『売れない役者』1970年代の名脇役・森川正太を思い出す

森川正太による『売れない役者ーあなたの知らない芸能界サバイバル』(はまの出版)を久しぶりに手にとりました。昭和の古き良き時代のドラマに欠かせない俳優でしたが、最近は出演作品がありません。例によって、Facebookのタイムランを流し読みしていたら、森川正太について盛り上がっていた投稿がありました。

森川正太は、1970年~80年代の活躍がとくに印象深い、昭和の古き好きドラマの名脇役です。
Facebookでは、印象に残る過去の出演番組をメンバーが思い思いに書き込んでいましたが、気になるのがその消息。
過去の出演作品は数えきれないほどありますが、テレビや映画などで見なくなったなあと思ったら、数年前に離婚と自己破産をしたとの噂。
裏付けるように、公式サイトもいつのまにか閉鎖されていました。
それが最近は、東京の某所で小さな飲食店を経営していることが、あるファンによって報告されました。
先日の永野裕紀子もそうですが、かつて活躍した芸能人の消息は、ネットが広めます。
広められる方は迷惑かもしれませんが、遅れてきた有名税といったところでしょうか。
それはともかくとして、久しぶりに森川正太の上梓した『売れない役者ーあなたの知らない芸能界サバイバル』(はまの出版)を読み終えました。
2000年発行ですから、まだ森川正太はボチボチドラマや舞台で仕事をしていた頃の話です。
内容は、日記形式で日々を綴っていますが、「主役級でない役者はどうやって暮らしているのか」という話です。
森川正太は、役者の仕事が無い時には、アルバイトで糊口をしのいでいたと書かれています。
子役出身の森川正太は、自身が10代後半から30代ぐらいまでは、多くのテレビドラマに出演。
とくに、日本テレビが大河ドラマと互角に戦った青春学園ドラマ『おれは男だ!』『飛び出せ青春』『俺たちの旅』などの視聴層である、現在の40代後半以降の世代なら、その活躍ぶりは記憶に残っていることでしょう。
芸歴も長く、業界にも人脈はあるはずです。
にもかかわらず、役者が専業ですらなかったというのです。
ワイドショーや週刊誌の豪邸拝見で出てくるのは、ほんの一握りのスターだけなのです。
しかも、役者の仕事だっていつ入るかわからないので、アルバイトも長く務めることは出来なかったとか。
『売れない役者』を上梓した頃は、結婚式の司会が主たる副業だったそうです。
1日数時間の進行役で、とっぱらい(即日精算)でもらえるのですから、美味しいアルバイトだったでしょうね。
でも、新郎新婦にとっては一生ものなので、責任も重いですが……。
いじめられたからこそ自分はいじめない

旧森川正太公式サイトより
もうひとつ、本書の興味深い件は、森川正太の子役時代です。
児童劇団出身で、まだ映画がたくさん制作されていた頃だったので、映画、ドラマ、舞台と、子役の需要は多かったのですが、その都度オーディションがあり、当時子役仲間で、とにかく巧かったのが渡辺篤史だったそうです。
『渡辺篤史の建もの探訪』の人ですね。
でも森川正太も、子役時代からテレビに出演しており、高校に途中からいけなくなるほどでしたから、売れっ子だったわけです。
となると、他の子役からの嫉妬⇒いじめという、人間社会のお定まりの「洗礼」を受けます。
たとえば、ラーメンを食べると、麺の下にゴキブリを仕込まれていたとか……。
まあ、詳細は本書を読んでいただくとして、かなり壮絶な経験があったようです。
これは、『徹子の部屋』に出演した時にも話していましたね。
で、そういういじめを受けると、今度は自分が後輩に同じことをする人がいるのですが、森川正太の立派なところは、それをしなかったことです。
壮絶なイジメを受けたが、そんなものは自分で終わりにしたいとして、森川正太は、後輩だろうが年下だろうが、別け隔てなく相手を尊重して付き合い、人と人との絆を大きくすることに、自分の使命のようなものを見出したようです。
私はある仕事で、森川正太の力をお借りする機会があったのですが、一回り近く年下の私にも気を使い、「すばらしい俳優さんがいるので紹介しますよ」と言って、ある舞台俳優を紹介してくれました。
私は、その俳優のことは実はよく知らなかったのですが、その方の演出する舞台を観に行くうちに、すっかり芝居にハマってしまいました。
つまり、私はその俳優と森川正太のおかげで、舞台演劇の楽しさを知ることが出来たのです。
もっとも、肝心の森川正太とは、それ以降、ご無沙汰してしまい、冒頭のように、気がついたら消息不明になっていました。
現在の飲食店では、『俺たちの朝』に出演した時にリリースした歌なども披露しているそうなので、いつか行ってみたいと思っています。
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この記事へのコメント
もちろん良く憶えています。
お見かけしないナと思っていました。
負の連鎖を自分で断ち切ろうとする姿勢は尊敬に値します。
この人は青春映画によく出ていました。
最近は見かけなくなりましたが、どうしたものやら
私より3歳した、同世代の俳優です。
存じ上げませんでした。
拝読する限りは素敵な方ですね。
飲食店、訪問されたらそのお話もぜひ。
申し訳ないけれどこんな不細工な人でも俳優になれるんだ、と思っていました。 イケメンばかりでは成り立たないでしょうが。
特に大人気とかではなかったけれど、とてもいい味を出してたと記憶しています。
役者だけでは食えなかったとは驚きです。
でも、そんな世界なんでしょうね。