ガバメントクラウド移行の実態、本当の話
ガバメントクラウド移行が話題になっています。国や地方自治体が個別に構築・運用してきた行政システムを、政府が共通で利用するために用意した、セキュアなクラウド基盤へ移し替える取り組みのことです。コスト削減とデータ共有化のメリットがあるといいますが、課題も浮き彫りになっています。
ガバメントクラウドとは、国の行政機関や地方公共団体が利用する、共通のクラウド利用基盤です。
この改革の狙いは、自治体ごとにバラバラだった個別開発・個別運用を減らし、制度改正対応や保守の負担を軽くして、職員が住民サービスや企画立案により時間を使えるようにすることです。
あわせて、オンライン申請やデータ連携を、全国に広げるための共通基盤としての役割も期待されています。
特に自治体では、住民基本台帳や税、福祉、介護保険など20の基幹業務を「標準準拠システム」にそろえ、その受け皿としてガバメントクラウドを使う、というのが政策の中核です。
ガバメントクラウドの導入は、政府や各府省庁では先行して稼働が進んでいますが、自治体においては移行期限が到来する中、約4割の自治体が期限内(2026年3月)にすべてのシステムを移行しきれないなど、本格的な運用と定着に向けて課題を抱えながら進んでいる段階です。
「安くなる」はずが「コスト1.8倍」の衝撃
この移行で、国民や自治体が最も楽しみにしていたのは「コスト削減」でした。
しかし、ふたを開けてみると、まったく逆の事態が起きています。
総務省(国のお役所の一つ)の試算によると、移行が終わった直後の運用費用は、今までの約1,400億円から約2,500億円へ、なんと約1.8倍に跳ね上がる見通しです。
さらに、中核市(比較的大きな市)の調査では、自治体によっては平均で2.3倍、最大で5.7倍ものコスト増になるところもあると報告されています。
なぜこんなに高くなったのか。標準仕様の要件数が平均で1.2倍、一部業務では3倍以上にまで膨れ上がったことで、開発・保守費用が当初の想定を遥かに超えてしまったのです。
これに加えて、ガバメントクラウド専用の回線費や、現行と新システムの「二重の基盤管理費」といった追加負担が、期待されたクラウドの低減効果を完全に打ち消しています。
想像を超えた「ネットワークとデータ移行」の泥臭い課題
クラウド移行は、決して「データの引っ越し」のような綺麗な作業ではありません。
先行事業の現場では、従来のオンプレミスの常識が通用しない技術的トラブルが噴出しています。
データ移行の壁
従来使っていた「Oracle(オラクル)」というデータベースから、新しい「PostgreSQL(ポストグレスキューエル)」というデータベースに切り替える際、処理速度の違いが原因で、システムの動きが変わってしまうケースが報告されています。
また、写真や書類の画像データ(BLOBデータ)を大量に移そうとすると、転送にものすごく時間がかかり、業務が滞ることもあります。
ネットワークのトラブルも山積み
自治体ごとに使っているIPアドレス(インターネット上の住所のようなもの)が重複してしまったり、通信速度が想定より遅くなったり、回線のメンテナンス時に調整が複雑すぎたりと、設計の段階では気づきにくい問題が、次々と表面化しています。
こうした問題は「クラウド接続設計」というまったく新しい専門知識が必要な分野です。
特に、専門の技術者が少ない小さな自治体では、外部の業者に頼らざるを得ず、かえって依存度が高まるという皮肉な結果を招いています。
セキュリティは「クラウドに乗せればOK」ではない
マイナンバー
— みいみい (@cmt_hl) 2026年6月22日
医療データ
ガバメントクラウド
Palantir
便利さの裏にある安全保障リスクを
神谷宗幣議員が国会で問題提起#個人情報保護 https://t.co/NGgyLMEXRq pic.twitter.com/i9XB75lAEc
「ガバメントクラウドが米国企業依存になっている」——正しい。
— 昼間たかし|ルポライター・デジタル主権 (@quadrumviro) June 22, 2026
ところが、神谷の処方箋は「国産でやるべき」「さくらインターネットを育てろ」で完結する。
問題はそこではない。国産かどうかではなくCLOUD…
ガバメントクラウドの大きな魅力の一つはセキュリティ(情報漏えい対策)の強化です。
しかし、ここにも誤解があります。
例えば、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)という大手クラウド会社が提供する「GuardDuty Malware Protection」というサービスは、ウイルスを見つける能力はとても高いのですが、見つけたウイルスを「駆除」する機能はありません。
つまり、従来使っていたウイルス対策ソフトを完全に置き換えられるわけではなく、
「監視」「対処」「誰が何をするか」という役割分担を改めて決め、運用の仕組みを一から見直す必要があるのです。
「クラウドに移せばすべて安心」という考え方は、現場に新たな弱点(脆弱性)を生む危険性があります。
移行の「完了」は、本当の始まりに過ぎない
今起きているガバメントクラウド移行の混乱は、行政のデジタル化が進むうえでの「どうしても避けられない痛み」 かもしれません。
しかし、2025年度末(2026年3月)という移行期限を過ぎたあと、このプロジェクトが本当に住民の役に立つものになるためには、次の4つのことが欠かせません。
クラウド最適化
移行後のシステムを、クラウドネイティブな構成へと段階的に磨き上げること。
ベンダー競争の回復
共通基盤の利点を活かし、特定のベンダーに縛られない市場環境を再構築すること。
二重運用の早期解消
移行期間の並行稼働コストを最短でカットすること。
負担の吸収
自治体に生じている増大したコストや運用負荷を、財政・運用の両面から国が適切に吸収・支援すること。
移行の完了はゴールではありません。私たちは今、この巨大なデジタル基盤をいかに血の通った「住民サービス」へと昇華させられるかという、本質的な問いのスタートラインに立っているのです。

こうすればうまく進む 自治体システム標準化&ガバメントクラウド - 三木浩平, 吉本明平への移行、ご存知でしたか。
この記事へのコメント
結局コスト増なのになるのはこの国の官僚の常套手段ですよね
逆に根こそぎダメになってしまうという心配はないのでしょうか。
30年前新築した時ソーラーを付けてオール電化にすると電気代が安くなるというのでやりましたが、今はそれが仇となっています。ソーラーを付けたために屋根雪が落ちなく、その部分に雨漏り発生。冬は発電しないでソーラー付けた分マイナス。おまけに取り外すとなるとかなりのお金が掛かる。
このガバメントクラウド移行の失敗例に相応しくないけど、新しい未知の物にはそういうリスクが出るという事を予想しないといけないという事ですよね。
nice!です☆
いけなかったのでしょうね
雨が小康状態です。
急いで台風7号の対策します・・・(^_-)-☆
いつもコメントありがとうございます。