁ、上げ下げしかしなかった男としては(^_^;)
2026年04月24日 06:48
本来、動物として受けるべき身体運動刺激は、長い期間無いと
いう状態を続けるという行為を避けるように、これからも私は
心がけます。刺激が無いと、その部分の組織の更新は不要と、
脳みそは誤解してしまうという事のようですね。
2026年04月24日 06:57
私も冬の間は体操の一環としてやっていたのですが、畑が始まるとどうしても時間が無くなり気忙しくなり、やらなくなります。骨粗鬆症なので、時間がある時やりたいと思います。
2026年04月24日 07:15
勉強になりました。
2026年04月24日 07:50
はい昨日は物語的でした。
モモちゃんも歳を取りました。視力も落ちてます。
2026年04月24日 08:27
かかと上げ・落とし

というのがあったのですね
2026年04月24日 11:23
こんにちは(^_-)-☆
PCが不調で訪問が遅れてすみません 😂

W11のパソコン、しばらく入院します。
当面はW10の古いパソコンでの運用になります。
2026年04月24日 11:51
閉経後の女性は急激に骨密度が低下する、これは身をもって体験しております。かかと上げ・落しは意識して続けてみたいと思います。
安易な結論付けは危険、一度立ち止まってしっかり考えねばなりませんね。
2026年04月24日 15:31
健康に良い情報として、実践したいとおぼえます。
ネットでの情報は受け入れ側が自己の責任で対処したいです。
2026年04月24日 16:07
あの日はやったのですが、すぐ忘れてしまう。またやってみようと思います。
bgatapapa
2026年04月24日 16:19
niceどすえ~(^^)
2026年04月24日 17:40
バス停でバスを待っている女性が、かかと上げ・落としをしていました。それから、足を振る運動もやっていました。市民権を持っている運動なんですね。ブログ箱庭「気になる事」においで頂き、ありがとうございました。
2026年04月24日 17:46
かかと落としはエビデンスがあるようですね。
2026年04月24日 17:47
こんにちは。
いつも有難うございます。
大変勉強になりました。
脹脛の血行を良くする。
骨密度を高める。
効果あると思います。
2026年04月24日 21:44
いつもわがブログにご訪問いただきまして、ありがとうございます!
自分も勉強になりました!
ありがとうございます!!!
nice!です!!!
2026年04月24日 22:25
骨活にはかかと上げが効果的みたいですね。
今朝、アナウンサーの有働さんが出ている番組で
つま先立ちで階段を上るといいと言っていました。
ヒラメ筋が鍛えられて血流がアップするとか。
2026年04月24日 22:51
お金もかからず少しの暇にもできる技
バス待ち時間、暇持て余し時、骨を鍛えよう!!
2026年04月24日 22:59
おいら、踵上げから始まり、今は縄跳びやってます
効果云々よりも、やったという実感があるので
2026年04月24日 23:36
段差の大きい所だと大変なので、まずは低い段差の所から始めました^^
破骨細胞に負けない様、日々頑張ってやってみます。
2026年04月25日 21:51
かかとの上げ下ろしが効果的、というか、それがないと、骨に影響があると何年か前にどこかで聞きました。
家の中で動いていると、あまりそれがないので、なるほど~それで弱ってきたのかと実感、以来意識してますが、そんなに回数はやっておりません。時々、すっかり忘れちゃうし。
ポイントを詳しく解説していただいたので、励みになります^^