夏木陽介の訃報、脚本家笠原良三の生誕と『サラリーマン忠臣蔵』

夏木陽介訃報が今日の話題です。夏木陽介といえば、東宝ニューフェイスで俳優生活をスタートさせ、いったんテレビ映画の『青春とはなんだ』(1965年10月24日~1966年11月13日)に出演後映画に戻り、70年代以後はまたテレビドラマで活躍しました。

私にとって夏木陽介というと、青春学園ドラマの第一弾である、『青春とはなんだ』の野々村先生が、たいへん印象深い仕事でした。

アメリカ帰りの型破り英語教師、というその後に続く青春学園ドラマの先生キャラクターが、この作品で確立されました。
『青春とはなんだ』は、石原慎太郎の原作で、日活が石原裕次郎主演で映画化しています。

石原裕次郎版は、背中に刀傷のあるアウトロー的な人物像で、同僚のマドンナ(十朱幸代)も、自分から石原裕次郎にコクる、今で言うと肉食系の、いかにも日活らしいエネルギッシュなアンちゃんネエちゃんの話でした。
一方、夏木陽介版は、制作が東宝で午後8時の放送ですから、明るく健全な教師像で、同僚は東宝が積極的に売り出していた藤山陽子でした。
政治家・石原慎太郎の評価はともかく、この小説は面白くて、私が興味を持ったときはすでに絶版だったために、かなり時間をかけて図書館からコピーさせてもらったことを覚えています。←著作権の関係で1度に全部はコピーできない
夏木陽介が、この「テレビ映画」(映画会社制作のフイルムドラマのこと)に出たのは、映画俳優としてステップアップするための“出向”で、同作の人気が出て、また映画に戻っていったのですが、当時はそれを“クリーニング(タレント)”などと呼んだそうです。
しかし、それまでの映画の仕事は不遇だったかというとそんなことはなく、たとえば1960年に「東宝サラリーマン映画100本記念作品」と銘打って作られた東宝オールスター出演の『サラリーマン忠臣蔵』『続サラリーマン忠臣蔵』では、三船敏郎とツートップである森繁久彌の息子役にキャスティングされています。


『サラリーマン忠臣蔵』より
同作の設定は社長シリーズ、ストーリーは忠臣蔵をベースにしています。
赤穂産業の浅野卓也社長(池部良)が、あることから松の廊下、ではなくパーティー会場で銀行頭取の吉良剛之介(東野英治郎)を殴ってしまい、その直後に自殺を疑わせる謎の死を遂げます。
しかも、吉良剛之介は赤穂産業の新社長として乗り込み、大野久兵衛常務(有島一郎)が味方についたため、大石良雄専務(森繁久彌)、小野寺十三郎部長(加東大介)、寺岡平太郎秘書兼運転手(小林桂樹)は退社。
大石は独立し、赤穂産業の株を少しずつ買い取り、株主総会で赤穂産業の社長の座を奪い返すという劇的なラストです。

『続サラリーマン忠臣蔵』より左から宝田明、小林桂樹、加東大介、森繁久彌、三船敏郎、志村喬、河津清三郎
もう一人の主役である三船敏郎は、大石を助ける取引会社の社長役で、秘書はもちろん志村喬です。
これに、植木等と加山雄三、フランキー堺、三木のり平が加われば、いうことなしだったんですけどね。
ちなみに、やはり『サラリーマン忠臣蔵』に出演している藤木悠は、

Google検索画面より
夏木陽介とは、東宝映画、『青春とはなんだ』、そして『Gメン75』と、長い付き合いでしたが、

実は、今日が命日なんです。
何か因縁めいてますね。
笠原良三あっての東宝昭和喜劇
因縁めいているといえば、もう一人。
『サラリーマン忠臣蔵』の脚本は、笠原良三氏です。
息子さんの笠原宗之さんが、今日が笠原良三生誕106年であるとFacebookで教えて下さいました。
沢山の作品を書かれていますが、私はやはり、『サラリーマン忠臣蔵』を含めた一連の東宝昭和喜劇の執筆が印象に残ることを笠原宗之さんにコメントしました。

