『戦力外通告』中村雅俊、風吹ジュン、高田純次、真野響子、穂積隆信

『戦力外通告』(2009年、WOWOW)を観ました。タイトル通り、会社を追われた主人公が、いったんは夫婦仲にも隙間風が吹きながら、故郷のお祭りに協力する中で、自分の前向きな気持を取り戻すというストーリーです。結局は制作されなかった『俺たちの旅』の40年後を先取りしたような内容でした。

“人生の踊り場”で幸せとはいえない自分を確認
宇津木秀明(中村雅俊)は、アパレルメーカー「鳥本」に勤務。社長(穂積隆信)に可愛がられて常務を約束されていました。
ところが、社長は急死。次の社長に就任したのは社長の息子(布川敏和)でしたが、先代とは全く異なる方針を持ち、専務(伊吹吾郎)を重用して、秀明(中村雅俊)は閑職に異動させられた挙句、肩を叩かれます。
就活中の秀明(中村雅俊)は、同級生・芹沢良二(高田純次)と再会。
彼が音頭を取って開かれた中学の同期会に参加し、誰も幸せではないことを知ります。
夫とは別居状態の初恋の人・晶子(真野響子)、夫に先立たれた英美(芦川よしみ)、トランペッターを諦めた上に妻(烏丸せつこ)に逃げられた修一(斉藤暁)、元過激派から薬品会社の役員に上り詰めたものの、会社が倒産した暁夫(北見敏之)……。
秀明(中村雅俊)も、会社を追われて妻・恵里子(風吹ジュン)が働きに出たものの、職場ではさっそく若い男が近づいてきて、家庭の様子も次第におかしくなります。
恵里子(風吹ジュン)の携帯電話に「デート」という文字を見た秀明(中村雅俊)が問いただすと、逆ギレした恵里子(風吹ジュン)はいったんは家をでることに……。
同期会では、庄一(松澤一之)が、地元の祭りの開催が危ぶまれているので、協力してほしいと再三秀明(中村雅俊)らに要請します。
秀明(中村雅俊)らは、苦しいことがあっても、そこでしょげずに前に進むしかないと、祭りをみんなで盛り上げる計画をたてます。
夫婦とはなんだろうか
ネタバレ御免で書いてしまうと、祭りは大成功に終わります。
どうやって成功まで導いたかがドラマのキモですが、それは本作をご覧ください。
でも、ちょっと考えさせられたのは、秀明(中村雅俊)と恵里子(風吹ジュン)の夫婦関係です。
30年連れ添って娘もいる設定ですが、恵里子(風吹ジュン)が働きに出ると、すぐボーイフレンドが出来て、一方の秀明(中村雅俊)は、晶子(真野響子)と一夜を共にするシーンもあります。
夫婦って、なんとも脆いものだなあ、と思いました。

以前、雑誌の調査で、夫に不満を持っている妻は96%もいて、54%は「早く死んでしまえばいい」と思っているデータが掲載されていたので、このブログでご紹介したことがあります。
夫を捨てたい妻たちの真相
その記事に対して、「そんな数字はスキャンダルマスコミのつくり話だ」と怒ってしまい、当ブログを巡回しなくなった方もおられました。
でもね、その記事は、「96%」とか「54%」という数字そのものが重要ではなく、夫婦であっても心のなかにはお互いの不満があるということと、夫婦の口喧嘩とプチ別居は、うつ病など精神疾患や更年期障害も原因である、ということを述べているのです。
それに加えて、本作のような、夫の失職と妻の就職も、関係破綻の原因になるかもしれない、という危機感は、決して「マスコミのつくり話」ではなく、配偶者のある人なら、心の何処かに持っておくべき用心だと私は思います。
いや、用心というより、配偶者に対する配慮といってもいいでしょう。
「俺たちは愛し合っている夫婦なんだから何があろうが無問題」と、自信満々に言い切る人は、むしろ相手の心を受容する度量のない人ではないかと私は思っています。
……なんて偉そうなことを書いていて、実は私こそ、そうかもしれませんが(汗)
それはともかく、何度かこのブログでも書きましたが、中村雅俊の代表作である青春群像劇『俺たちの旅』(1975年10月5日~1976年10月10日、ユニオン映画/日本テレビ)の、「35年後」ともいえそうなストーリーであり、少なくとも世代的に近い人にとってはいろいろ考えさせられる、いいドラマだと思います。