『欽言力』萩本欽一が経験した2行でまとめる開運エピソード

『欽言力』(萩本欽一著、日本文芸社)を読みました。このブログで何度がご紹介している萩本欽一のものの見方、考え方を、エピソードごとにまとめたものです。「運」は「遠くすることにある」という萩本欽一の持論がよくわかるエピソードが並んでいます。

『欽言力』は、萩本欽一が、自分が経験したこれまでのエピソードをもとに、右側のページは教訓的な文章として10字~30字ぐらい(2行)でまとめ、左側のページ、ときには次のページにまたぐ1~2ページで、そのエピソードを簡単に紹介。それが全部で50編掲載されています。
萩本欽一自身の生き方や考え方を述べたものですが、萩本欽一といえば、これまで何度かご紹介したように「運」論者。
・『ばんざい またね』萩本欽一が語る3つの「運」論
・運は存在するのか
それらのエピソードを通して、萩本欽一が「運」で人生を考えるようになった理由や、こうすれば運が良くなるのではないか、という示唆を含むものになっています。
いずれにしても、功成り名を遂げた人の書籍にありがちな、「私はこうやって成功したからこうしなさい」と押し付けるものではなく、「昔、こうしたらこうなってすごく嬉しかった」というような、飽くまでも経験談として語られています。
そのうちの一部を抜粋してご紹介します。
見出しは、その教訓的文章です。
辛い目にあってる子のほうが、夢に近いところにいる
萩本欽一が高校の頃、家が貧しく、家にいると税務署から差し押さえられるので、家族全員で留守にしていたことがあったそうです。
そのとき、わずかな夕食代をもらうのですが、萩本欽一はそれを食事に使わず、映画鑑賞に。
そんなとき、『チャップリン』の映画で心が満たされ、そのときの思いが自分がコメディアンになる道筋を掃き清めたわけです。
現実が辛いからこそ、夢見る気持ちが生まれる。そして夢を実現したいと切実に思う。
だから、悲しい思いをしている人は、夢にたどり着くと述べています。
欠点というのは、その人の数少ない『個性』の一つ
人間は無謬万能ではありませんから必ず欠点はありますが、普通は、それをなるべく見せないようにと考えます。
しかし、萩本欽一は、欠点を大事にしたいといいます。
あがり症で、きちんと物事を進められない萩本欽一に、『スター誕生!』という番組の司会の仕事がきた。
・『スター誕生!』と桜田淳子の40年
・山口百恵と桜田淳子、萩本欽一が40年ぶりに激白
最初は嫌だったのに、それがあたると、次々司会の仕事が来て、それが自分の冠番組につながっていった。
そこで、「欠点がきれいに転がると、その人のキャラクターになるんです」と萩本欽一はまとめています。
先日、私がご紹介した、立川談志のエピソードに通じることでもあります。
『結果を出す技術』仕事と人の好みを述べる前に確認したい弁証法
立川談志は、素人歌合戦の審査員で、「欠点のないのが欠点」という禅問答のようなコメントを述べたという話を書きました。
欠点があるからこそ、突出した魅力の予感もあるわけです。
思い通りに行かない道に、実は運が落ちてる
以前、一緒に番組を作っていたディレクターが、営業にまわされることになり、「ぼくは営業に向いてないんだ」と言っていたのに、その人は営業で成功した話を紹介。
萩本欽一いわく、自分の才能は他者が評価するもので、自分自身が判断するものではない。
したがって、納得行かなくても、言われたことを一生懸命頑張ったほうがいい。
運は自分がやりたいことや得意なことにはない。思い通り行かないところに落ちている、と述べています。
成功は安全な道には落ちていない
安全な道は失敗はない。しかし、成功もない、「大成功」は危険な道しかない、と萩本欽一は述べています。
困ったときこそ、人間はスーパーアイデアを生み出すからだそうです。
これは、桜井章一氏の「あえて面倒に首を突っ込め」という考え方と方なるのかもしれません。
『結果を出す技術』結婚は“ゴールイン”ではない!
「運」論者によっては、困難をよけること自体を幸運とし、それを求める人もいます。
が、萩本欽一は、困難に立ち向かってこそ運は開ける、という考え方です。
一番大事なのは逆転の発想
地方の過疎地では、若者が減っている、どうしよう、困ったと悩んでいる。
しかし、萩本欽一は、発想自体が逆だと言います。
逆に年寄りだけの町にして、年寄りが快適に住める町にすれば、日本全国から高齢者が集まって町が栄えるかもしれない。
将来後継者になる若者も、「年をとるっていいな」と思うかもしれない、と述べています。
「逆転の発想」がいつもハマるとは限りませんが、一般論や常識の枠内だけでものを考えるよりも、アイデアの幅は確実に広がると思います。
人生『無駄』にこそ価値がある
萩本欽一は、3人の息子たちにこう言ったそうです。
「大学に行くのはいいけど、そのあとは大学生活が無駄になるような職業について欲しい」
たとえば、長男は、大学を出て銀行員になるといったそうですが、萩本欽一は、「つまんない」と反対したそうです。
要するに、これも、「逆転の発想」とか、「成功は安全な道には落ちていない」といった考え方から出てきているのだと思います。
桜井章一氏のところでもご紹介した弁証法の考え方が、萩本欽一にもありますね。
まとめ
同書のひとつひとつの話は、500~600字でまとめられています。
萩本欽一は、「運」に関してはほかにも上梓があり、それらに比べると、量・質ともにいささか物足りないかなという気はします。
ただ、それらの入門書、導入書としての位置づけと考えると、同書の構成や「物足りなさ」も合点がいきます。
ですから、萩本欽一の「運」論について知りたいけれど、手始めにどの本から読み始めたらいいのか、という場合には、この『欽言力』から読み始めるといいのではないかと思います。