笠原宗之さんも「まさに昭和の映画ですね」と仰ってます。
余談ですが、プロレスラーだったジャンボ鶴田さんの息子さんの鶴田祐士さんも、お父さんの試合について振り返る投稿やツイートをしばしばされているので、私は時々リプライさせていただいてます。
父親の仕事に誇りを持って、確認している光景をいじらしく、そしてうらやましく思いました。
Facebookやツイッターも、ちゃんとした使い方をしていたら、こういうことがあるから楽しいですよ。
夏木陽介さんの生前のご遺徳をお偲び申し上げます。
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この記事へのコメント
寺田農さんが、やんちゃな高校生役で出ていたと思います。
残ってる最近の画像もダンディですね。
『サラリーマン忠臣蔵』は池辺良も出演しているのですね。「人気スタア総出演」というコピーがまたいいですね。わたし、「SMAPがスター」とかいうのはぜんぜん違うと思うんです。
「三波伸介」とか、その頃の人たちは品位がありましたね。貫禄と品位、そして画にもなる人たちが多かったです。今の若い芸人は頭の回転は速いのでしょうが、ちまちましてますね。それは明らかに閉鎖性の表れの一つだと思います。
五木ひろしがこんなに臨機応変な司会ができるとは意外でした。もちろんほんの少し前まで演歌や歌謡曲の番組を観てなかったのだから、五木ひろしのクオリティを知らなくて当然ではありますが。台本があるにしても、そうは感じさせられない自然な展開が随所に見られます。五木ひろしは頭も柔らかいけれど、身体も柔らかいんです(笑)。この事実にはいつも感心してしまいます。猪木ではないですが、余程しっかりしたエクササイズを継続していなければ、あの年齢であの柔軟性は難しいと思います。逆に言えば、しっかりしたエクササイズの実行を継続しておれば、心身の柔軟性は充分保ち、時には向上さえ可能なのかなという気持ちにもさせてもらえます。
そして五木ひろしは「歌」がまた凄いんです。あの年齢になるとどうしても声が枯れたりしてしまう歌手が多いのですが、声量はもちろん、技術もどんどん上がり、洗練されている印象です。さらに、「日本の歌謡曲」を後世に伝えるという大きな仕事もしていて、本当に凄い人だと思います。
最近歌番組で森進一がジョークを言うのを目撃しました(笑)。(あ、この人も言うんだ)と吃驚しましたが、案外面白かったです。
>ちょこっと検索チェックをしてみたら、この歌、天童よしみの持ち歌なのですな。
堀江美都子は、『宇宙鉄人キョーダイン』時のファンでした~(笑)。最近当時の画像をチェックしたら、正直なところ(何が一体よかったのだろう)感が強かったですが、おそらくミニスカートにブーツ姿にフェテイッシュな魅惑を感じていたのだと思います。若い頃の高橋洋子に共通点がなくもないという気も(笑)。
西崎みどりは、『変身忍者 嵐』の第37話に出演しているのですね(笑)!しかし西崎みどり自体、覚えているようなそうでもないようなといった感じです。
「脳内活動」、しかも「脳内異性交際」というのは青春時代の極めて重要な精神活動でして、わたしも授業中、あるいは布団の中で(笑)止めどない想像を膨らませました。「現実」とは一味も二味も違った愉しい時間ではありましたね。
父との「対話断絶」でよく覚えていることの一つは、弟の進路についてわたしが意見を言おうとすると、「まだ言いゆうがか(まだ言ってんのか)!」と怒鳴って外へ出て行ったことです。別に無理な話をしようとしたわけでもなく、わたしとしては実に常識的な内容を聴いてもらおうとしたのですが、それに対して「怒鳴る」という行為はいただけませんでした。こちらも親との真面目な話というものはある程度の決意で持ちかけるのに、怒鳴って済まされては、その後はなかなか話をする気が起こらなくなりますよね。 RUKO
同じ日というところ、何かつながりを感じます。
役作りでしょうか。
また見てみたくなりました(^^)
ご冥福をお祈りします
もちろん俳優さんとしても知っています。
社長シリーズは、BSフジがやっていて、録り溜めていますが、「サラリーマン忠臣蔵」もその1本でしたか。勉強になります。
Gメン75は見てたんですが、出られてたのは記憶になかったです。
子供のころ見ていた俳優さんがまたひとり
いなくなってしまいました。 悲しいです。
青春モノは村野武範の「飛び出せ青春」からかな?
森田知事の「俺は男だ!」とどっちが先なんだろう?
次々と旅立たれ、寂しいかぎりです。
「兄貴分」のような親しみのある俳優で
良く観てました。
訃報を知って残念至極の感があります。